湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2022年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第30節(2022年9月16日、金曜日)
- 両チームの、スペース攻略プロセス(攻撃&仕掛け)のタイプの違いに、微妙な「ネガポジ・ファクター」を見出していた・・(鳥栖vsアントラーズ、1-1)
- レビュー
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- まず何といっても、ダゾン様による、高質なカメラワーク(ズーミングワーク)から。
とにかく、今回の中継クルーの皆さんは、勝負が、ボールのないところで決まる・・というメカニズムを、しっかりとご理解されていると感じました。
わたしは、常に・・
変にアングルを「いじる」のではなく、はじめから、グラウンド全体をカバーするような画面づくりをすればいいじゃん・・なんて、イージーに考えちゃうけれど・・
でも、(視聴者への配慮も含め!?)画面づくりのプロの皆さんの視点は、チト、違う!?
迫力ある画面づくり・・
引き「過ぎ」ではなく、必要なゾーン(ボールがないところでのアクション=攻守イメージングのせめぎ合い!?)は捉えながらも・・
ボール絡みのプレーが「遠すぎ」ないように、ズーミングをしっかりとコントロールする。
そんな、今日のダゾン中継。
良かったと思いますよ。
強豪同士の、こんなギリギリの勝負マッチだからこそ、ダゾン様の、優れたカメラワーク「も」光り輝きつづけたっちゅうコトか。
へへっ・・
さて試合・・
総合力じゃ、たぶん、互角。
鳥栖の川井健太も、アントラーズ岩政大樹にしても、とても良い仕事をしていると思う。
そう、ボール奪取プロセス(守備)、スペース攻略プロセス(攻撃&仕掛け)の両面にわたってね。
だからこそ、とても内容の濃い勝負マッチになった。
とはいっても、ゲーム展開の内実を、詳しく観てみると・・
まず、実効イニシアチブという視点(ポゼッション率じゃ、ないよ!!)。
前後半の最初の時間帯では、明確なイニシアチブを握ったアントラーズだったけれど、徐々に、鳥栖に、イニシアチブを奪い返された。
そのプロセスの内実が、とてもインプレッシブだった。
たしかに、ボール奪取プロセス(守備)での実効プレー(プレッシング)では、ほぼ互角ではあったけれど・・
ボールを奪い返した後の、スペース攻略プロセス(攻撃&仕掛け)に、かなり大きなイメージングの相違があったって感じていたんだ。
要は・・
川井健太サガン鳥栖では、人とボールの動きの「リズム」に、アントラーズの「それ」とは、かなり大きな違いがあったんだよ。
鳥栖では・・
とにかく、シンプルで素早いタイミングで、人とボールが動きつづけるんだ。
彼らは、決して、ボールの動きの停滞につながる「こねくり回し」を、しない。
そうではなく、あくまでも、素早い「リズム」でボールを動かそうとするんだ。
その効果は・・
そう、周りの、ボールがないところでのサポートの動き(フリーランニング等)を加速させる。
そりゃ、そうだ。
周りのパスレシーバーたちも、「このリズム」でパスが来る・・って、確信できるわけだから。
そして、そんな、シンプルなリズムの人とボールの動きが、アントラーズのボール奪取プロセス(守備)を翻弄するシーンが増えてくる。
アントラーズも、しっかりと「前からプレス」をブチかまそうとする。
でも・・
そう、鳥栖は、そんなプレスを、ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーションで、スッ、スッと、外しつづけるんだよ。
アントラーズの、前からプレスへの「意志」が、減退していく。
そして鳥栖が、そのスキを突いてイニシアチブを奪い返し、先制ゴールをブチ込む。
ところで、アントラーズの「人とボールの動き」だけれど・・
そこでは、「確立したシンプルなリズム」が、感じられない。
たぶん、その背景には・・
アントラーズが、「個のチカラ」で、鳥栖を上回るというファクターがありそうな・・。
要は、彼らの誰もが、個の勝負プレーでチャンスメイクできる・・という自信ね。
ここまで書けば、皆さん、わたしの言いたかったコトは、お分かりですよね。
そう、優れた個のチカラは、うまくマネージしなければ、常に、「諸刃の剣」という課題につながってしまうという事実・・ね。
とはいっても・・
そう、アルトゥール・カイキの同点ヘッドだけれど・・
その背景には、個の勝負プレーがあった。
二つ前のプレーで、後方から押し上げたピトゥカが、実効レベルの高いタメ(個の勝負プレー!)を演出したんだよ。
ソレがあったからこそ、広瀬陸斗が、余裕をもって、決定的クロスをファーサイドへ送り込めた。
また後半では、安西幸輝や樋口雄太が、素晴らしいドリブルシュートをブチかましたよね。
そんなアントラーズに対して、川井健太サガン鳥栖は、あくまでも、人とボールの動きで、スペースを攻略し、最後も、パスでシュートまでいった。
もちろん・・
そう、チームが擁する「個のチカラ」は、存分に活用しなきゃいけない。
でも、それを前面に、押し出し「過ぎ」ても、いけない。
そう、サッカーの基本は、パスゲームなんだよ。
だから、「それ」を基盤に、うまくスペースを突いていくってのが、基本なんだ。
そして、その組織プレーで、うまくスペースを突ければ、そこからは、個のチカラを余すことなく存分にブチかませばいい。
・・ってな感じで・・
アントラーズ攻撃&仕掛けでの「組織イメージング」に、ちょっとだけ、課題エッセンスを見出していた筆者なのであ〜る。
それも、これも、優れた「バランス感覚」っちゅうテーマに、行き着く。
そう、今度の、「The Core Column」のテーマは、まさに「それ」なんだ。
そこじゃ、もちろん、一般生活での「文化的バックボーン」という難しいテーマにも、入り込んでいかなきゃいけない。
筆が進まないのも道理か。
へへっ・・
あっと・・この試合・・
とにかく、秘術を尽くした、素晴らしい、動的均衡マッチではありました。
ダゾン中継も含めて、堪能させてもらいました。
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最後に「告知」です。
どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。
一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」。
- そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」。
自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。
もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。
- まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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