湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2022年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第7節(2022年4月6日、水曜日)
- リカルド浦和レッズ・・本物のリーダーシップが必要だって、このゲームほど切実に感じたことはなかった・・(レッズvsエスパルス、1-1)
- レビュー
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- 大きな「変容」が詰め込まれた、興味ぶかい勝負マッチだった。
まず・・
立ち上がりから、「美しい質実剛健サッカー」でエスパルスを圧倒するリカルド浦和レッズ。
何度も、ゴール機会の「流れ」を創りだしつづける。
その時点で、チーム力が、一クラスも二クラスも、リカルド浦和レッズが上だと感じていた。
余裕を持った、クレバーで力強いボール奪取プロセスを基盤に、次の仕掛けでの人とボールの動きが、美しく機能しつづける。
そして、スペースを攻略したところ(ある程度フリーなボールホルダーの演出!)から、「個の才能」が、とても危険な仕掛けをブチかます。
もちろん・・
組織的な人とボールの動きがスムーズで創造的だったからこその効果的スペース攻略であり、だからこその、可能性満杯の個の才能プレーだったわけだ。
そして、そんな、明確な差が見えるサッカー内容という流れに乗って、リカルド浦和レッズは、先制ゴールまで奪ってしまう(PK!)。
そんなだったから、先制ゴールの後、エスパルスに少し盛り返されたとはいえ、誰もが、レッズの余裕の勝利を信じて疑わなかったと思う。
もちろん私も・・。
でも・・
そう、後半8分の、伊藤敦樹のレッド退場から、風雲急を告げはじめるんだよ。
でも、わたしは、確信していた。
数的に不利になったとしても、レッズは、安定した試合運びをつづけられるはずだってネ。
それが・・
チームの攻守ダイナミズムが、ビックリするほど急激に、ダウンしちゃうんだ。
その落差は、ホントに、とても大きかった。
そこからのレッズは、ボール奪取プロセスなんて呼べない、まさに「受け身の守備」に徹するってな体たらくに落ち込んでしまうんだよ。
この背景メカニズムの内実については、はっきりとは分からない。
選手たちが、一人足りないという状況を、ネガティブに意識し過ぎた!?
レッズ先制ゴールの後から(前半のことネ)エスパルスが何度か魅せた、とても危険な仕掛けに対する危機イメージが高くなりすぎた!?
まあ、よく分からないけれど・・
とにかくレッズは、過度にリトリートし、後方でブロックを組んでしまうような、受け身のプレー姿勢に落ち込んでいったんだ。
私は、そんな展開を観ながら、ボールを奪い返すために「前方」へ押し上げるっていう(積極的&攻撃的な!)意識と意志が、消え失せたって感じていた。
エスパルスのヴァウドに、ヘッドでブチ込まれた同点ゴールシーンだって・・
受け身に立っていたからこそ、効果的な競り合い状態に、まったく持ち込めなかった。
そして、そんな、完璧な「ジリ貧サッカー」がつづいていた(ロスタイムも含めた!)残り15分で、リカルドが動くんだ。
そう、両サイドハーフに、明本考浩と関根貴大を送り込んだんだよ。
そして、この二人によって、前線から両サイドゾーンにかけてのボール奪取プロセスが、大きく活性化していくんだ。
そう、ボール奪取プロセスのダイナミズムが、やっと、本当にやっと、回復の兆しを魅せはじめたんだよ。
そしてレッズのサッカーが、再生していく。
そんな経緯を観ながら、こんなコトを思っていた。
一人足りないからといって、あんな無様な(受け身の!)ブロック守備に陥るなんて・・
それじゃ、まったく何も生み出せないし(体感できないし)、学習できない。
だからこそ・・
そう、明本考浩と関根貴大によって、レッズの雰囲気がポジティブに変容しはじめたことに(すこしは重心を前へかけられるようになって!)、ホッと胸をなで下ろしていたのさ。
まあ、たしかに決勝ゴールは奪えなかったけれど・・
それでも選手たちは、心理的な悪魔サイクルから抜け出す「唯一の手段」が、ボール奪取プロセスの活性化だって、体感したはず。
それは、それで、とても貴重な学習機会(体感)だったと思うわけさ。
最後に・・
アタマに包帯を巻きつけながら、最後の最後まで、攻守ハードワークやゲームメイクに奮闘しつづけた岩尾憲に対し、心からの敬意を表します。
でも、彼自身も感じているはずだけれど、その素晴らしい攻守ハードワークをもってしても、チームが「踊らなかった」というのも、確かな事実だね。
この「刺激リーダーシップ」というテーマについては、「このコラム」も、ご参照あれ。
なんか、退場劇(数的不利)と、勝ち点を失ってしまうコトが、これほど近い相関関係になっているレッズの現状に、とても違和感を覚えている筆者なのですよ。
だからこそ、ホンモノのリーダーシップが必要だと、思うわけだ。
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最後に「告知」です。
どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。
一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」。
- そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」。
自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。
もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。
- まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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