湯浅健二の「J」ワンポイント


1999年J-リーグ・セカンドステージの各ラウンドレビュー


第十二節(1999年11月17 日)

レッズvsジェフ(1−0)

レビュー

 両チームともに、「負けたくない・・」というマインドがアリアリのサッカー。攻守にわたって「仕掛け」があまりなく、全体的には単調なゲームだったとすることに異論を唱える人は少ないのでは・・

 私のメモも、空白が目立ってしまって・・。それでも、「降格リーグ」の行方を左右する重要なゲームですから、それなりの緊張感はありました。

 レッズは、新加入のピクン、路木をセンターに、山田と城定がサイドを固めるフォーバック。これも、優秀なセンターバック、ピクンが加入したからできるシステムだとすることができそうです。ピクンは「ホンモノの補強」です。

 そのフォーの前に、中村が「典型的な守備的ハーフ」としてポジショニングします。相手の二列目をしっかりとマークし、ほとんど上がっていかないのです。そして、(守備に入ったときには)同じ「高さ」の右に石井、左に小野が入ります。そしてベギリスタイン(チキ)が左タッチライン際のかなり前気味にポジショニング。わたしは福田と永井のツートップ・・と聞いていたのですが、実際には、福田をセンターに、永井が「中央の二列目」で、チキが「左の二列目」という配置。ただ、「タテのポジションチェンジ」がほとんどない・・。ということでレッズは、かなり守備的なゲーム戦術で試合に臨みました。

 対するジェフも、メンバー表では「フォーバック」でしたが、フタを開けてみたら、従来型の「ファイブバック」。出場停止の山口に代わり、ヴァンチャが「スイーパー(リベロではありません!)」に入ります。そして中盤守備は、右から、広山、酒井、ボス、そして中田と並び、その前の「二列目」に、守備にも強い中西が陣取ります。こちらも、バロンと武田のツートップも含め、ほとんどポジションが動くことのない(ホント、両チームともにまったくといっていいほどポジションチェンジがない!!)、かなり守備的な布陣です。

 「守備的なゲーム戦術」を選択したこと自体には異論はないのですが、それでも、ボールを奪い返した選手は、どんな「基本ポジション」であれ、必ず「最後まで」攻撃に参加する・・、ペアを組んで、必ず一人か二人は、後方から攻撃に参加する(押し上げて、決定的場面に参加する)・・などなどの「決定的な仕事に対する意図(仕掛けプラン)」がほとんど感じられなかったのは寂しい限りではありました。

 とはいっても、状況が状況ですからネ・・。とにかく両チームともに、「(攻守にわたる)仕掛け」に対しては、慎重、慎重、三と四がなくて、また「慎重」というサッカーを展開します。

 ということで、ゲームは、決定的場面がほとんど出てこない退屈な内容。前半のレッズでは、13分の、左サイドのチキから、マーク相手の「ウラ」に走り込んだ福田にピッタリカンカンに合ったスルーパス、そして29分の、素晴らしいタイミングで走り抜けたチキへの、永井からの浮き球のスルーパス(シュートを逡巡し、結局最後は福田がシュートミス)くらい。またジェフでは、22分に魅せたカウンターから、最後は、ペナルティーエリアぎりぎりからの酒井のフリーシュート(惜しくも左へ外れる)くらいでした。

 両チームともに「セットプレーを大事に・・」という意識は感じます。それでもチャンスになりかけたのは、レッズ(小野)の正確なフリーキック(かなりの精度で、ゴール前の選手に合う!)一本と、ジェフの、ニアポスト狙いCKからのこぼれ球を狙う・・というプラン(局面的な戦術)がうまくいった一本だけでした。

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 ただ後半は、急速にゲームが動きます。10分、ジェフの中西が、二枚目のイエローカードを受けて退場させられてしまったのです。すかさずレッズのデモス監督が、守備的な中村に代えて、(まだケガから完璧に回復していない?!)ペトロヴィッチを投入します。なかなかの判断じゃありませんか・・

