湯浅健二の「J」ワンポイント


1998年J-リーグ・セカンドステージの各ラウンドレビュー


第七節(1998年9月23日)

フリューゲルスvsグランパス(2-3))

レビュー

 面白くない試合でした。

 ボールの動きが、本当にカッタルイ試合だったのです。やはりサッカーの醍醐味は、素早く、広い展開のパスゲームにあります。それが、この試合ではほとんどといっていいくらい出てきません。

 それには、横浜国際競技場の芝にも問題があります。それが、レベルを超えて「ユルイ」のです。それに、前回の試合後の整備がまったくされていないような印象を与えられるほど、表面もデコボコのように見えます。これは、確実に芝のメンテナンスの問題のように感じます。これでは、ダイナミックなサッカーは望むべくもない?! とはいっても、そこはプロ。どんな状況でも、高いモティベーションに支えられたアクティブサッカーを展開できないはずがありません。

 それにしても横浜国際競技場。フレキシビリティーのない官僚的な設計もそうですが、芝のメンテナンスの問題など、「サッカー劇場」にはほど遠い雰囲気ではあります。2002の決勝を誘致しようというのですから、もっと「世界基準」のエンターテイメント性を前面に押し出さなければ・・。でも、どうせ、「スポーツ」ではなく「体育」しか経験したことのない「官僚体質」の人々がマネージメントしているに違いないでしょうから、期待しても限界があるか・・。

 さて試合ですが、たしかに、グランパスのストイコビッチや平野、フリューゲルスのサンパイオ、レディアコフ、山口、三浦などが、たまには魅力的なプレーは魅せます。ただそれも本当に「単発」。次につながりません。

 試合は、グランパスがほとんどの場面でゲームを支配してしまうといった展開。それでも、決定的な勝負の場面を演出するまではいきません。そして逆に、前半の29分。フリューゲルス、山口からのタテパス一本で、グランパスの最終守備ラインが脆くも崩されてしまいます。氏家のタテ勝負一発に、ゴールを奪われてしまったのです。

 ここから少しはゲームが(ダイナミックに)動き始めるかも・・という期待をもった湯浅だったのですが、それもハズレ。それは、それはカッタルいサッカーが続きます。

 そんな雰囲気のなか、グランパスが同点ゴールを奪います。

 ストイコビッチが右サイドでボールをもち、例の「世界レベル」の「タメ」と「ルックアップ」を演出します。それにしても、マークするディフェンダーの間合いの詰めかたの甘いこと。それでは、完璧なセンタリングを送り込まれるのも道理。そして案の定、ゴール正面で待ちかまえる福田に、ピッタシカンカンのラストパスを通されてしまいます。ヘディング一閃!! 同点ゴール。それにしても、ゴールを決めた福田に対するマークは一体どうなってしまっていたのでしょう。何という集中力のない守備?!

 後半も同様のカッタルい内容です。前半の40分に、フリューゲルス、遠藤が退場になってしまったこともあり、フリューゲルスには、しっかり守ってカウンターという戦術的なオプションしか残されていないのですが、逆に、ここがチャンスのグランパスも、ボールのないところでのプレーが緩慢だから、まったくダイナミックな攻撃を仕掛けられません。

 フリューゲルスは、一人退場になってしまったことがポジティブな刺激になったようで、後半の守備は、前半のように簡単にマークがズレてしまうことはありませんが、とはいっても、グランパスのボールのないところでのプレー(フリーランニング)が緩慢だったから、簡単に「次」の展開が読めてしまったのかも・・。

 ゲームは、後半35分に、ストイコビッチの「異様な」落ちつきからの完璧なラストパスを、野口が勝ち越しゴールに結びつけます。その後、PKからのフリューゲルスの同点ゴールはあったものの、直後の、またまたストイコビッチの「世界のサイドチェンジ」から、望月が決勝ゴールを決めてしまいます。

 この結果については、試合内容から「順当」だと感じますが、それにしてもグランパス。優勝を狙うチームとしては、まだまだ内容に不満が残ります。この試合での三点は、すべてストイコビッチが演出したのですが、彼がいなければ、まったく危険な攻撃を演出できないことも事実なのです。グランパスの選手たちには、ストイコビッチのボールを持った時のプレーだけではなく、世界レベルの「ボールのないところでのプレー」も見習ってもらいたいものです。

 さてリーグですが、首位のレッズとレイソルが敗れ、グランパス、マリノス、アントラーズ、そしてジュビロが勝利をおさめました。予想したとおり、かなりの混戦模様になってきました。この中では、試合内容で、ジュビロ、マリノス、アントラーズに一日の長があると感じます。残念なのは、私がものすごく「内容」を評価しているエスパルスに、結果がついてこないということです。それでもリーグは長丁場ですから、彼らにもいつかまたチャンスが巡ってくるに違いありません。

 セカンドステージは、そんな優勝争いだけではなく、降格争いも見物です。さて、楽しみましょうかネ。



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