湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2021年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第38節(2021年12月4日、土曜日)
- 両ゲームともに、秘術を尽くした、目が醒めるほど美しい動的な均衡マッチだった・・日本サッカーの進化スタンダードになるべき、素晴らしいレベルの攻防・・堪能した・・(グランパスvsレッズ、0-0)(マリノスvsフロンターレ、1-1)
- レビュー
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ここじゃ・・
4チームの、細かな「攻守イメージングの差異」を語るなんてヤボは、止めときましょう。
言いたいコトの骨子は、表題のとおりです。
たしかに、チーム戦術的なニュアンスもふくめた「攻守イメージングの内実」によって、グラウンド上の現象には、大きな違いが生じてくるさ。
でも、最後は・・
そう、個の、能力と脳力の、ギリギリのぶつかり合いになる。
ヨーロッパじゃ、よく、こんなコトが言われる。
・・両チームの、組織的な(戦術イメージング的、物理的な!)チカラが拮抗している場合、最後は「個のチカラ」によって雌雄が決する・・
もちろん・・
その、「個の想像力&創造力」は、チームメイトたちが、例外なく「頼り」にするほど傑出したレベルになきゃいけない。
まあ、以前は(まあ、その才能レベルによっちゃ、今でも!?)・・
才能プレイヤー(スター!?)は、仕掛けプロセスにおいて「のみ」仕事をすりゃ、よかった。
でも、いまでは、それじゃ、足りないケースがほとんどなんだ。
攻守にわたって、「組織的なハードワーク」も、しっかりとパフォームしなきゃ、チームメイトに認められない(良いプレーが出来ない!)んだよ。
言いたいことは・・
スピードやパワーは別にして、テクニック、スキルといった「美の源泉」のレベルが、ものすごく「高次平準化」しているというコト。
平たく言えば、「上手い選手」が、とても多くなった・・っちゅうコト。
そのバックボーンは、もちろん・・
世界的な「情報化」。
そう、テレビやインターネットによる「映像情報」を、誰もが観られるようになっているんだ。
わたしは、以前から・・
うまく編集されたビデオ情報を「活用」するイメージトレーニングこそが、進化&深化を推進する、もっとも効果的ツールだって確信している。
良いプレーはもちろんのこと、失敗やミスのシーンもふくめ、クレバーに編集されたビデオ素材のコトね。
もちろん・・
そう、監督、コーチが、何を、「どのように」説き聞かせるのか・・という問題もある。
そこにおいてこそ、優れた監督、コーチの、パーソナリティーの内実が問われるわけだ。
あっと・・
とてもハイレベルに「高次平準化」した個の才能による、仕掛け(最終勝負)プロセスでの、決定的「局面プレー」というテーマだった。
この両ゲームでも、何度か、4チームが誇る「個の才能」連中が、その価値を誇示するように、ゴール機会に絡んでいたよね。
なかでも・・
リーグ優勝を飾ったフロンターレに、一日の長あり・・かな。
例えば、家長昭博・・例えば、レアンドロ・ダミアン・・例えば(スーパーサブの!)小林悠・・などなど。
こんな、動的に拮抗したスーパーマッチの絶対ベースは、言うまでもなく、4チームともに、素晴らしいボール奪取プロセス(守備)だよね。
だからこそ・・
互いに、まったくチャンスを創りだせる「雰囲気」さえ感じられない拮抗マッチという雰囲気が支配するゲーム展開になる。
でも、フロンターレの強者パーソナリティ連中は、そんな緊張した雰囲気のなかで、まさに、唐突に、ゴール機会を「演出」しちゃうんだよ。
ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーションによるスペース攻略・・
ソコからの、決定的スルーパスやクロス、はたまた、突き抜ける勝負ドリブル等など。
そう、フロンターレの先制ゴール場面ね。
あっと・・
素晴らしくハイレベルで、動的に均衡した勝負マッチの絶対ベースが、高質な、ボール奪取プロセス(守備)にあり・・っちゅうテーマだった。
ホント、4チームの強者どもは、ボール奪取プロセス(守備)で、サボらない。
そう、究極の守備ハードワーク(主体性プレー)を積み重ねていくんだよ。
とはいっても実際は・・
そう、そんな「超」堅牢なゲーム展開のなかでも、局面では、4チームともに、攻守にわたって、「小さなミス」を犯すんだ。
細かな、ホントに微妙なトコロでね・・。
もちろんソレは、攻守選手たちの「意識と意志とイメージング」の、ギリギリの「せめぎ合い」があるからこそ、どうしても生じてしまう、サッカーの見所でもある。
進化を志向するリスクチャレンジがあるからこその、失敗(ミス)ね。
だから私は、「良いサッカーは、小さなミスの積み重ね・・」なんて表現することがあるのさ。
不確実な要素が満載されたサッカーは、ものすごく「繊細」なボールゲームなんだよ。
だからこそ私は・・
「勝負は、ボールがないところで決まる・・」ってなコンセプトを提示するんだ。
そして、だからこそ、テレビ中継の、カメラワーク(ズーミングワーク)の重要性を、訴えつづけるっちゅうワケさ。
この両マッチでの、カメラワーク(ズーミングワーク)は、ホント、素晴らしかったですよ。
だからこそ、本当の意味で、心から楽しめた。
たまに、寄り過ぎのカメラワーク(ズーミングワーク)を見掛けるけれど・・
そこでのカメラマン氏(ディレクター氏)は、ボールから遠く離れたプレイヤーのアクション(勝負イメージングのせめぎ合い!!)に、あまり興味がないんだろうね。
・・だって、ほとんどケースじゃ、遠く離れた選手はアクションしないでしょ・・
そんな声が聞こえてきそうだけれど・・
違うんですよ。
そうではなく、遠く離れた彼らは(攻守にわたって)、ものすごい緊張感で、攻守の「イメージング」を闘わせている(だまし合いをしている!)んだ。
そのコトだけでも、ものすごくドラマチックな価値があるんですよ。
例えば・・
エネーチケー中継で、中澤佑二か福西崇史のどちらかが言っていたように・・
マリノスが同点ゴールを決める直前に、シュートを決めた前田大然が魅せた、一瞬の「小さな動き」に、とても大きな意味が込められていたっちゅうわけだ。
あっ・・と、あのシーンじゃ、前田大然のポジションは、ボールから、そんなに「遠く」はなかったっけね・・
へへっ・・
まあ、とにかく、寄り過ぎの中継に対しては・・
サッカー先進国のテレビ中継を、参考にして欲しいと、心から願って止みません。
あっと・・
チト、蛇足が過ぎたかも。
スミマセン・・
ということで・・
素晴らしくダイナミックで、さまざまな意味合いで「繊細」でもあった、動的に均衡した勝負マッチを魅せられ、チーム(&クラブ)に対して、心から感謝している筆者なのです。
みなさん、一年間、お疲れ様でした。
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最後に「告知」です。
どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。
一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」。
- そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」。
自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。
もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。
- まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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