湯浅健二の「J」ワンポイント


1998年J-リーグ・セカンドステージの各ラウンドレビュー


第五節(1998年9月15日)

ヴェルディーvsベルマーレ(3-2)

レビュー

 先日の「2002 Japan」で、「アララ、ヴェルディーが壊れかけている・・」というタイトルでコラムを書き、そしてその次の週に、ニカノール監督が更迭されてしまいました。

 そのコラムの中で、ヴェルディー選手たちのモティベーションの低さを指摘し、それは、ひとえに監督の責任である、と結びました。モティベーションの低さは、特に守備の忠実さと、攻撃における「ボールのないところでのフリーランニング」の積極性に現れてくるのですが、それが、とにかく「壊れかけている(既に壊れちゃった?!)」と表現するしかないほどのひどい出来だったのです。

 また、負けた試合の後のヴェルディー選手たちの、相手チームとのニコヤカな交歓風景も奇異に映ったものです。それは、確実に、監督との確執や、チーム内の権力争いなど、内部的な問題を現したものと疑ってかかるに十分なシーンではありました。

 まあ、そんな経緯があって、川勝監督が登場したわけですが、彼がまず手がけたことが、守備の「決まり事」の徹底ということだったようです。

 当然です。それまでのヴェルディーは、自軍ゴール前でも、マークの受け渡しをしたり、また二列目、三列目から「飛び出して」くる相手選手のマークまで「タテの受け渡し」をしようとしていたのですからネ。そんなことは、世界の超一流でも、なかなかできないもの。「ボクらって、スマートなんだゼ・・」というプレーは、たしかに状況に応じてはなければならないものなのですが、特に最終守備局面など、最後の勝負の場面でもそれでは、勝てっこありません。

 ヴェルディーは、個人的には能力がある選手が集まっています。だから、特に守備における戦術的な「忠実さ」さえ徹底できれば、今日のような、ある程度の内容のサッカーはできるのです(前節、対グランパス戦でも内容は良かった)。

 また、彼らの攻めが広くなったことも特筆の変化でした。とはいっても、それはアタリマエのことを、やっと始めたということにしか過ぎませんがネ。中央突破ばかりを繰り返すような、変化のない愚鈍な攻めでは、相手の守備ラインを崩すことなど望むべくもないのです。

 内容的には、両チームともに、中盤守備がアマく、本当にノーガード・・という展開になってしまいます。とにかく、中盤でボールを受ける選手たちが、両チームともにほとんどノーマークという状態なのです。ということで見ている方にとっては面白いことこのうえないサッカーではありました。

 ともあれ、連敗続きだった両チームが、少し復調の兆しを見せはじめたことは喜ばしい限り。基本的には、チカラのある両チーム。今後の彼らの活躍(上位いじめ?!)に期待しましょう。

パープルサンガvsジュビロ(2−3)

レビュー

 この試合、ジュビロは純粋ジャパニーズチームで臨みました。そして、いつものクリエイティブ・パスゲームを披露します。

 彼らのイメージの中に、良いサッカーの輪郭が完全に植え付けられているのでしょう。とにかく、そのパスプレーは見事。特に、シンプルに、「タテ」へつないでしまうパスは、心地良いことこの上ありません。

 ドゥンガ、アジウソンなどの外国人選手がいるケースと、日本人だけのサッカーに、(もちろん局面的には「差」があるにしても)全体的な質には変わりはない・・そんなことを感じたものです。

 クリエイティブパスゲームの中心である両ハーフ、名波と藤田、忠実な「決定的フリーランニング」を繰り返す川口、中山のツートップ、福西、奥のボランチコンビ、また守備ラインからどんどんとオーバーラップしてくる、服部、古賀などが、それこそ「ウィー・アー・ザ・チャンピオン」という内容のあるゲームを繰り広げるのです。中盤での「タテのポジションチェンジ」に関する、チーム全体に共通するイメージがしっかりしていることも特筆モノ。素晴らしい。

 特に彼らの、シンプルに、前方にいる味方の足元へ、素早く、本当に素早くタテにつないでしまうパス。シンプルなように見えて、それは「心理的」に簡単なパスではありません。パスの受け手のスグうしろにマークする相手の顔が見えているのですからネ。それでも彼らは、ものすごく早いタイミングで、どんどんと、そんな「足元タテパス」をつないでしまうのです。そしてそこから、横、バック、そして決定的スペースへと、どんどんと素早いパスをつないで攻撃を展開してしまうのです。

 たぶんそれは、ドゥンガ効果なのかもしれません。ブラジルチームは、そんな「足元タテパス」をどんどんとつなぎ、そこからの展開で相手の守備ラインを崩してしまいますからネ。

 タテに一本つないでおいてから(つまりボールのタテ方向の位置が、瞬間的に変化してしまう=守備にとっては大きな脅威)、二列目、三列目、はたまたサイドバックなどがどんどんと、タテへフリーランニングしてきます(オーバーラップ)。つまりそれは、非常に質の高い「ポストプレー」の繰り返しだということです。

 対するパープルサンガですが、彼らのプレーは、本当にジュビロと対照的。とにかく、各ステーション(選手)でのボールの停滞度が、度を越しているのです。そんなカッタルいボールの動きでは、ジュビロの堅守を簡単に崩せるはずがありません。

 ゴールも含め、彼らが作り出したチャンスのほとんどは、どちらかというと「単独アクション」ベースのものでした。たしかにエジミウソンはうまいですが、モダンサッカーで、一人でサッカーをやろうとしても・・。彼と、ベルマーレのリカルジーニョには、共通項がありそうです(とはいっても、リカルジーニョの後半は、守備とチームプレーでも魅せましたがネ)。

 これは、一点差の勝負だったのですが、サッカーの内容としては、大きな差を感じたゲームでした。



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