湯浅健二の「J」ワンポイント


1998年J-リーグ・セカンドステージの各ラウンドレビュー


第十節(1998年10月14日)

マリノス対エスパルス(3-4)

レビュー

 この試合、エスパルス中盤守備の重鎮であるサントスと、攻撃の中心の一人である澤登が欠場したことは残念でしたが、全体的には、期待通りのエキサイティングな内容でした。

 エスパルスはいつものスリーバック、マリノスも例によってフォーバックで試合に臨みます。井原を中心にしたマリノスの最終守備ラインは、いつものようにある程度は安定しているのですが、対するエスパルスの守備ラインは、もうハチャメチャ(ちょっと言い過ぎですかネ・・)。とにかく、安永、城に対するマークが甘いだけではなく、後方から上がってくるバルディビエソ、中村俊輔などを、簡単にフリーにしてしまうのです。

 最前線の安永のスピードは衆目の認めるところ。マークする西澤は、そんな安永を甘く見ているわけではないのでしょうが、とにかく何度も、タテパス一本で振り切られてしまいます。一度やられたら、二度と同じ失敗を繰り返さない。そんな学習能力が、一流のディフェンダーであることの条件です。たしかに後半に入ってからは、ある程度は改善されましたが、前半で繰り返した失態を見ていると、どうしてもエスパルスの守備陣に不安を感じる湯浅なのです。

 そんなことが自信喪失につながったのでしょうか、不安定なプレーを続ける西澤が、マリノスの先制ゴールを演出してしまいます。それは前半の19分。せっかくエスパルスGKの真田がギリギリのシュートを止めたのに、結局は、そのこぼれ球をクリアした西澤が、直接味方のディフェンダーに当ててしまい、それが自ゴールに飛び込んでしまったのです。あまり見ることの出来ない珍ゴールではありました。

 そこからは、エスパルスが攻勢をかけ始めます。何度もマリノスゴールに迫るエスパルス。逆にマリノスの攻撃には覇気が感じられなくなってきます。

 と思っていたら、今度はマリノスが、安永、城らのスピードを十二分に生かした危険なカウンターを仕掛け始めます。ここらあたりから、試合が俄然活気づいてきました。

 スピードではついていけないのだったら、クレバーなポジショニングなどで対処すべきなのに、エスパルスの守備陣にはその工夫が感じられません。森岡の出来も期待はずれ。これでは優勝戦線にとどまるのは無理かもしれない。そう思ったものです。いくつかのメディアで、エスパルスのサッカーは、ジュビロに次ぐ内容だ、と書いた手前、あまりそんなことは言いたくはないのですがネ・・。

 さて後半です。得点状況は、前半ロスタイムに、エスパルスのアレックスがフリーキックを直接決めたことで、1対1の同点です。そして後半早々、上野と川口の判断ミスから、アレックスにボールを拾われ、そのままゴールを奪われてしまいます。エスパルス、逆転。

 そこからは、完全にエスパルスのペース。オリバが、三人抜きで決定的なシュートを放ったりします(バーを直撃)。このままマリノスは、悪魔のサイクルに陥ってしまうのだろうか・・。そんなことを考えたものでしたが、そこは優勝争いのトップをいくチーム。自分たちで、再び安定した試合のペースを見つけだしてしまいます。やはり今の彼らの勢いは違うな・・そんなことを思ったものです。

 その後も、一進一退の見応えある攻防が続きます。そしてマリノスが、左サイドからの攻めでまず同点。その後、37分には、エスパルスのベテラン、長谷川が勝ち越しゴール。このまま試合終了か・・と思われた41分には、タテパス一本から、マリノスの安永が森岡をかわし、右足一閃・・同点ゴ〜ル!!

 延長に入ってからも、そんな一進一退の攻防が続きます。見ている方にとってはおもしろいことこの上ないのですが、チャンスの質からいえば、マリノスの方が上であることは一目瞭然といったところでした。

 エスパルスでは、やはり、サントス、澤登に代わる選手はいないということです。経営状態の悪いエスパルス。限られた人材で、ここまでコンペティティブな(競争力のある)チームを作り上げたアルディレス監督。彼に拍手。

 結局、延長終了のホイッスルが吹かれる間際、エスパルスのオリバが決勝点を入れてエキサイティングゲームに決着がつくのですが、内容だけを考えた場合、マリノスが惜しい勝ち点を失った・・というのが妥当な評価かもしれません。

 これでマリノスが首位から滑り落ちました。いよいよ混戦模様。私は、最後には、ジュビロ、アントラーズ、マリノス、そしてエスパルスの首位争いになると踏んでいるのですが。みなさんはいかが・・。



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