緊張感があるといったのは、両チームともに、最後まで守備の集中が切れなかったからです。今回のワールドカップでいえば、準々決勝のフランス対イタリア。とにかく、中盤から最終守備ラインにかけて、両チームともに、忠実でクリエイティブ、そしてダイナミックな守備を展開していました。
ということで、あまり目立ったゴールチャンスは生まれなかったわけですが、それでも守備のせめぎ合いは魅力満点。わたしはこの試合を堪能しました。
今日は時間があまりないため、この試合での、両チームの決定的な「僅差」だけに集約して書くことにします。
そのワンポイントは「スペース感覚」。そこでの両チームの僅差が、試合の行方を決めてしまったのです。
スペース感覚。それは、決定的なスペースでパスを受けるための動き(フリーランニング)と、そこへの最高のラストパスのコンビネーションのことです。つまり、パスの出し手と受け手の「あうんの呼吸」。「勝負はボールがないところで決まる」「決定的なスペースの活用」・・そんなコンセプトの「浸透度」の僅差が勝負を分けたということです。
そんな僅差は、ゲーム開始早々の、中山のヘディングシュートから見え始めます。
「ニアポスト・スペース」へ走り込む中山。そこへ、ピッタリのセンタリングを送り込む名波。それは、両チームの「スペース感覚の僅差」を象徴していたシーンだったのです。
この試合の唯一のゴールも、そんなスペース感覚から生まれます。
ピッタリのタイミングで、エスパルス・ゴール前の決定的スペースへ走り込む藤田。そしてその動きに合わせるように、これまたピッタリのタイミングで送り込まれるスルーパス。マークに付き切れなかった西澤が、結局はその藤田を引き倒してしまうことになります。PKは当然のペナルティーでした。
そして中山が、リーグ記録を更新する33ゴール目を決めます。
エスパルスも積極的に攻め上がるのですが、個人勝負頼りという面が目立っています。個人勝負も、「それだけ」となったら効果は半減。いつも書いているように、単独で勝負できる場面が訪れるまでは、しっかりとパスゲームに徹する。そして「イザ、勝負!」となったら、勇気をもって個人勝負にチャレンジする。そんなメリハリの効いたプレーのみが、決定的なゴールチャンスに結びつくのです。
それに対し、とにかくジュビロの、決定的なスペースへの素早いタイミングでのラストパスが目立ちます。走り込むのは、もちろん中山、奥、はたまた、二列目の藤田や名波など。彼らの、次の展開に対する「イメージ(ピクチャー)シンクロレベル(チームメート同士の次のプレーに対するイメージの調和レベル)」は本当に超一流です。それは、彼らの「イメージ・ベース」のアクションが、心理的な「オートマティゼーション」のレベルまで達しているから出来ること。本当によくトレーニングされたチームだと感じます。
プレーのオートマティゼーションとは、何となく「起こる!!」と感じただけで自然と次のアクションが出てくることをいいます。それは、やはり「体感の差」。トレーニングで、そのような場面を何度も、何度も繰り返し体感することでしか培うことができない感覚なのです。
最後にもう一つ。両チームのボランチの活躍について。
こんな緊張感あふれる試合ですから、リスタートや、カウンター攻撃が非常に重要な意味をもってきます。試合の流れの中で、つまり「組み立て」ベースの攻撃ではチャンスが生まれにくいから、どうしてもセットプレーや、相手のミスに乗じたカウンター攻撃が本当に危険な存在になってくるというわけです。
そして、そのことをよく心得ている両チームのベテラン・ボランチが、目立たないところで要所を締める守備プレーを魅せたのです。それは、言わずと知れたジュビロのドゥンガと、エスパルスのサントス。
中盤の組み立て段階で、チームメートがミスをして相手にボールを奪い返される・・。それは典型的なカウンター攻撃の場面なのですが、そんな状況で魅せる、彼らの必死の形相でのカバーリングの動き。それは感動そのものでした。そんな彼らの守備プレーを見るだけで入場料にオツリがくるというものです(プレスIDで観戦している湯浅ですから、その言葉に現実感はありませんけれどネ・・)
さて、マリノスとエスパルスが敗れ、優勝争いは、前年同様、首位のアントラーズと二位のジュビロに絞られてきました。実力が反映された結果です。他のチームには、この両チームの「プレー内容」から、良い面を素直に吸収して欲しいものです。
今回のコラムはちょっと書きなぐりになってしまったように感じます。ご容赦アレ・・。次は、アントラーズとジュビロとの勝負の頂上対決です。今から楽しみで仕方ありません。