 その後、逆に「吹っ切れた」ジェフが、酒井、広山のダイナミックな活躍などでレッズを押し込む場面もありましたが(ペトロが、まだ試合にうまく参加できていなかった時間帯・・)、その後の永井と岡野の交代(直後にレッズが、岡野が絡んでチャンスを作り出す)、またペトロがどんどんと最前線へ上がっていくようになるなど、徐々にレッズがペースを握るような「雰囲気」は出てきます。

 とはいっても「主導権を握る・・」というところまでいかない、いけないレッズ・・。

 そんな「停滞した雰囲気」を破ったのが、岡野のタテへの爆発的な突破トライ(爆発的なフリーランニング)、そして調子が乗ってきたペトロヴィッチの「タテへのダイナミズム」でした。彼らのプレーによって、ホンモノの「仕掛け」が出てきそうな雰囲気が醸し出される・・だから周りが、その「勢い」に乗せられる・・そしてチーム全体のプレーが活性化する・・それが「心理・精神的な善循環」というわけです。それは、ペトロと岡野という「ポジティブな刺激」がキッカケになったのです。

 そして決勝ゴールも「ペトロのダイナミズム」が生み出します。

 中盤で、相手の不用意な安全パスを「読みベース」でインターセプトし、そのままドリブルで突き進むペトロ。そして、ペトロのエネルギーに「引っ張られる」ように、左サイドのチキも、爆発的なフリーランニングをスタートします。彼をマークしていたジェフのディフェンダーが、フリーでドリブルしてくるペトロをチェックするために、(マークすべき)チキとの「間合い」をかなり開けてしまっていたのです(これが「マークのズレ」・・やはり、どこかで仕掛けなければ相手守備のバランスを崩すことはできない!!)。そして測ったようなスルーパスが、決定的なスペースへ走り込むチキへ・・。

 チキは、右サイドから迫るディフェンダーと、正面から迫るジェフGK、下川の間を通し、ゴール右ポスト前のスペースへ走り込む(フリーの)福田へラストパスを送ります。何と素晴らしい判断じゃありませんか(これで、前半の決定的チャンスに思い切りシュートを打たなかったことは帳消し?!)。

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 小野について一言。

 たしかに「才能あふれる」若者です。ボールタッチは本当に天才的。それでも私は「不満だらけ」。彼には、すくなくとも中田レベル(それ以上の?!)の選手になって欲しいのに・・。

 彼が狙っているのは「ラストパス」ばかり。もっと自分が中心になってボールをシンプルに動かすことで相手守備陣を翻弄してしまうくらいの「発想」がなければ・・。最初の頃は、ジェフ守備陣も、彼の「タテのラスト(ロング)パス」に、ちょっと翻弄される場面がありましたが、少し時間が経ったら、「小野は、ボールを持ったらラストパスしか狙わない・・」と、それに対応するポジションをとるようになっていました。

 もっと運動量を増やすことをベースに、パスを受け、それをシンプルに展開する・・、自分はダッシュして、次のスペースでリターンパスを受ける(相手守備陣のバランスは崩れているに違いない!)・・、そして「攻撃の起点(フリーのボールホルダー)」として、ドリブル突破トライ、ドリブルで突っかけてのラストパスやワンツーを狙う・・、はたまた相手守備をハメるように「タメ」を演出して、最後はキラーパスをズバ!!・・なんていう「変化に富んだチャンスメーク(自分自身もシュートへトライ!!)」をしなければ・・。

 彼には、そんなクリエイティブプレーができる、十分すぎるほどの才能が備わっているのに・・。もっとガンバレ・・小野・・

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 さてこれで、断然「降格リーグ」が燃え上がってきました。残り三試合。私は、レッズを中心に観戦することにします。さてどうなるか・・



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