湯浅健二の「J」ワンポイント


2023年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第9節(2023年4月22日、土曜日)

 

スーパーエキサイティングな高質マッチだった・・両チームの選手と監督さんに、同じサッカー仲間として、心からの称賛と感謝の拍手をおくります・・(ヴィッセルvsマリノス、2-3)

 

レビュー
 
えっ!?

ここから、また、もう一つ盛り上がっちゃうのか〜!?

後半37分、左サイドでボールをもった、マリノス交替出場のヤン・マテウス。

相手に突っ掛けながら、スッと左へ持ち出し、素早いタイミングで、正確なクロスボールを、ヴィッセルのゴール前へ送り込んだ。

精密に、待ち構えるアンデルソン・ロペスへ向けて飛んでいくクロスボール。

まさに、見事な、決勝ヘディングゴールではあった。

そして、そこから、それまでのエキサイティングマッチに輪を掛けて盛り上がっていく!?

何せ、ヴィッセルは、「あの」イニエスタをピッチへ送り出し、マリノスも、守備ラインの重鎮、エドゥアルドを交替出場させたんだからね。

もちろんヴィッセルは、脇目も振らず、俊足の(汰木康也と交替した!)ジェアン・パトリッキを中心に、スペース攻略プロセス(攻撃&仕掛け)をブチかましつづける。

ただ、イニエスタは、そんな「雰囲気」には乗らず、冷静にプレーするんだ。

そう、彼は、チャンスメイクの「リンクマン」的なイメージングで、自分に「託された」ボールを、ものすごくシンプルに、次の「スペース」へつないでいくんだよ。

もちろん、ダイレクトでね。

・・そうそう、そのイメージングだよ・・

イニエスタの、シンプルなボールの動きを感じながら、心のなかで声を掛けていた。

でも、チームメイトは、完璧に、前への仕掛けイメージングで凝り固まっている。

だから彼らは、そんな「冷静なファウンデーションパス」なんてイメージング(予測)していない。

たしかに、シチュエーション的には、素晴らしいスペース攻略パスなんだけれど・・

「そこ」から、次、その次ってな感じで、人とボールが、危険に動くことはなかった。

とはいっても、ヴィッセルの意識と意志は「最高潮」。

スペース攻略プロセス(攻撃&仕掛け)は、とても危険な「雰囲気」だけは、放散していた。

そんなヴィッセルに対して、ケヴィン横浜マリノス・・

例によって、強固な守備ブロックを機能させながら、一発カウンターをブチかまそうとする。

実際、流れのなかで、何度か、「行き」そうになったよね。

一体、どうなっちゃうんだろうか!?

わたしは、手に汗にぎりながらも・・

結局は、ケヴィン横浜マリノスが、うまく時間をつかっちゃうんだろうな・・なんて感じていた。

そしてゲームは、マリノス守備陣に、「全体的な流れ」を、うまくコントロールされながら、タイムアップのホイッスルを聞くことになる。

フ〜〜ッ・・

あっと、ゲーム全般の印象だけれど・・

それは、エキサイトメントの極みってな表現が相応しい、動的な均衡マッチそのものだった。

もちろん、動的に均衡したエキサイティングな「せめぎ合いマッチ」の中には・・

観ている誰をも「フリーズ」させるようなゴール機会を、うまく創りだせないゲームも多い。

でも、このゲームは、まったく違った。

両チームともに、スペース攻略プロセス(攻撃&仕掛け)を、フィニッシュシーンまで、持ち込んじゃうんだ。

ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーションに、個のドリブル勝負もミックスしてね。

それは、両チームともに、攻守ハードワークとリスクチャレンジへの意識と意志に満ちあふれていたからに他ならない。

そう、グラウンド上でプレーしていた全員が、例外なく、「勇気のカタマリ」だったんだよ。

とはいっても、たしかに・・

ヴィッセルのボール奪取プロセス(守備)のダイナミズムが、ケヴィン横浜マリノスの「それ」を、大きく上回っていたのは、事実。

そう、ボール奪取プロセス(守備)でのチェイス&チェック(寄せ)からの協力プレスが、素晴らしかったんだ。

その「勢い」は、マリノスの「それ」を大きく凌駕していたんだよ。

そしてヴィッセルは、二つのゴールで先行しちゃうんだ。

たしかに先制ゴールは、自殺点みたいなモノだったけれど、追加ゴールは、汰木康也のスーパークロスから、大迫勇也が、ズバッと決めた。

その二つのゴールが決まるまでは、そんな展開だったから、「今日はヴィッセルのモノだな・・」なんて、安易に考えちゃうのも道理でしょ。

でも、ケヴィン横浜マリノスは、そこから(ヴィッセルの先制ゴールから!?)、ボール奪取プロセス(守備)のダイナミズムを、大きくアップさせ、イニシアチブを奪い返すんだ。

そして、前半33分、センター2列目ゾーンでボールをもった水沼宏太から、スッと動き出したアンデルソン・ロペスの足許へ、美しいスルーパスが通されたっちゅうわけだ。

もちろん、アンデルソン・ロペスが、そんなスーパーな、決定的スペース攻略スルーパスをミスするはずがない。

左足で蹴られたボールは、美しく、神戸ゴールの左隅に、吸い込まれていった。

それだけじゃなく・・

そう、水沼宏太。

彼は、前半ロスタイム(47分)にも、渡辺皓太の、これまたスーパーなコントロールシュートをアシストしちゃうんだ。

渡辺皓太の、右足インフロントで蹴られたシュートは、正確に、ヴィッセルのゴール左上角に吸い込まれていった。

そんなエキサイティングなせめぎ合いマッチだったけれど、それは、(2対2で迎えた)後半もつづくんだよ。

ただ・・

徐々に、互いの「足」が止まり気味になっていったのも、たしかな事実だった。

そりゃ、あの「勢い」で、ボール奪取プロセス(守備)をブチかまし合うんだから、チェイス&チェック(寄せ)の勢いにも、陰りが見えるのも道理さ。

そして、徐々に、両チームの、スペース攻略プロセス(攻撃&仕掛け)における創造性が、減退していっちゃうっちゅうわけだ。

そう、人とボールの動きが、ダウンしていったということ。

そんな展開になったら、やっぱり・・

そう、ケヴィン横浜マリノスに一日の長があるって、感じはじめたっちゅうわけだ。

フムフム・・

ということで・・

とにかく、この、エキサイティングで美しい「せめぎ合い」マッチは、見まがうことなく、「J」を代表する、最高峰クオリティーだった。

ホント、堪能させてもらった。

両チーム選手諸君と、両監督には、同じサッカー人として、心からの称賛と感謝の拍手をおくります。

お疲れ様でした〜・・

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。

一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。

もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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