湯浅健二の「J」ワンポイント


1999年J-リーグ・セカンドステージの各ラウンドレビュー


第八節(1999年9月15日)

ヴェルディーvsレイソル(1−3)

レビュー

 前節のパープルサンガ戦では、負けたとはいえ「攻撃の仕掛けが出来ていた。セカンドステージ最高の試合内容だ・・」と胸を張っていた李総監督。さてこの試合では・・

 ベンチーニョがいないレイソル。攻撃の「核」を欠く?! イヤイヤ、彼らは、ベンチーニョの「クリエイティビティー」を補って余りあるダイナミズムを見せつけます。対するヴェルディー。レイソルの、中盤から最終ラインにかけての守備がいいこともあるのですが、彼らの攻めは、まだまだ「足元パス」が目立ってしまって・・

 ボールをしっかりと動かして「攻撃の起点」を作り出すことだけは出来るのだから、そこから「パスばかり」を狙おうとするのではなく、たまには「中盤でのドリブル突破」にトライするなど、ボールホルダー自身が主体になる崩しにトライしなければ、攻撃に変化がつかない・・。レイソルの守備陣は、完全にヴェルディーの「次のやり方」を感覚的にイメージできてしまっていますからネ。

 レイソルの攻撃でも、単純なミスが目立ちます。それでも、「オレが行く・・!!」という「仕掛けの姿勢」では、完全にヴェルディーを凌駕しています。

 そして17分、レイソルが先制ゴールを奪います。ボールを持つ渡辺が、彼に集中してきたヴェルディー守備陣三人を、簡単な切り返しで置き去りにし、逆サイドにフリーだった加藤へラストパスを通してしまいます。加藤は、ヴェルディーGK本並まで抜いてゴール!!

 ヴェルディーでは「リンリンコンビ」の一人、小林が、この試合ではかなり上がり気味。前節のサンガ戦でも同じだったんでしょうか(だから攻撃の仕掛けはうまくいったけれど、逆に守備のバランスが崩れてしまった?!)。その代わり林は、守備的ハーフの位置にベッタリ。その前に、北澤、小林、ジェフェルソンが並び、守備に入ったら、臨機応変に守備に参加するということがチーム内の決まり事なんでしょう。

 それにしても、小林のプレーからは、ホレボレさせられる「モノ」が見え隠れします。そしてまたまた、私の「惜しいな・・」という感覚もフツフツと・・

 彼はチームメートにも信頼されているようだし(よくボールが集まります・・)、何故もっと「自分主体」でプレーしないのか。「パスをよこせ!」とボールホルダーへ寄ってパスを受け、そこから最前線へ「ズバッ!」というクサビパスを入れながら超速ダッシュをスタートする。そしてリターンパスをフリーで受け、そこからドリブルで決定的な勝負を仕掛けていったり、決定的なワンツーにトライする。はたまた、中盤で「攻撃の起点」になった瞬間に、パスをする素振りから、爆発的な突破ドリブルを仕掛け、相手守備ブロックを混乱させる・・

 今の小林の攻撃プレーは、パスをしたら止まってしまうことを繰り返すなど、典型的な「つなぎ役」。何も魅力を感じませんし、たまに魅せる「消えるフリーランニング」は別にして、全般的には、相手にとって「怖い存在」とは言い難いレベルの選手になり下がってしまっています。あの「才能」なのに・・

 また守備にしても、たしかに「クレバーな?!」インターセプトは狙っているようですが、成功した場面は本当に稀。とにかく今の彼は、何かから吹っ切れたダイナミックなプレーをすることが最も重要なテーマだと思います。ヴェルディーに触れるたびに小林を採りあげる湯浅・・かなり彼の「高い才能」にこだわっているのです・・

 後半が始まってすぐは、ヴェルディーが少しはエネルギーの爆発を感じさせはしました。ただ直後の2分、レイソルに追加ゴールを決められてしまって(FKから最後は北嶋)・・

 これじゃ、ヴェルディー選手たちも「斜に構えちゃ」いられない・・?!

