湯浅健二の「J」ワンポイント


1999年J-リーグ・ファーストステージの各ラウンドレビュー


第5節(1999年4月3日)

レッズvsヴェルディー(2-2)

レビュー

 久しぶりに「燃えるレッズサポーター」のエネルギーを身体いっぱいに感じてきました。いやホント・・、ホンモノのサッカーネーション・スタジアムの雰囲気なんですヨ。素晴らしい・・。

 そんな雰囲気に後押しされるように、試合は、(外国人選手、小野、福田などがいないにもかかわらず)レッズの攻勢で始まります。

 試合後のインタビューで原監督は、「やろうと思えば、何人かはプレーできたとは思うが、ここは、元気のいい若手を使おうと思った・・」と言っていました。変化が組織を活性化します。どんどんと「元気のいい若手」を使っていけば、それがポジティブな刺激となって、組織(チーム)全体がレベルアップしていくものです。組織が硬直化してしまったら(変化がなければ)、全体パフォーマンスは確実に下降線をたどってしまいますからネ。

 ということでレッズは、(前半6分に)先制点を奪った後も、(ゲームは支配しているけれども)中盤のバランスがうまく取れないヴェルディー攻撃のスキを突くような鋭いカウンターを仕掛けるなど、それは内容の伴ったサッカーを展開していました。

 ただ彼らの元気が目立っていたのは前半だけ。この試合で中盤の「核」の役割を担っていた広瀬と池田の運動量が(集中力も・・)落ちてきた後半は、完璧にヴェルディーにペースを奪われてしまいます。

 そして(後半6分に)北沢に同点ゴールを決められた後は、雰囲気は完全に「負けゲーム」というところまで落ち込んでしまいます。原監督も言っていたことですが、今のレッズは、どちらかというと「頭でっかち」になりすぎているようです。何とかしなければ・・、今はどうするのがベストなのだろう・・などと考えることが先走ってしまい、「行動」がついてこなくなってしまう?! 「思い切りの良さ」というか、とにかく今の彼らは、アクションを起こしながら考える・・ということも念頭においてプレーすべきなのかもしれません。

 同じことは、途中出場した盛田にもいえます。延長に入ってからは、有効なポストプレーなど(ヘディングは中澤に抑えられがちでしたがネ)、(期待される)パフォーマンスがある程度はもどってきましたが、調子が乗るまでのプレーのカッタルかったこと・・。一度などは、絶対に走らなければならないスペースへ動かず(案の定パスは出ましたがネ・・)、真っ赤のサポーターからヒンシュクをかっていました。たぶん彼は、自分自身に対しても腹を立てていたに違いありません(彼の態度からアリアリと伝わってきます)。そのこと自体はポジティブなのですが、それでも、「怒る(ポジティブな自己刺激)」までに時間がかかり過ぎます。

 彼にとっては、登場した瞬間からの全てのプレーが「チャレンジ」でなければなりません。失敗してもいいから、とにかく「自分の信ずる何か」に、ひたむきにトライする・・そんな積極的な姿勢がなければ「ゲームの流れに乗る」ことなど望むべくもありません。

 彼には大きく開けた将来があるのですから、とにかくリスクチャレンジの姿勢をもっと前面に押し出さねば・・。

 対するヴェルディーの若いチカラについて・・。この試合では、ヴェルディー中盤守備、「リンリン・コンビ」の一人、小林に注目していました。

 確かに彼は才能溢れるプレーヤーです。ボールの持ち方は、自信あふれる自然体。詰まった状態でも、素晴らしいボールコントロールとウマイ身体の使い方で、簡単に相手のプレスを外してしまったり、「テレテレ」走っていたかと思えば、爆発的にテンポアップしての、決定的スペースへ走り込んだりと、とにかくアタマの良いプレーヤーだな・・と感じます。

 ボランチとしては、ボールがないところでの(フリーランする相手のマークなど)守備の忠実さ、「結果としての無駄チェイシング(ただしチームにとっては大きな意義あり!!)」など、まだまだ課題は抱えていますが、それでも彼を守備的な位置でプレーさせることは大正解だったようです。あとは、もっと「自分から」積極的にボールに絡んでいくことです。そうすれば、彼ほどの才能ですから、順調に、そして大きく成長するに違いありません。ハイポテンシャル・プレーヤーを見るのは楽しいことこの上ないのです。

 可能性といえば、もう一人、なんといっても「心理・精神的に復活」した石塚です。

 彼にも注目していたのですが、最前線での動きには、これが「あの」石塚?? と驚きさえ感じたモノです。何度も、何度も「クリエイティブな無駄走り」を繰り返す石塚。以前だったら、二〜三度走ってパスがこなければ、確実に足を止めてしまったに違いないのに・・。

 また、最前線からの「チェイシング」も特筆モノでした。「ここでボールが奪い返せる!!」と確信したときの守備参加の鋭いこと・・。途中交代しましたが、彼の「物理的・心理的・精神的」なチーム貢献度は、かなり高いレベルにありました。前節のアントラーズ戦、そしてこのレッズ戦。彼の「プレー内容」は向上を続けています。チームメートからの信頼度の高まりを感じます。

 さて、二つのゴールを決めた北沢。いつもの「スーパー・アクティブプレー」です。言うことはありません。素晴らしい・・

 ヴェルディーですが、とにかく「内容」がどんどん進歩していることを感じます。

 中盤(リンリン・コンビ+北沢+ジェフェルソン)、最終守備ライン(米山、中澤、山田、杉山、そして杉山と交代した中村)における、ボールを持つ相手にチェックにいく者と、バックアップを意識する者(つまり「次」を狙う者)との抜群のコンビネーションイメージ。そしてそれをベースにした、アクティブで効果的な守備(忠実さも向上)。格段に活性化した「(素早く、広い)ボールの動き」。攻撃での、効果的なテンポチェンジ。素晴らしい「決定的フリーランニング(ココゾ!! のタイミングでの決定的スペースへの走り抜け)」と、イメージが完璧に「シンクロ(同期)」した、素晴らしいタイミング、強さ、種類のラストパス。

 最終守備ラインのプレーでこんなシーンもありました。それは、中盤で石井が、フリーでドリブルしてきた場面です。右サイドには盛田がいます。こんな状況では、最終守備ラインから一人出て、石井のチェックに向かうのですが、ここでラインをコントロールしている米山は、ラインを崩さず(ラインを崩すことによって、決定的スペースを作り出してしまう!)、味方が(後方から)チェイスするのを待ったのです。

 石井は、ドリブル突破にトライするわけでもなく、かといってラストパスも出せず、結局は中途半端なプレーに終わってしまいました。こんなところの、ヴェルディー最終守備ラインの判断も秀逸でした。

 (前節のコラムの繰り返しになりますが・・)今のヴェルディーが好調なのは、「守備」がしっかりしているからです。それがあってはじめて攻撃のファンタジアを表現できるというわけです。

 彼らは、「考えるアクティブ・サッカー」を展開しています。以前は、考えることで(オレッてクレバーなんだゼ・・ってな具合の)忠実さに欠け、足が止まり気味のパッシブプレーが目立ったモノでしたが、今の彼らは、本当に「イメチェン進行中」のようです。そんな「意識改造」がうまくいき、ホンモノのチームになりつつあるヴェルディー。どんどんと魅力的に変身しています。楽しみじゃありませんか・・。



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