湯浅健二の「J」ワンポイント


1999年J-リーグ・ファーストステージの各ラウンドレビュー


第六節(1999年4月10日)

レイソルvsジュビロ(0-1)

レビュー

 レイソルは、ホームゲームということもあり、アクティブな立ち上がりです。アクティブといったのはもちろん中盤守備でのこと。なるべく「高い位置」で相手からボールを奪い返し、ストイチコフにつないで素早く攻める・・ということなのでしょう。自分たちの「ペースを作り出す」・・そのもっとも核心は「守備」にあるのです。相手からボールを奪い返さなければ攻撃を始めることさえできないのですからネ。そしてそのことが、「ゲームの流れを自分たちに引き寄せる」ことにつながるのです。

 一方の攻撃ですが、この試合では、レイソル最前線の「核」、ベンチーニョが、怪我ということで先発から外れています。そのこともあって、最前線での「仕掛け」があまりうまく機能しません(決定的なスペースをうまく使えていない)。ストイチコフのイライラもつのるばかり?!

 対するジュビロは、例によって「横綱相撲」という雰囲気。相手の中盤プレッシャーを落ち着いて受け止め(普通だったら、中盤でアクティブに守備をされたらペースを完全に握られてしまうモノなのですがネ・・)、素早く、広い「ボールの動き」をベースに、危険な「攻撃の仕掛け」を展開していきます。その中心になるのはもちろん名波、藤田、そして最前線の中山と奥。また、ボランチの福西、そして右サイドで攻守にクリエイティブな才能を見せる久遠も特筆モノの有効プレーです。

 ゲームは、15分過ぎから落ち着きを見せはじめます。「ゲームの落ち着き」というのは、両チーム選手達の心理・精神的な状態(自信ベースの積極性など)、技術・戦術レベルが、グラウンド上のプレーに直接的に反映されるということで、両チームの「本来のチカラの差」が明らかになりはじめるということです。

 具体的には、ジュビロの、素早く、広いボールの動きによって、自分たちの中盤守備プレッシャーを外され続けたレイソルの「立ち上がりのアクティブプレー」にカゲリが見え始めてきた(自信を喪失気味?!)ということです。

 レイソルですが、攻撃の中心、ストイチコフの「次のプレーイメージ」が、周りの選手達にうまく伝わっていないように感じます。彼の「イメージ」は世界の超一流。ただ周りの選手達の「決定的なパスを受ける動き(最後の瞬間、どの決定的スペースで勝負パスを受けるのかなどの・・)」、また「攻撃では、相手守備の薄い部分突く・・」ということに関するイメージは、確実に、ストイチコフのそれに追い付いていないのです。

 トレーニングでは、(ブルガリア代表のゲームなどで・・)ストイチコフが抜けることが多いでしょうから仕方ないかもしれませんが、とにかく、彼がボールを持った時の「大きい展開のイメージ」、ゴール前の決定的スペース(つまり相手守備の薄いウラ)を使う、コンビネーション・イメージ(どのタイミングで、どのようなパスで・・など)を、周りの味方が、うまく把握し切れていないと感じるのです。

 レイソルの課題は、ストイチコフの「次のプレーイメージ」を、いかに効果的に活用するのか(そのイメージと連動するのか)・・ということ。その「イメージ・シンクロ・レベル」を上げるのは、もうトレーニングしかありません。そこが、コーチのウデの見せ所というわけなんですがネ・・。

 後半は、レイソルが自信を取り戻し、ペースを上げます。それには、ジュビロのボールの動きが「小さくまとまり過ぎ」ということも原因として挙げられるように感じます。ジュビロのボールの動きは、確かに素早いけれど、相手の守備の薄い部分を突くという意味では、小さすぎるのです(また個人勝負プレーも少ない・・)。その「ボールの動き」に慣れてきたレイソルの守備が、洪を中心に「要所を抑える」効果的なものに進化し、そして、その守備をベースにした「自信」が、攻撃の積極性につながっていったと感じます。

 とはいっても、まだまだ「最後の勝負場面」では中途半端。「これじゃ、偶発的なゴールしか生まれないだろうな・・」。そう感じさせられたものです。対するジュビロの攻撃には、必然的なゴールチャンスを作り出せるような「アイデア」、仲間同士の、ハイレベルな「イメージ・シンクロ状態」などを感じるのです。

 福西から中山、そしてヘディングで落としたボールを鈴木が決めた決勝ゴールに、そんな「イメージ・シンクロ」を感じました(福西のセンタリング・ターゲット、中山のヘディングでの落とし、そして落ちると予測されるスポットへの鈴木が動いていたこと!!)。

 最後に、この試合で気付いたもっとも大きなポイントにいきましょう。それは、両チームともに、(成功した)大きな展開が少なかったということです。

 攻撃は、組織プレーと個人勝負プレーのバランスが大事・・、そのことはもう何度も書きましたが、同様に、(組織プレーの一環として・・)小さな展開と大きな展開のバランスも大事です。要は、攻撃には「変化」が重要だということですが、それがなければ、簡単に、守備側に「次の展開」を読まれてしまうに違いありません。

 レイソルには「できる選手(ストイチコフ)」はいますが、それを活用しなければならない周りの選手達のイメージが連動してこない・・、逆にジュビロでは、アントラーズのジョルジーニョ同様、(様々なパスを使い分けていた)ドゥンガの穴が目立ってしまっている?!

 これはもう、トレーニングで「効果的な攻めのイメージ」を作り上げるしかありません。レイソルには、大きな展開の「コンダクター」がいますし、ジュビロにだって、正確なロングパスの出せる「才能」が揃っているのですからネ。



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