湯浅健二の「J」ワンポイント


1998年J-リーグ・セカンドステージの各ラウンドレビュー


第八節(1998年9月26日)

レイソルvsエスパルス(1-2)

レビュー

 前節に見た試合(フリューゲルス対グランパス)に比べて、この試合のエキサイティングなこと。攻守の切り替えが早いだけではなく、とにかく両チームのボールの動きが、ものすごく広く、素早いのです。

 これくらいのボールの動きになれば、それぞれの勝負シーンに、予想もできない瞬間的な変化が出てきますし、スペースだってどんどんと活用されます。

 もちろんそんなチームプレーの中に、オリバ、伊東、ファビーニョ(以上エスパルス)、ストイチコフ、加藤、ベンチーニョ(以上レイソル)などによるパーソナリティーあふれる単独勝負が、ほどよくミックスされるのです。基本的にはチームゲームに徹するけれど、でもチャンスとなったら、そんなパーソナリティーたちが、爆発的なリスクにチャレンジする単独ドリブル勝負を仕掛けていく・・。そんな、「チーム」と「個人」のバランスが、素晴らしくエキサイティングな試合内容を演出したというわけです。

 だから、驚きプレーが連続します。観客の「オ〜〜!!」という歓声が、ひときわ大きく聞こえたモノです。

 さて試合ですが、アウェーゲーム、澤登がいない、ということでエスパルスは最初から押され気味です。ホームのレイソルが、中盤守備、バックの押し上げなど、最初からものすごく積極的だったこともあるのですが、私は逆に、エスパルスの試合巧者ぶりに感心していました。

 とにかく、最初は相手の勢いをしっかりと受けとめ、ゲームが落ちつくまでは、タイミングの良いカウンター攻撃で対応しよう・・そんな彼らの意図がはっきりと見えていたのです。案の定、前半にも何度か非常に危険なカウンター攻撃を仕掛けていました。

 対するレイソルの勢いは止まりません。中盤でのアグレッシブな守備からボールを支配し、ストイチコフを中心にした危険な攻めを展開します。何度か決定的に近いチャンスを逃した後、ストイチコフの、これが世界・・というダイレクトパスからベンチーニョが先制ゴールを決めたのですが、その時のベンチーニョのフリーランニングも、ストイチコフのダイレクトパス同様、お見事の一言でした。

 後半、エスパルスのアルディレス監督は、最初から動きます。今期スーパーサブとして活躍する、ベテランの長谷川を投入し、最終守備ラインをフォーバックに変えたのです。それは、攻撃的な・・というか、選手たちの「覚醒」を促すシステム変更でした。

 中盤を厚くするが、ちょっとでも油断すれば、相手の攻撃にスペースを簡単に利用されてしまう・・。そんな意識に目覚めさせたのです。それからのエスパルスは、中盤守備がアクティブに厚くなっただけではなく、フリーランニングや、オリバ、伊東などの「パーソナリティープレー」が連発されるなど、攻撃も非常にクリエイティブなものになっていきます。それでも、守備のバランスが崩れることはありません。それは、互いのカバーリングが非常にうまく機能していただけではなく、攻撃から守備への切り替えも、目に見えて素早くなっていったからです。

 そこからは、前半とは逆の、エスパルスの危険な攻撃だけが目立つような試合展開になってしまいます。そして、オリバの「タメ」から伊東にわたってエスパルスの逆転ゴールが決まります。

 それはエスパルスの集中力が限界まで発揮され、維持された試合でした。

 集中力。それは、考え続けることができる能力のこと。それが最後まで持続するかどうかが勝負の分かれ目になるのですが、それは、中盤での忠実な守備、クリエイティブなフリーランニングなどの、ボール周りの攻撃プレーとは比べモノにならないくらい厳しいプレーとなってグランド上に現れてきます。そんな集中力という意味でも、エスパルスに一日の長があったとすることができそうです。

 それにしてもストイチコフのフリーキック。とにかくスゴイ!スゴイですね〜〜。

 低い弾道で、ゴールまで勢いが落ちません。世界レベルの選手なのだから当然?!イヤイヤ、それも、若い頃の血のにじむようなトレーニングの成果なのです。プロになってからでは、戦術的トレーニングなどに時間を割かれてしまいますからネ。日本の若い選手たちには、単調なトレーニングにはなりますが、このような基本的な技術を、もっともっと磨いて欲しいと思います。

 さて、レッズが敗れ、グランパスが勝ち点「2」を失いました。だんだんと私が予想する優勝の本命、ジュビロ、アントラーズ、マリノスがポイントを伸ばしてきています。これからがリーグ本番。集中力を持続できなくなったチームから戦線離脱していくことになるでしょう。



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