湯浅健二の「J」ワンポイント


1998年J-リーグ・セカンドステージの各ラウンドレビュー


第三節(1998年9月5日)

ヴェルディーvsレッズ(0-3)

レビュー

 やっぱりヴェルディーは壊れかけています。

 先週の「2002 Japan」のコラムでも書いたのですが、これほどの落差でサッカーの内容が落ち込んでしまうのですから、サッカーは恐ろしい?!

 イヤイヤ。サッカーでは、チョットのことでチームのパフォーマンスが奈落の底というのはアタリマエですから、驚くには値しません。とにかく、物理的な部分(選手の身体的・戦術的な能力など)だけではなく、モティベーション、戦術的な意思統一など、心理・精神的な部分に関しても、これからのヴェルディーの建て直しは大変な作業になるに違いありません。

 試合ですが、まずレッズの福田が、例の「ボールがないところのプレー」で魅せます。後方でペトロヴィッチがボールを持ち、前を向いた瞬間、50メートルは前方にいた福田が、決定的なスペースへ向け、フリーランをスターとしたのです。そのダッシュは、「ここに来い!!」という「パスを呼び込む」動き。オッ、福田は、まだ良いサッカーに対するイメージを失っていない・・。そんなことを感じて嬉しくなったものです。

 とはいっても、その後は泣かず飛ばす。目立ったシーンは数度ということで、以前の彼のパフォーマンスからすれば、まだまだといった出来でした。それでもプロ意識の高い彼のこと、あと数試合で、元の「フォーム」を見いだすに違いありません。結局、良い選手の条件で最も大事なものは、インテリジェンスなのです。

 レッズの助っ人連中ですが、彼らは本当にリーズナブルな外国人プロ選手だと感じます。新加入のザッペッラの守備は非常に安定していますし、勝負の場面では、読みをベースにしたクリエイティブな守りを魅せます(次のパスを読んだポジショニング・・インターセプトなど)。中盤左サイドを基本的なポジションにしている、チキことベギリスタインも、地味ではありますが、チームプレーに徹した高い貢献度です。

 そしていわずと知れたスーパーマン、ペトロヴィッチ。彼のパフォーマンスは超一流。まず運動量の多いこと。本来彼は、チームの中では「汗かき」タイプのプレーヤーです。フランスワールドカップでのユーゴ代表でも左サイドバックで鬼神の活躍でした。とにかく彼の攻守にわたる活躍が、レッズの心臓であることだけは確かなことです。

 ただ日本人も負けてはいません。まず何といっても小野。彼の意識の高さは、ここ数カ月で何倍にも高まったことを感じます。攻撃における、シンプルプレー(とはいっても、彼のシンプルプレーはレベルが違う?!)からの、メリハリの効いた単独勝負(先制点は彼の演出)。はたまたアクティブな守備プレー。

 以前(ワールドカップ前)の彼の守備では、まだ、ボールのないところで最後までマークし続けるような忠実さに欠ける部分が目立っていました。「アリバイ守備プレー」が目立っていたということですが、ここにきて、相手からボールを奪い返すという守備の目標を意識したプレーが本当にうまく機能するようになっています。自分が取れなくても、味方に奪い返してもらえばいい・・、そんな高い意識です。たぶんそれには、ワールドカップのスピリチュアルパワーだけではなく、ペトロヴィッチのプレーも好影響を与えているに違いありません。彼の今後に、ますます期待が高まる湯浅です。

 それ以外でも、ペトロヴィッチと組んでボランチに入った二十歳の石井の、インテリジェンス溢れるクレバーなプレーも目立っていました。もちろん、抜群の安定感を見せるGK、田北、西野、山田、城定、そしてザッペッラの最終守備ラインも、クリエイティブな守備を見せます。

 これでレッズの単独首位は変わらないわけですが、(戦術など、論理的な背景も含めた)勢いでは、今後のリーグでの活躍に大いに期待できる試合ではありました。

 それもこれも、レッズの原監督が良い仕事をしていることの証明ではあります。




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