湯浅健二の「J」ワンポイント


1999年J-リーグ・セカンドステージの各ラウンドレビュー


第六節(1999年9月4日)

レッズvsジュビロ(1−2)

レビュー

 レッズは、典型的な「スイーパー(中村)が入るスリーバック(ストッパーは、池田と路木)」。その最終守備ラインの前に、石井とペトロヴィッチのダブルボランチ、左右サイドバックに城定と山田。チャンスメーカーには若い吉野。そしてツートップが大柴と福田というラインアップです(永井は、直前の練習でケガ・・という情報が入っています)。

 対するジュビロは、例によって、古賀、鈴木、田中、服部で構成する「コンベンショナル・フォーバック(ラインではなく、基本的には人を見る『マンオリエンテッド』)」。その前に福西と金沢のダブルボランチが入ります。その前に、藤田と奥の攻撃的ミッドフィールダーを配し、ツートップは中山と高原という布陣です。

 立ち上がりは両チームの守備がうまく機能する展開。それでも、「最終勝負場面」のキッカケがどんどんと萌芽してくる・・ということで、スタンドも興奮する、非常にエキサイティングな雰囲気です。これは面白い試合になる・・最初の頃は、そんなふうに感じていたんですがネ・・

 20分を過ぎたところで、レッズのチャンスメーカー、吉野が負傷退場。代わって土橋がボランチへ(彼の忠実な守備プレーはかなり効果的!!)、ペトロがチャンスメーカーの位置へ、それぞれ入ります。永井がどうしてこの試合に出場していないのか分かりませんが、図らずも私が望む「ペトロのチャンスメーカー(彼はクリエイティブな守備能力も備えています!!)」が誕生したわけです。さて・・

 試合の趨勢はジュビロ。それでも、レッズの「人をしっかりとマークする忠実・確実な守備戦術」が徹底しているために、彼らを完璧に崩すというところまではいきません。ただレッズも、ペトロがボールを持った瞬間における最前線選手たちの「ボールがないところでの動き」にアクティビティー(活動性)が『少しは』戻ってきますが、全体としては、まだまだカッタるい・・

 両チームともに、まずしっかりとした守備から・・という基本的な意識でプレーしているのでしょう。ということで、レッズ、ジュビロともに「タテのポジションチェンジ」がほとんど見られないといった試合模様。最前線、中盤、守備ライン・・そんな風に、各選手が「それぞれの持ち場」に「何らかの紐」でくくり付けられるように・・

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 これでは、相手守備が驚くような攻撃を展開できるはずがありません。両チームの選手たちは、「自分の基本的なポジションさえ守っていれば、後で責めらることはない?!」なんて思っているんでしょうか。サッカーは「リスクチャレンジ(仕掛け)」をベースにした「ダマシ合い」です。そんな「プロにあるまじき『アナタ任せ』という後ろ向きの心理」では、相手の守備を騙してチャンスを作り出すことなんて・・

 「仕掛け」・・。不確実性テンコ盛りのサッカーだから、常に自由に、そして自分主体で「エゴではない積極プレー」を展開しなければ、『魅力的で強いサッカー』なんて望むべくもないのです。

 レッズでは、ペトロヴィッチの「フリーランニング」だけが目立ちます。それでも、彼が走った後のスペースを使おうとか、彼にパスが通った後の逆への展開などという「意図」はほとんど出てきません。

 逆にジュビロは、最後の15分間は、「やっと」サッカーがアクティブになってきます。後方の選手たちが、前にスペースがあれば、どんどんと攻めに参加し、前線の選手たちを追い越してしまうほどの勢いを見せ始めたのです。もちろん途中で「変なカタチで」ボールを奪い返されたらピンチになってしまうのですが、周りの選手たちが、互いにカバーし合いますし、レッズの攻めも低調ですからネ(ジュビロの勢いは、レッズのプレーが消極的になってしまったから・・とも解釈できる?!)。

 ここほど、レッズの、「最終守備ライン・中盤・最前線」の三ブロックの「分離」が目立った時間帯はありませんでした。もしかすると、この「三ブロックの分離」が、今のレッズの問題点の本質を示していたりして・・

 「たまには、積極的なプレーを続ける前線と後方の選手たちが、タテに入れ替わってしまう、それでも全体的なバランスが崩れない・・」、それこそがハイレベルサッカーだ・・。私がよく使う表現です。「リスクを犯さず、目立った失敗をせずにいれば・・」。そんな「マインド」の選手たちは、とてもプロとはいえませんよネ。

 ちょっとキツイ言葉になってしまいましたが、とにかく今のレッズ選手たちには、何らかの刺激が必要・・ということで、敢えて・・

 「自信さえ取り戻せば・・」なんていう表現が、いろいろなところから聞こえてきますが、「自らを信じられること」は、「何かを吹っ切り」、積極的に「行動(仕掛け・・リスクチャレンジ)」することでしか得られないモノです。

