湯浅健二の「J」ワンポイント


1999年J-リーグ・セカンドステージの各ラウンドレビュー


第四節(1999年8月21日)

レッズvsエスパルス(0−3)

レビュー

 試合は、両チームともに、まずしっかりと守る・・というコンセプトで立ち上がります。

 そんな試合展開ですから、両チームともに、ほとんどゴール前での「見せ場」を作り出すところまでいきません。とはいっても、全体的には内容が上のエスパルスの方が押し気味。彼らの攻撃の仕掛けに、より強い「勢い」を感じます。「ココゾ」の勝負に対する積極性が、エスパルスの方がより強いと感じるのです。対するレッズは、「勝負の仕掛け」が消極的・・というか、アナタ任せという態度が見え隠れ・・なのです。

 レッズでは、ドイツ留学から帰国した永井に期待をしていたのですが、プレーが中途半端。シンプルにパスを回すまではいいんですが、その後が「テレテレ」と鈍く上がっていくだけ、というシーンを何度目撃したことか。これは小野にも言えることなのですが、若い「才能」に対しては、パスを出した後、すぐにダッシュしてリターンパスを受け、そのまま次に展開する・・そして最終的な勝負の場面では、自分が「攻撃の起点」になる・・または自らがラストパスを受けるために決定的なフリーランニングを仕掛ける・・というふうに、自分が中心になってボールを動かすんだ、という積極的な意志を要求し続けなければ・・。

 レッズ最終守備ラインは、中村をスイーパーに、池田とザッペッラがストッパーという布陣。オールドファッションの守備システムなんですが、三試合で七失点では、古いことになんてこだわっていられない?!とにかく、堅実、確実な守備がまず重要・・ってなことなんでしょうね。もちろんそれが間違っているなんていっているわけではありません。攻撃の勝負所では、両サイドの路木、山田、ダブルボランチの石井やペトロヴィッチが『早い段階で』積極的に攻撃参加するなど、しっかりと人数をかけて仕掛けていかなければ、チャンスの芽を作り出すことだってできない・・そのことが言いたかったのです。

 レッズの攻めには、確かに「核」がいないと感じます。「核」とは、そこで攻撃の起点ができたら、周りが「意識的、無意識的」に爆発的にアクションをスタートする・・そんな、「攻撃におけるイメージシンクロ」のベースになれるような選手のこと。この試合では、永井にその「イメージ・コアの役割」が期待されていたんでしょうが・・。

 彼よりも、ペトロヴィッチの方が、周りの選手たちの信頼度が高いのでは・・?! それでもペトロは、守りに大わらわ。そんな「チーム内の選手の役割のバランス」も、監督さんが提示する「チーム戦術」のコアの部分なんですがネ・・

 そして前半41分、エスパルスが、それまでの試合の内容からすれば「順当」といえる先制ゴールを決めます。ゴールゲッターは、澤登が放ったシュートのこぼれ球を決めたエスパルスのアレックス。

 レッズはここからが踏ん張りどころ。果たして彼らに、堅実でありながら、チャンスとなったら勇気のある(吹っ切れた)ダイナミックな仕掛けを魅せるなど、非常に充実したサッカーを展開する今のエスパルスに対し、逆転して勝利をおさめるだけのキャパが備わっているんだろうか・・

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 そんな興味をひかれる後半が始まりました。

 ただ展開は、前半とほとんど同じ。たしかに同点にしなければならないレッズが、少しは押し込むような「雰囲気」はありますが、それでも、それを見透かすように、エスパルスが、今度は、しっかりと守ってカウンターというチーム戦術を有効に使い分けます。

 18分には、伊東のロングシュートがこぼけたところを、ファビーニョにフリーシュートを打たれます。「どうして外せるの??」なんて大声で叫びたくなるようなファビーニョのシュートミスがなければ、その時点で「2-0」。試合が決まってしまうところでした。

 レッズの攻めですが、しっかりと守って・・という方向性は生きているようで、まだある程度守備は安定しています。でも前半同様、相手からボールを奪い返した後の攻撃への切り替えが・・

 とにかく、中盤の高い位置でボールを奪い返すなど、絶好の攻撃チャンスにも、それに参加してくる中盤や守備ラインの選手の少ないこと。見ていると、攻撃に参加しているのは、いつも福田、大柴、永井だけ・・ってな具合なんですヨ。これでは・・

 22分には、アレックスのドリブル突破から、最後は、中央のファビーニョにフリーシュートを打たれます。ラッキーにもゴールになりませんでしたが、これは、前線と守備ラインの、人数・ポジショニングバランスが崩れたレッズが、カウンターで穴を突かれたピンチでした。

 肝心なところでの「周りの爆発的な攻撃参加」があまりなく、逆に、エスパルスの「思うツボ」という状況で(しっかりと守備の組織ができた状況で)、攻めに人数をかけ過ぎてしまうだけではなく、人数はいるけれど、肝心の「針の糸を通す可能性に賭けた決定的フリーランニング」が出てこなかったり、「タメ(攻撃の起点)」ができないことで、決定的なラストパスが出る雰囲気も稀薄・・

 レッズは25分を過ぎたあたりで、福田に代えて岡野を投入します。ただ雰囲気はまったく変わらず。逆に32分、久保山が抜け出した瞬間に出た伊東のスーパースルーパスから、完全にフリーシュート。追加ゴールを決められてしまいます。これで万事休す・・

 これでレッズは、年間を通した「総合順位」でも、「降格リーグ」のビリ二位。内容的にも、このままでは「瀬戸際」の状況を打開するためのキッカケも見えてこないような気がしてなりません。

 いまのレッズの、もっとも深刻な問題点。それは、小野がいないことではありません。選手全員の、成果に対する強い「意志」「意欲」などをベースにした「闘う姿勢」にカゲリが見えることです。今のレッズの「マインドレベル」「モティベーション・レベル」では、小野が帰ってくれば調子を取り戻すとは、とても思えないのです。

 今の彼らのプレーから、プロとして、「個人事業主」として、攻守にわたる「自分主体のギリギリ積極プレー」など、最後まで全力で闘い抜くだけの「アクティブな姿勢」を感じないのは湯浅だけではないと思います。

 彼らには、冷や汗が出て鳥肌が立つような精神的・心理的限界域の、何らかの「レベルを超えた刺激」が必要なのかも・・。(私のコラムでよく登場する・・)瞬間的な怒りや憎しみなど、「人間の心理のダークサイド・パワー」まで総動員し、全員が限界まで闘い抜かなければ、本当に取り返しのつかないことになってしまう・・そう思うのです。

 私の思い入れもかなりのレベルにありますから、今の「壊れかけている」レッズについては、今週の「2002」でも取りあげなければ・・

 とにかく「何でもいいから」、自分自身が納得するように、限界まで闘い続ける姿勢で頑張って欲しい・・。湯浅からのメッセージでした。



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