湯浅健二の「J」ワンポイント


1999年J-リーグ・セカンドステージの各ラウンドレビュー


第三節(1999年8月18日)

レイソルvsグランパス(1−2)

レビュー

 この試合での私の注目点は、セカンドステージではまだ勝ち星のない、そしてストイコビッチのいないグランパスのサッカー。ピクシーがいないから、彼ら本来の、「戦術的なまとまり」をベースにしたチームキャパが探れるというわけです。

 さて試合ですが、両チームともに、レイソルが洪、グランパスがトーレスを「スイーパー」に置くという、確実なスリーバック布陣。

 両チームともに、かなりカッタルい立ち上がりです。ボールの動きが遅い、また「読みベース」の守備(=インターセプト)も出てこない。もっと攻撃と守備の「目的」を意識してプレーしなければ・・。何となく、両チームともに「目的喪失」状態で、どちらかというと無為にパスを回し、それに「対応」するように守備をしている・・といった立ち上がり。これじゃカネをとれるサッカーじゃネ〜〜ぞ!!

 たまに最前線でフリーでパスを受ける選手が出てきた時にだけ、急激にゲームが動くといった展開。それでも、これでは・・なんて思っていた矢先の前半13分、望月のCKから平野のヘディング一発で、グランパスが先制します。

 それ以降、ゲームは一方的なグランパスのベースになります。失点をくらったレイソルが巻き返すかと思ったのに・・。とにかくレイソルの中盤守備の鈍重なこと。グランパスの攻撃に、受け身アリアリといった姿勢で対応するだけなのです。試合のペースを握るためには、最前線でのチェイシングをベースに、中盤でのターゲットの絞り込み、そして一気のプレス・・という一連の「守備コンビネーション」が機能しなければなりません。ただレイソルの守備は、まだまだパッシブ。これでは、予測ベースの積極的な「ボール奪取」など出てきっこない?!

 対するグランパスは、ダイナミックな「守備コンビネーション」も含め、どんどんと攻守にわたってアクティブになっていきます。ゴールが最高の「良薬」ってことか〜〜?!

 ただ35分、考えもしなかった状況からレイソルが同点ゴールを決めます。中盤でボールを奪った呂比須が、相手のプレッシャーもあり、一度組み立て直そうとバックパスをしたところ、こともあろうに、ベンチーニョの足元に転がってしまったのです。こんなチャンスを、生まれつきのゴールゲッター、ベンチーニョが逃すはずがない・・。グランパスGK、楢崎の動きを冷静に判断し、キッチリと「ゴールへのパス」を送り込みます。

 さて今度はレイソルが「良薬」を飲んだわけですが、案の定、中盤での攻守にわたるアクティビティーが、それまでの何倍にも跳ね上がり、逆にグランパスを押し込みはじめます。

 それにしても、ゲーム内容に対して「ゴールだけが良薬」ってのはいただけない・・。彼らは、純粋プロ。いいかえれば、一つのプロチームは「個人事業主」の集まりというわけです。どんな暑くても、どんなにチームの雰囲気が盛り上がっていなくても、最低でも数人の「刺激プレーヤー」が出てこなければ・・・

 「刺激プレーヤー」。それは、眠っている仲間を「たたき起こす」だけの勢い(=パーソナリティー?!)を備えた(その時点での)グラウンド上のリーダーとも表現できる存在です。リーダーは、時々の調子によって変わっていくのが自然。調子が良いプレーヤーは、仲間も感じるモノです。そんな「その時点での刺激プレーヤー」が、「何やっているんダ!! しっかりとマークしろ!! もっと厳しく当たれ!! もっと速くボールを動かせ!!」なんて叫びながら、クリエイティブなムダ走りや、ボールがないところでのダイナミック守備を続ける・・それが、チーム全体に、これ以上ないという「刺激」を与えるものなのです。

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 後半の展開は前半の立ち上がりとほぼ同じ。何としても勝ちたいグランパスのアクティブプレーが、レイソルを押し込みます。レイソルは、基本的に守ってカウンターという発想なんでしょうか。それにしては、ボールを奪い返す狙い所、そしてそれに合わせた「次の爆発」に対する周りの準備など、カウンター狙いの「チーム戦術」が見えてこないんですがネ・・

 レイソルのセンターフォワード、ベンチーニョのフラストレーションは高まるばかり。彼は、何度「ウラ狙いのフリーランニング」をスタートしたことでしょう。一度などは、「このタイミングでボールが欲しい!!」とスタートしたのに、パスの出し手がまったく彼のフリーランニングを意識していなかったことでオフサイドポジションにはまり込んでしまい、最後は、直立不動で「遅れ気味のタテパス」を見送りました。

 まるでそれは、「何やってんだヨ。もっとパスを受ける前から周りを見ておけよ!!」ってな具合の無言のプロテスト。彼にとっては、ストイチコフの抜けた穴はことのほか大きかったようです。

 それでも試合は、後半20分を過ぎたあたりから俄然白熱してきます。やっとサッカーらしくなってきた?!

 アクティブな拮抗とでも表現できるでしょうか、両チームともに、攻守にわたって積極的に仕掛け続けます。これなんだよナ〜〜

 レイソルがバーに当たるシュートを放つ・・。そのすぐ後、今度はグランパスがカウンターから、決定的なシュートチャンスを作り出す・・。コレ、コレなんだヨ!! (もちろん常にとは言わないけれど・・)なんで最初から、そんなアクティブプレーを「ちりばめる」ことができないんだヨ!!

 何度かの「行ったり来たり」。両チームともに、それはそれは、ダイナミックなサッカーを展開します。

 そして37分。呂比須から、バカウマのロビング・タテパスが、右サイドを駆け上がる山口の前のスペースに出ます。このパスもエキサイティングだったのですが、その後の山口の、二度の切り返しからのラスト・センタリングも見事でした。最後にゴールを決めたのは、最初に「チャンスのきっかけ」を作った呂比須。試合内容からすれば、順当に「勝ち取った」といえる、素晴らしい決勝ゴールではありました。

 この試合のグランパスは、攻守にわたって確実にレイソルよりも「0.5 クラス」は上でした。それもストイコビッチがいないのに・・。もしかしたら、ピクシーがいたら、逆に彼に頼る(彼にボールが集まる)傾向が強くなり、相手としては、彼を中心に守備の包囲網を築けば、ある程度グランパスの「攻撃のリズムができる芽」をつみ取ることができる・・ということなのかも。

 これで全勝のうち、ヴェルディーとレイソルが負けました(マリノスとサンガはまだ全勝・・加茂さん、プロそのものの契約内容といい、頑張っているじゃありませんか・・)。また「降格リーグ」という見所もあります。楽しみじゃありませんか・・



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