湯浅健二の「J」ワンポイント


1998年J-リーグ・ファーストステージの各ラウンドレビュー


第三節(1998年3月28日)

レッズvsセレッソ(1-2)

レビュー

 セレッソが、Vゴールをものにしてサヨナラ勝ちをおさめた試合。そこには、両チームの試合展開の浮き沈みがあり、その意味では面白い内容でした。

 最初ペースを握ったのはレッズ。両サイドハーフの、チキ、ペトロヴィッチ、そして日本代表にも選ばれ小野のコンビネーションが冴えます。また、岡野、大柴のツートップも、アクティブな動きから、危険な飛び出しにチャレンジします。そしてそこに、小野のスーパーパスという理想的な展開です。ここまでの時間帯は、セレッソがまったくいいところなし。そして30分、土橋のセンタリングから、こぼれ球を大柴がシュート、またまたこぼたボールを今度はベギリスタインがシュートを決めます。順当な先制ゴールだとすることができそうです。

 それにしても、前半も半ばが過ぎた頃からの両チームのサッカーは、ホントウに「かったるい」ものになってしまいしまた。ボールがないところでのアクティブな動きがなく、あったとしても単純なのです。これでは、守備の「予測のウラを突く」というプレーなど出てくるはずがありません。確かにゴールはあったけれど、アクビが出てきてしまいそうな展開ではありました。

 そして後半が始まりました。そこでスグに感じたのが、一点を追うセレッソの中盤守備が格段にアクティブになってきたということです。前半は、セレッソの鈴木が小野のマークに当たっていたこともあり、中盤守備選手たちの数的、またポジション的なバランスが崩れていただけではなく、完全に「リアクション守備」になっていました。それが、中盤のバランスをとった後半はじまった早々から、格段にアクティブになったのです。それが、危険な攻めにつながります。

 その攻めにおける切り込み隊長(コンダクター=指揮者=といった方がいいかも)が「森島」です。彼のプレーに、格段に進歩した「変化」を感じたのは、私だけではなかったはずです。シンプルなツナギプレー、アクティブなフリーランニング、勝負ドリブル、はたまた必要とあらば、相手を挑発するような「タメ」です。久方ぶりに見る森島の真骨頂ともいえるプレー。もしかすると、日本代表においてベンチを温め続けたことで、彼は、本来の「チャレンジ精神」を忘れてしまっていたのかもしれません。日本代表をハズされたことが、彼のスーパーな刺激になったということです。たぶん松木監督からの強烈なハッパに飛んだに違いありません。基本的な能力は、日本有数です。彼に欠けていたのは、ポジティブな「エゴプレー」だったのです。それがなければ、他の選手たちとの「差別化」をはかることなどできませんからね。サッカーは「自己主張のボールゲーム」なのです。

 そんな素晴らしいセレッソのサッカーに気圧されたレッズは、後半はほとんどといっていいほどクリエイティブな攻めを展開することができません。たまに、「アタマにきた」ペトロヴィッチが、個人勝負で抜け出ようとトライをしますが、いかんせん、まわりが「笛ふけど・・」では・・。

 ただ延長に入ってからは、互いに互角のサッカーを展開します。両チームとも疲れていますから、中盤での守備が受け身がち。両チームとも、中盤ではほとんど「ノーガードの殴り合い」といった展開です。オモシレ〜〜。

 そんな中、レッズ、セレッソ双方が何度かの決定的なチャンスをつくり出します。交代させられたコ・ジョンウンは、アタマにきていましたが、彼に替わって入った横山貴之の出来は「はっきりとした補強」でした。彼の縦横無尽の動き、またボールを持っての積極的なリスクチャレンジで、セレッソの中盤にも「モビリティー」がもどってきたのです。コ・ジョンウンは、確かにツボにはまれば素晴らしく危険なプレーを展開しますが。そこに至るまでが、何となくカッタルイ。彼の、韓国代表でのアクティブプレーをイメージしているこちらには、そんな印象が残ってしまいました。

 最後になりましたが、日本代表にも選ばれた若手ナンバーワンの才能、小野について。彼についての詳しいレポートは、今週金曜日にアップデートされる「2002 Japan」に載せます。ここでは、全体的なコメントを一つだけ・・・。それは、疑いもなく「才能」はトップレベルだが、その才能が代表チームにとっての「補強」となるような「内容」を伴うくらいホントウに熟しているのか・・ということに大きな疑問符がつく・・というものです。



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