 まず「行動」ありき・・、そのことをレッズの選手諸君に再認識してもらいたいと思います。

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 最後になりましたが、ジュビロの全ゴールをヘディングでたたき込んだ福西の、(勝負の瞬間に)爆発フリーランニングで、マークする相手の前の「ピンポイント」で勝負するマインド、そして、その「マインド」を100%理解したような素晴らしいフリーキックを蹴った藤田(先制ゴール)と服部(決勝ゴール)に大拍手をしてこのコラムを締めたいと思います。


ヴェルディーvsベルマーレ(2−1)

レビュー

 この試合はテレビ観戦だったもので、短く・・短く・・

 いや見所のある試合でした。その中でもっとも目立っていたのが、セカンドステージ11位、総合成績では最下位というベルマーレの試合内容の良さです。

 見ていてすぐに感じたのが、彼らは「何かから吹っ切れている」・・というものです。負けているチームの場合、選手たちの「自信」が揺らぎ、プレーが消極的になることで心理的な悪魔のサイクルから抜け出ることができなくなってしまうもの。そんなイメージでこの試合を見始めたのですが・・

 ただグラウンド上で展開されたのは、私の思い込みを見事に払拭してしまう「アクティブサッカー」。いや、「今の」ベルマーレだったら、本当にファンになってしまいそうです。古前田監督の手腕に拍手!!

 松川を中心に、若い選手で固めたベルマーレ攻撃陣の、しっかりとボールを動かす組織プレーをベースに、単独ドリブル勝負あり、リスキーなタメあり、はたまたボールがないところでの「ウラ狙いフリーランニング」テンコ盛り・・と、自信と確信あふれるアクティブプレー。それも相手はヴェルディーですからね。本当に感動モノでした。

 私はそこに、「サッカーは心理ゲーム」という原則を見ていました。

 サッカーは心理ゲーム。もちろん全てのスポーツに共通している概念ですが、不確実性要素テンコ盛りということで、瞬間、瞬間に「自分主体プレー」を展開しなければならない「最終的には自由にプレーせざるを得ない」サッカーですから、他のどのスポーツと比べても「心理的要素」の影響度が大きいというわけです。

 自信がなければ、勝負の瞬間に足が縮み上がってしまうなど、思い切ったリスキープレーは望むべくもありません。そして、消極的・精神不安定であるが故に失敗し、またまた「アクマ」に見据えられ、アクションがもっと縮こまってしまう・・、それがセオリーなんですが・・

 今のベルマーレの選手たちは、「オレたちには、もう何も失うモノはない・・」ってな心境で、とにかく最後の最後まで諦めずにアクティブプレーを「自分主体」で続けている・・っていう風に感じるんですヨ。

 このようなプレーを続けていれば、必ず、二部降格が回避できるという望みが大きくなってくるはずです。つまり、今度は「失うモノ」が出て来るというわけですが、その時にはじめて、彼らの「実力」が試されるということなんでしょう・・

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 対するヴェルディーですが、彼らの攻めはまだまだカッタるい。

 確かに中盤での展開力はありますが、勝負の場面での「ボールがないところでの動き」がほとんどない・・ということで、ベルマーレ守備陣のウラを突くようなシーンを作り出すことがままならない・・。ボールの動きは、基本的に「足元パス」だけ、たまに出てくる「ウラ狙いのフリーランニング」も、スタートのタイミングが遅いから、完璧にマークされて・・

 中盤の「リンリンコンビ」にしても、中盤でのダイナミズムを演出する・・というレベルとはほど遠く、世界との「差」も開くばかり・・

 テレビの解説で、セルジオ氏が言っていたとおり、「彼らは、守備でも、攻撃でも、フルに、アクティブに、ダイナミックに参加していない(当然、中盤リズムを『自分主体で』演出するなんて夢のまた夢)・・」

 ポジションバランス、プレーの流れのバランスを保ちながら、効率的に「ワンチャンスで爆発する」・・そのために考えながら狙いを定めなければ・・とにかくクレバーに、クレバーに、効率的・効果的にプレーしよう・・ってなことなんでしょうが、一度くらいは、「ひたむきに」、ゲームが終わったら足がつってしまうくらいダイナミックに(要は、もっと運動量を・・ってなことなんですが・・)プレーしてみたらいかが・・?!

 才能あふれるあなた方と北澤が(要は、北澤のダイナミズムを見習えってことなんですが・・)、もっともっと周りを鼓舞するようにダイナミックにプレーすれば、それに同調するように、一つの「チャンスの芽」で、周りの選手たちのダイナミックな動きをも『最高のタイミング』で引き出すような「世界レベルのイメージシンクロプレー」を何度も演出できるようになるに違いありませんヨ・・。そうすれば、あなた方にとっても、サッカーが何百倍も楽しいものになること請け合いなんですがネ・・




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