 たしかに「相手守備を崩しているのか・・」という視点では問題点アリアリでしたが、それでも少なくともそれまでとは大違いのダイナミズムで攻め込むヴェルディー。15分に、PKを決め、一点差に迫ります。

 その後も、エネルギッシュに攻め続けはしますが、チャンスを演出できそうな雰囲気を醸し出せません。相手のウラのスペースをどうしてもうまく突けないのです。これには、最前線の栗原と、中盤の小林という「クリエイティブ・プレーヤー」が交代してしまったこともあるように感じます。また、慣れない最前線でプレーした桜井も、トップに張りっぱなしで、どう動いていいのか分からない・・ってな状況です。そんな場合は、たまには北澤と「タテにポジションをチェンジする」などの工夫が必要。まず自分が戻り「北澤さん、上がってください・・」ってなくらいの「自分主体判断」がなければいけないんですよ。

 レイソルの攻撃も冴えません。ダイナミックに、エネルギッシュに「頑張って」はいるのですが、パスミスが多い、相手のウラを突くような「発想」が見られない、などなど・・。ただ守備だけは、洪の統率力をベースに、忠実・堅実なプレーを最後まで継続していました(その集中力には拍手!!)。

 そして終了間際に、交代出場した酒井のダメ押しゴールが決まり「ザッツ・イット」。

 最初から、「自分主体」でゲームのリズムを掌握することができないヴェルディー。そして、心理的な悪魔のサイクルに陥り、そこから抜け出せなくなる。ちょっと心配です。彼らは、リーグの優勝争いドラマには欠くことのできない「異色の個性派集団」ですからネ・・

ガンバvsジュビロ(3−1)

レビュー

 この試合は、テレビ観戦ということでショート、ショートにまとめます。

 私にとっては久しぶりのガンバの観戦・・そこでまず感じたことが、「何だ、ガンバの守備陣には、ブレークポイントっていう発想がまったくないんじゃないか??」・・というものです。たしかに攻撃では、タイルソン、ルイジーニョという新顔がうまくチームのスパイスになりつつあることで、ある程度の自信が感じられるアクティブプレーを展開してはいるんですがネ・・

 それでもよく見ていると、攻撃でも「スペース感覚」が欠如している・・。たしかにゲームは支配しているように見えますが、肝心の「最終攻撃段階」にホンモノの「仕掛けの動き」が出てこない・・

 攻撃の起点は作り出すのですが、その瞬間での「決定的なフリーランニング」がないのです。二列目で味方がフリーでボールをキープしているという「攻撃の起点」ができた状況・・それは「決定的なスルーパス」や「勝負ドリブル」など、仕掛ける大チャンスなのに最前線の決定的なパスを受けようとする動きがない、何らかの崩しの意図が見えない・・だからジュビロ守備陣も簡単に守り切れてしまう・・これでは・・

 「支配はしているが、最終段階での効果的ではない仕掛け」。ガンバのゲーム運びからは、攻めに関する「イメージ・シンクロ・レベル」が低いと感じます。それはチーム戦術的な課題。選手全員に、最終攻撃段階でどのように最終勝負を仕掛けていくのか・・、そのことに関する「チーム全体で統一されたイメージ」が感じられないということなのですから。

 さてガンバの守備について・・。オリンピック代表キャプテン、宮本を中心にした「臨機応変のラインスリー」というわけですが、中盤守備の「ココゾのタイトマーク」が不十分ということもあって、どうしても「ブレイク」のタイミングが合いません。

 ガンバの「浅い(つまり大きな決定的スペースが出来てしまう・・)」最終守備ラインは、基本的には、「マークを受け渡す、ポジションバランスオリエンテッド」なもの。動き回るジュビロの選手たちに対するマークを、基本的には受け渡しながら、「ココゾ!」の勝負所では、確実に、そして「タイト」にマークする・・。最初は、隣の味方とのポジションバランスを考えてラインを形成し、相手マークを受け渡しながらも、「最後の勝負の瞬間(守備の勝負所)」には、ポジションバランスを崩して(ブレイクして)「最後までマンマークを続ける」というわけですが、そのタイミングがズレ続けているのです。

 結果として、ジュビロ最前線の高原、中山だけではなく、二列目から飛び出してくる藤田、福西、西などが、左右サイドだけではなく、ガンバゴール前の決定的スペースでも面白いようにフリーでパスを受けてしまいます。

 この傾向は、後半も変わらず。ガンバにはホームの勢いはありますが、それでも「内容」ではジュビロ・・という試合展開が続きます。そのことは、シュート数がガンバの「13本」に対しジュビロ「17本」という数字にも表れています(特に後半は、6本対10本!)。

 もちろんジュビロにも、ファーストステージのような流麗なボールの動きが出てこない、決定的な崩しプレーでの思い切りが中途半端など、問題点はあります。内容的には、ガンバよりは良い・・といったところでしょうか。

 試合は、終了直前のカウンター「二発」で、ガンバが「神様のイタズラ勝利」を得ましたが、このサッカーでは、安定して良いサッカーを展開できる(そして勝てる)チームにはほど遠い・・?!早野監督のお仕事は、これからも大変だと感じます。

 ちょっと、コメントがネガティブに過ぎましたかネ。ガンバファンの皆さん、「現状認識」が進歩のベース・・ということで、ご容赦アレ・・



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