湯浅健二の「J」ワンポイント


1999年J-リーグ・ファーストステージの各ラウンドレビュー


第九節(1999年4月28日)

アントラーズvsエスパルス(0-1)

レビュー

 前節で、(数字的にですが・・)ジュビロに「惨敗」したエスパルス。この試合では、田坂を控えにまわし、久しぶりにファビーニョが先発です。対するアントラーズも調子が乗らず、マリノスと引き分け。そしてこの試合でも、名良橋、マジーニョが出場できずにベストメンバーが揃いません。さて・・

 この試合は、久しぶりに「リアルタイム」に書き進めていこうと思います。

 両チームの立ち上がりを見ていてまず感じたことは、例によって、エスパルスがしっかりとしたサッカーを展開しているということです。彼らの場合、試合の最後までこのベースを維持できず、一気に崩れてしまうことが多いわけですが、さてこの試合ではどうなるのか・・。それにしても、一人ひとりのリスクチャレンジの姿勢といい、アクティブ・クリエイティブなプレーといい、エスパルスのサッカーはいいですネ〜〜、好きですネ〜〜

 対するアントラーズ。最初の二十分間は、まったくといっていいほど見せ場を作り出すことができません。エスパルスの守備がいいこともあるのですが、それにしても、中盤での展開に、いつものダイナミズムをまったく感じません。

 そのアントラーズが最初に魅せた、危険な臭いを感じさせる攻撃は28分。エスパルスに、散々コーナーキックなどで攻めまくられた後のカウンター攻撃でした。

 右サイドでタテパスを受けた柳沢から、オーバーラップした中村へ。そして、そこからすぐに逆サイドの平瀬へサイドチェンジされただけではなく、その平瀬を追い越して決定的スペースへ走り込んだ阿部へ、ベストタイミングのパスが通ったと思ったら、すぐにセンタリング。最後は失敗してしまいましたが、素晴らしい「組織的」なコンビネーションではありました。

 こんな攻めが出てきたら、全体的にもノッてくるものなのですが・・。アントラーズは、そこから再びカッタルイ展開に戻ってしまいます。そこらへんが、今のアントラーズが抱える問題の本質だったりして・・。要は、「オレがヤッタる!!」という姿勢を前面に押し出す選手が少ない・・ということです。

 アントラーズにいま必要なのは、世界ユース選手権で大活躍した、本山、小笠原の積極的なリスクチャレンジの姿勢です。組織プレー「だけ」で相手守備を崩すこと自体が難しいのに、彼らの場合、それに輪をかけて、あまりにも「安全パス」が多すぎるのですからネ。もっともっと、リスクチャレンジのパスや単独ドリブル勝負にトライしなければ・・、そうジョルジーニョのように・・

 とはいっても、エスパルスも何度かのチャンスをものにできずに、前半は両チームともに無得点。勝負は後半に持ち越されました。

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 後半、エスパルスの安永が登場。私は彼の積極的なプレー姿勢が好きですから、期待が高まります。試合は、前半と同じようにエスパルスが支配する展開です。

 そして後半10分、エスパルスの先制ゴール。

 攻め込んで、一度クリアされますが、それをすぐに拾って左サイドに展開します。そしてオーバーラップした戸田がそのままセンタリング。最初ファビーニョが絡み、こぼれたボールを、安藤が豪快に蹴り込んだダイナミックゴールでした。さてここからがドラマだな・・、目を覚ましたアントラーズが、どのような攻勢を仕掛けてくるのか・・

 ただそんな予想が見事に裏切られてしまいます。その後、たしにかアントラーズが押し込んではきますが、それも、前へ重心がかかっているといったレベル。確かに、柳沢のポストに当たるシュートなど、惜しいチャンスはありましたが、それでも、全体的には消極性だけが目立ってしまっている。ベンチには、ジーコも座っていることだし、モティベーションレベルが特に低いことは考えられないのですが・・

 逆に、澤登のフリーシュートなど、カウンターから何度も決定的なチャンスを作り出してしまうエスパルス。この試合では、集中が切れる兆候はまだ見えません。後半30分が経過しました。

 この時点でも、エスパルスの中盤守備、最終守備ラインのコントロールなどに何らの崩壊サインも見えません。この試合では、田坂を外し、澤登が中盤に入ったのですが、それがコトの外うまく機能しているようです。

 最終守備ラインは、中央の斉藤、森岡、右に安藤、左に戸田。中盤は、サントスと伊東のコンビに、臨機応変に澤登とアレックスが絡みます。典型的な「4-4-2」。この八人での「ボックス守備ブロック」が非常にうまく機能しているのです。確かにアントラーズの攻めに(負けているにもかかわらず)まったく勢いが感じられませんが、それも、エスパルスの守備が非常に安定しているから・・といえないこともない?!

 それでも42分、一発ロングパスから、長谷川が抜け出し、決定的なシュートまでいってしまいます。エスパルスGK、真田が身体にぶつけてゴールラインに出しましたが、これは、素晴らしい「ディフェンスコース」を必死に戻り、長谷川に、最後の最後までプレッシャーをかけ続け、シュートコースまで消してしまった森岡の功績だともいえます。

 いよいよ試合が白熱してきた?! ただエスパルスの守備ブロックは、これまでのように簡単に崩れず、堅実そのもの。大迫力で「前へ!!」のアントラーズですが、相手のウラを突けるだけのアイデアが見えてこない・・。そして最後は、エスパルスの澤登のスーパーシュートで試合に幕が下ろされました。

 シーズン開幕前、色々なメディアに「エスパルスはボクの一押しチーム」と宣言していた関係で、ここのところの「パフォーマンスダウン」に落胆させられていたのですが、こんな「内容のある試合」を見せられ、また、彼らの巻き返しに大いなる期待が膨らんできた湯浅でした。



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