湯浅健二の「J」ワンポイント


1999年J-リーグ・セカンドステージの各ラウンドレビュー


第五節(1999年9月18日)

レッズvsグランパス(1−2)

レビュー

 「Vゴール!」。ストイコヴィッチのPKが決まった瞬間、喜ぶグランパスの選手たちとは対照的に、レッズの選手たちは・・。この四連続「Vゴール負け」で、「総合順位」で、ビリ三位のジェフに「勝ち点6」の差をつけられてしまった・・。

 ただ私は、この試合の「Vゴール負け」は、それまでとは「内容的」にかなり違っていた・・と思っています。レッズの選手たちは、ザッペッラの退場による、後半5分からの「10人の闘い」、またグランパスの同点ゴールをモノともせず、最後の最後までリスクにチャレンジし続ける積極的なダイナミックサッカーを展開したのです。

 ただ、次のガンバ戦は、左足太股の肉離れを起こしたペトロヴィッチ、この試合で退場になったザッペッラを欠くことになります。残り「6試合」。いよいよレッズは、「失うモノがないくらい」ギリギリのトコロまで追い込まれてきました。

 ただ私は、この試合に輪をかけた「吹っ切れた積極サッカー」を展開すれば、どの選手が出てこようと、確実に「光明」が見えてくると思っています。サッカーは「ホンモノの」心理ゲームであり、(クレバーなゲーム戦術をベースにした?!)選手たちの飽くなき「リスク・チャレンジ」の姿勢が、「チームの総合力」を何倍にも引き上げると確信しているのです。私は、そのことをサッカーネーションで何度も「体感」しています。

 まず確実・忠実なだけではなく、この試合のように、ある程度の大胆さも兼ね備えたダイナミック守備をベースに、チャンスとあらば、どんどんと後方から守備選手たちが攻撃に参加してくる。そして「ビビリの安全パス」なんていう選択肢など初めからなかったかのように、勇気のカタマリのような大胆な単独ドリブル勝負を仕掛けていったり、リスキーな「タメ」からの(爆発フリーランニングと連動した!!)決定的スルーパスを狙う・・などなど・・

 ここで踏ん張ることができれば、確実にレッズの選手たちは「一皮」むけるでしょう。そして、ものすごく高いレベルで、ホンモノのサッカーの「深遠な楽しみ」を経験できるようになるに違いありません。

 「最高なのは、笑いながらブッ倒れるようなサッカーなんだヨ・・」

 これは、私が尊敬する、故ゼップ・ヘルベルガー(ドイツ、サッカーコーチの父)の言葉ですが、それは、レベルが上がってくれば、体力的、心理・精神的に物凄く厳しい「状況」で、ギリギリのリスクチャレンジを続けるなど、限界まで闘い抜くことが「自然な環境」になる、そしてそれを心底楽しむことができるようになる・・っていう意味です。含蓄があるでしょ・・

 レッズの選手たちは、別の見方をすれば、プロとして「一皮むける機会」を得たともいえるのかも・・。ガンバレ、レッズの選手諸君・・

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 さて、ゲームレポートを、ショート、ショートにまとめます・・・

 ジョアン・カルロス監督になり、「ソリッド」なサッカーで、前節(対アントラーズ戦)に勝ち点「3」を獲得したグランパス。「ソリッド」の意味は、堅実・忠実、そして大胆な守備と、「ココゾ!」という判断に優れた「攻撃のリスク・チャレンジ」が非常にうまくバランスしているということです。

 対するホームのレッズ。私が見る限り、(この試合までは・・)まだまだ「後ろ髪を引かれるサッカー」を展開してします。選手、一人ひとりが攻守にわたって「リスク」にチャレンジしていかなければ、自信を回復することもかないません。さてこの試合では・・

 そのレッズ、この試合では福田の代わりに盛田が先発です。レッズの自信の象徴であり、デモス監督から全幅の信頼を得ていたはずの福田。それでも、これまで彼の調子は決して良くありませんでしたし、デモス監督も「何らかの刺激(変化)」が必要だと感じていたのでしょう。

