湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2022年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第21節(2022年7月9日、土曜日)
- 吉田孝行ヴィッセル・・攻守にわたる「主体性プレー」の内実がアップしている・・これからの彼らには、大いに期待できそうだ・・(ジュビロvsヴィッセル、0-1)
- レビュー
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- このところ・・
さまざまなコノテーション(言外に含蓄する意味)を内包する、「バランス」というテーマについて、アタマをめぐらせています。
換言したら・・
ガチガチの「原理主義」ではない、柔軟な「解放サッカー」を・・ってな言い方もできそうな・・。
そう、チーム&ゲーム戦術という「カタチ」から入るのではなく、あくまでも、選手たち主体性を活かすサッカー・・ね。
もちろん・・
・・そんなコトをやっていたら、勝ち点なんて積み重ねられない・・
そんなヤジが(現場から!?)聞こえてきそうだけれど・・
だからこそ、バランス、なんだよ。
自分勝手にプレーさせる「間違った自由」を謳歌させたら、そりゃ、サッカーにならない。
でも逆に、ガチガチの「カタチ」に、選手たちのイメージング(自由な発想!?)の可能性を「押し込め」ても、決して、良い結果がついてくるコトなど、ない。
だからこそ、バランス、なんだよ。
ということで、ヴィッセル・・
言うまでもなく、スペース攻略プロセス(攻撃&仕掛け)の主役は、アンドレス・イニエスタ。
まあ、イメージング・リーダー・・ね。
もちろん、ジュビロには、千両役者、遠藤保仁がいる。
そして、こんな視点で、論を展開するわけさ。
この両人が、天賦の才を発揮できるかどうか・・
それは、ひとえに、周りのチームメイトとの「イメージ・シンクロ」の内実にかかっている。
そう、この両人がボールをもったら(パスを受ける前の段階で!?)、次の勝負パスをアタマに描きながら、爆発スプリントを仕掛けるんだよ。
そんな、決定的スペース攻略へのイメージング・シンクロの「性能」が、すぺての成功ファクターを握っているっちゅうわけだ。
そして、この試合では・・
そう、アンドレス・イニエスタにしても遠藤保仁にしても、素晴らしい「組み立て&チャンスメイク」を魅せつづけたんだ。
そこでの「KFS」は、言わずもがなの、チームメイトとの「相互信頼」。
そして、もう一つ・・
決してカタチに「囚われ過ぎる」ことなく、あくまでも、選手たちの主体的な「イメージング」を大事にするという姿勢ね。
そう、イニエスタ、遠藤保仁と、チームメイト達の、「主体的」なイメージング・シンクロ作業こそが、大事な意味をもつんだよ。
両チームともに、その意味で、とても「深い」イメージコンビネーションを魅せてくれた。
だからこそ、この両人を介したスペース攻略プロセス(仕掛け)に、舌鼓を打てた。
とはいっても、全体的なサッカー内容では・・
やっばり、ヴィッセルに一日の長があった。
そう、このゲームでは、ヴィッセルが、フェアに奪い取った「勝ち点3」だったとするのが、正しい評価っちゅうコトだ。
でもサ、サッカーには・・
ボールポゼッション、シュート数といった「数字」では表現し切れない、勝負ファクターがあるんだ。
たとえばボール奪取プロセス(守備)では・・
そう、決定的なピンチシーンで伸ばし切る「最後の半歩」ね。
わたしは、その「最後の半歩」に、シュートブロックだけしゃなく、最後の瞬間でのマーキングやカバーリングといった、見えないトコロでの、決定的「主体性プレー」という意味合いも含める。
また、スペース攻略プロセス(攻撃)では・・
言わずと知れた、ボールがないところでの決定的フリーランニング・・ね。
そう、3人目、4人目のサポートの動き(フリーランニング)など。
それが活性化するからこそ・・
相手守備にとってもっとも怖い、ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーションだって、うまく機能させられる。
あっと・・
ということで、バランス感覚・・
このテーマについては、最近、「The Core Column」で連載した「気づき」シリーズでも、実は、隠された骨子コンテンツでもあったんですが・・
要は、選手たちは・・
攻守にわたって、その具体的目的をしっかりと意識することで、必要なプレーを、主体的に「イメージ」し、それをチームメイトとシェアすることで、効果的に実行していくんだ。
もちろん、カタチ(チーム&ゲーム戦術)は、大事。
でも、そのなかで監督は、いかに選手の「自由度」を限界まで高めていくのか・・というテーマに「も」取り組まなければならない・・っちゅうことなんだよ。
だからこそ監督は、選手たちの「なか」で取り交わされる「イメージ・シンクロ」の共同作業に「水を差しちゃ」いけないわけだ。
もちろん、その「水」とは、過ぎたる(!!)カタチ・・ね。
だからこそ私のコラムでは、局面プレーを、「変に」切り取ったり、「それ」に変な意味づけをすることは、極力、避けるわけさ。
まあ、たしかに、以前は、「5秒間のドラマ」なんていう発想の本を出したこともあるけれど・・
その基本的なアイデアは・・
・・こんなプレーがあったけれど、そこでの選手たちの発想は、こんな感じだった・・
・・ってな内容にしたつもりだったわけだ。
そう、一つの「可能性リマインダー」としてね。
あっ・・
このコラムで言いたかったコトの骨子だけれど・・
それは・・
吉田孝行によって、チームが、徐々に「解放」され、「主体性プレー」の内実もアップしはじめている・・っちゅうコトなんだよ。
もちろん、これからどうなるかなんて、神のみぞ知る・・だけれど・・
それでも、攻守にわたって、このレベルの「主体性プレー」をブチかませるんだから、これからの、吉田孝行ヴィッセルには、大いに期待できそうだよね。
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最後に「告知」です。
どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。
一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」。
- そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」。
自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。
もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。
- まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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