湯浅健二の「J」ワンポイント


1999年J-リーグ・ファーストステージの各ラウンドレビュー


第二節(1999年3月13日)

ヴェルディーvsセレッソ(2-0)

レビュー

 試合後に出される公式記録を見て驚きました。両チームあわせて「25本」ものシュートが放たれたというのです。試合内容からは、まったく予想できないシュート数の多い試合だったというわけです。ホントカ?!

 試合は、そんな印象が残るほど退屈な内容。6000人しか入らなかったスタジアムの雰囲気も、試合内容を反映するかのように盛り上がりません。

 この試合でもっとも目立ったのは、両チームともにボールの動きがカッタルく、ココゾのチャンスに「走り抜ける決定的フリーランニング」を見せる選手もほとんど出てこないこと。とはいっても、西澤、ファン・ソンホン、ノ・ジュンユン、森島、そして特に右サイドバックの鈴木が展開するセレッソの攻撃からは、たまには、「ダイナミズム」溢れる鋭さを感じましたがネ・・。ただ対するヴェルディーの攻撃で目立っていたのが、スピードのあるエンリケと、ヘディングの強い高木くらいだったのは寂しい限りではありました。

 ヴェルディーに対する評価が手厳しいものになってしまったのは、私に、選手個々の優れた能力からすればもっと動きのあるダイナミックなサッカーが展開できるはずなのに・・という思い入れがあるからなのかも知れません。

 最終守備ラインの、山田、中沢、米山、西ヶ谷、中盤の北沢、そして前述の高木とエンリケ。キャパだけはかなりのレベルにあると思うのです。だから・・。あ〜〜、フラストレーションがたまってしまう。

 ヴェルディーのボールの動きの鈍さですが、もちろんそれは、ボールがないところでの動き(フリーランニング)が鈍いこと、またボールを持った選手の「こねくり回し」が原因です(セレッソも基本的には同じでしたがネ・・)。周りが動かなければ、ボールを持った選手は、簡単にはパスを回せないでしょうし、動いても、シンプルなタイミングでパスが回されてこなければ、結局は「ボールなしの動き」も止まり気味になってしまいます(これを『ボール停滞の悪魔のサイクル』といいます!)。そして結局は、止まったステーション(止まった選手の足元)を、ボールがテレテレと鈍く動くだけになってしまい、相手守備に、簡単に「次のアタックターゲット(パスの受け手)」を絞り込まれてしまうのです。あ〜あ・・。

 この試合では調子が悪かった?! たしかにそうかもしれませ。それでも、「現象面」だけならまだしも、プレーの中に、しっかりボールを動かすという「マインド(やろうとする意図)」が明確に見えてこなかったことは問題です。

 素早く、広い展開に対する「意図」は、見ていればすぐに分かります。ということは、選手たちが持っていなければならない「共通のプレーイメージ」がなかった?! そんなことはないとは思いますが、彼らがイメージとして持っていたのは、まず「落ち着いて?!」ボールを動かしながら攻撃の起点(要は、アタックゾーンでフリーでボールを持つ選手のこと)を演出し、そのチャンスに「爆発的にテンポアップ」する・・ということなんでしょうか。それでも、近代サッカーでは、「落ち着いて・・」の意味が大きく変化しているのですがネ・・。

 まあ、彼らも「再生中」だというし、守備だけはそこそこ安定しているから、もう少し様子を見てみましょう。勝つことで、ヴェルディーのマインドもより積極的なものに変化していくかもしれません。次節はジュビロ戦。面白い試合になることを願って止みません。



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