 その盛田が、デモス監督の期待に大いに応えます。これまでは、最前線でボールを受けても、そこでのプレーに大いに難がありました。単独突破にトライするわけでもなく、迷った末に遅れたタイミングでパスを回すものですから、「周りのパスを受ける動き(つまり、プレーの流れ)」を止めてしまい、結局は「良くないカタチ」でボールを失ってしまうようなシーンが続出・・ってな具合だったのです。それがこの試合では、何かから「吹っ切れた」ように、シンプルに、そしてダイナミックに、強烈なヘディングも含めて「自信を感じさせる」プレーを展開したのです。

 そんな盛田のプレーも、レッズの「積極プレー」の象徴だったのかもしれません。まだまだ完全に「吹っ切れた・・」というわけにはいきませんが、それでもレッズのプレーに、攻守にわたってダイナミズムが出てきたと感じるのです。

 特に攻撃。後方から、ボランチのペトロヴィッチ(交代後は土橋)、石井だけではなく、両サイドの城定、山田もどんどんと攻撃の最終段階に絡んできます。それも、盛田、大柴というレッズ最前線を追い越して・・。そんな「タテのポジションチェンジ」に、レッズのプレーリズムの好転を感じていました。

 またセンターバック、路木の素晴らしいインターセプト狙いからの積極攻撃参加も特筆モノでした。

 グランパスでは、最前線の「核」、呂比須が、試合早々にケガで退場。代わって福田が入ります。呂比須は、足元でパスを受け、うまくキープすることで「タメ」を演出し、後方の選手たちの押し上げを演出できる、つまり「周りの味方をうまく使える」選手。代わった福田は、自ら決定的スペースへ走り抜けることで、自分自身で勝負していくタイプ。

 そんな攻撃スタイルの「微調整」が必要な状況に追い込まれたグランパスの攻撃が、最初の頃ちょっとスタックし、逆にレッズの積極姿勢が目立っていました。それも、中盤のジェネレーター、ペトロヴィッチがケガで交代してしまったにもかかわらず・・

 そのペトロに代わった土橋のゴールが決まり、「1−0」で折り返したレッズ。今度は、守備の要の一人、ザッペッラが二枚目のイエローで退場になってしまいます。そこでデモス監督がとった策は、チャンスメーカー、福永に代えて、守備の内館を入れるというもの。守り切ろうという意図なんでしょうが・・。そのとき私は、ジュビロ戦のことが思い出されて・・

 守りきるために必要なのは、レベルを超えた集中力。私は「考え続ける姿勢」とも表現しますが、パスを受けることができるポジションにいる(走り込む)相手選手を、一人も、本当に一人も絶対にフリーにしない。それも、何が起こるか分からないフリーキックやコーナーキックなどの「セットプレー」でも・・。これは、世界トップのチームでも非常に難しい・・

 そして、案の定というか、レッズ守備陣のほんのちょっとした「スキ」を突いて、グランパスが同点ゴールを奪ってしまいます。

 左サイドの小川が、フリーでボールを持ち上がり、チラッとレッズゴール前に視線をはしらせます。その瞬間、ほんの「0.0・・秒」のことですが、グランパスのトップ福田を追い越して、後方からレッズゴール前の「決定的スペース」へ走り込んだ岡山に対するマークが遅れます。フリーでヘディングシュートを決める岡山・・

 この、「ほんのちょっとしたマークの集中ギレ」。それが、レッズの失点につながってしまったのです。

 「あ〜〜、これじゃ、また・・」。正直、そんなことを思ったモノです。何せレッズは、攻撃陣を削って守備要員を増やした布陣で、それも一人足りない状況で闘わなければならないんですからネ。

 でもここから(もちろん、そこまでも良いサッカーを展開してはいましたが・・)、この文章の前半に書いたように、レッズのサッカーが、本当に「吹っ切れ」たのです。

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 レッズの次の試合(ガンバ戦)に大注目です・・



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