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プサン便り・・またチャンピオンシップについて・・(2001年11月30日、金曜日)

いま、プサンの抽選会に来ています。まあ抽選会については、ここまで来る必要なんてまったくなかったわけですし、逆に日本にいた方が様々な情報が入ってくるのでしょうが、何人かの「人」に会わなければならなかったことと(世界中から関係者が集まってきますから再会や出会いには絶好の機会!)、まだ行ったことがないプサンだから、ワールドカップ前に一度は足をのばしてみてもいいかな・・ということでやってきたというわけです。

 山に囲まれた港町。素晴らしい景色ですよ(まあ細かな表現についてはここでは控えますが・・)。会場のコンベンションセンター(BEXCOと呼ばれるんだそうです)の施設も抜群。抽選会という「ショー」にふさわしい・・!?

 明日の抽選会ですが、最後にシードされたアルゼンチン、ブラジル、イタリア、スペイン、そしてドイツについては異論・反論・オブジェクションの世界でしょう。まあ「評価基準」が直前に変えられたという経緯も含めて、やはり「密室」という印象は拭えない・・。

 これで、アルゼンチンと、イングランド、ポルトガルという「現時点での実力国」が同じグループに入ってしまう「理論的」な可能性が出てきたことになります。

 要は、ヨーロッパの「残り11カ国」から、まず8カ国を抽選で選び、残りの三カ国を、第三抽選グループに回すということです。もちろん残りの三カ国は、第一シードが「欧州」のグループには入りません。ということで「アルゼンチングループ」に強い欧州二カ国が集中してしまう可能性があるというわけです。ということで、ここでも「密室采配」が・・!?さて・・

 あっと・・。本日(金曜日)夕方に行われた記者会見で「重要」な二つの発表が(決定&討議事項の報告が)ありました。一つは、ワールドカップ優勝国が、次のワールドカップへ自動的に参加するというシステムを取りやめるということ。これは、フットボールネーションではよくテーマになっていたことなのですが、ワールドカップ本大会に臨むうえでの、準備としての「勝負の試合(地域予選のことですヨ!)」がなくなってしまうのは、逆にワールドチャンピオンにとってのディスアトバンテージ(不利な要素)になるという発想がそのベースにあります。まあロジカルな結論です。でも、それだったら今大会から実施すべきだった・・。何といっても今大会では、既に「二つの国」が自動的に本大会に出場することが決まっていたんですからネ。ちょうどタイミングが良かったのに。この決定は、ちょっと遅きに失した・・!?

 もう一つの「討議事項」が、コンフェデレーションズカップを取りやめて、その代わりに「クラブ・ワールドカップ」を開催するというもの。まあこれもロジカルな展開だとは思いますが、それでも、もし各大陸から一チームだけとなると、欧州クラブの実力が突出している現状では、激論が必至・・。これについては、来年3月までに結論を出したいということだったのですが、さて・・。

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 今回は、明後日にせまったチャンピオンシップについてサッカーマガジンに書いた「ジュビロとアントラーズの守備おける微妙な違い・・」という記事を、私のHPにも載せておこうと思ってアップすることにしまた。サッカーマガジンに載せるだけでは、読まれていない方も出てくるでしょうから・・。では・・

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 オ〜ッ! 思わず声が出た。磐田の服部が、鹿島の小笠原に上手いフェイントで抜かれ、かなりの距離を置き去りにされてしまう。ただそこから服部が魅せた粘りの守備プレーに、思わず声が出た。

 小笠原が抜け出したとき、スッと、ドリブルとパスを限定するように福西が寄せ、そのスキに、全力で追いつき、フェアなアタックを仕掛けた服部がボールを奪い返してしまったのである。また、動きが停滞した鹿島のボールホルダーへ、10メートルは全力ダッシュで戻ってきた藤田が、後方から回り込むようにボールを奪い返すなど、前線プレーヤーによる積極守備やインターセプトも続出する。磐田の、クリエイティブでダイナミックな中盤守備の真髄を見た思いがしたものだ。

 対する鹿島も負けてはいない。磐田が左サイドでボールを動かしている。その状況で、逆の右サイドでは、西が、決定的スペースを狙ってアクションを起こしていた。彼は確信している。絶対にボールが回されてくる・・。案の定、動かされたボールが服部へバックパスされ、そこから正確なサイドチェンジパスが西へ向けて送り込まれた。ただ彼がフリーでパスを受けることはなかった。全力で戻ってきた小笠原が、しっかりとマンマークに付いていたのだ。それは、鹿島の伝統とまでいえる、戦術プランをベースにした忠実ディフェンスを象徴するシーンだった。

 「J」セカンドステージ、第八節の磐田対鹿島のワンシーンである。そして2001年度のチャンピオンシップ。いまの「J」では実力が抜きん出ている両雄が、再び対決することになった。

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 両チームの強みは、なんといっても優れた中盤守備。失点の少なさが、それを象徴する。セカンドステージ第14節まで(優勝が決定するまで)の失点は、鹿島が「15」、磐田が「12」。両チームの守備力は互角といっていい。

 ただし、この両チームでは、ディフェンスの基本的なやり方に微妙な違いがある。相手からボールを奪い返すという守備の目的を達成するまでの「プロセス・イメージ」が、若干異なるのである。

 ボクは、磐田が「バランス・オリエンテッド」な戦術的発想でディフェンスするのに対し、鹿島は、「マン・オリエンテッド」の傾向が強い守備を展開していると表現する。

 互いのポジショニングバランスをとり、その時点でのマークを受けわたしながら、ボールを奪い返す勝負所を探るというスタートラインは同じ。ただ最終勝負へ向かうプロセスに微妙な差異がある。磐田の選手たちは、ボールホルダーへの忠実なチェックをイメージの基点とし、できる限りポジショニングバランスを保ちながら、ここだ!というう勝負所での効果的な「集中アタック」を意図する。対する鹿島は、そのバランスを崩して(ブレイクして)マンマークへ移行するタイミングが比較的早めだ。だから中盤にスペースができやすいが、忠実なマークを受けている相手が、容易にそこを活用できるはずがない。

 磐田の守備アイデアの方が、より進歩的・・!? まあ、そうとも言える。相手の次の仕掛けに対する「読み」をより強く意識するのだから。とはいっても、鹿島ディフェンスの「忠実な堅さ」がレベルを超えていることも、また確かなことだ。

 要は、微妙な違いはあるにせよ、両チームともに、どのようにボールを奪い返すのかという守備イメージが、ハイレベルに「シンクロ(同期)」しているということだ。同じアイデアをベースに、全員のアクションが「有機的に連鎖」する。強いはずだ。

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 より戦術プランが強調される鹿島。それは、職人肌の強い選手が集まっているからなのかもしれない。最前線は柳沢と鈴木のコンビ。その後方に、小笠原、ビスマルク、そして中田浩二と熊谷が「ボックス」を組む。中盤での「堅牢な守備ブロック」。だからこそ、交互に攻撃の最終シーンまで絡んでいく名良橋とアウグストは、後ろ髪を引かれることがない。攻守にわたり、それぞれが、カチッと、基本的なポジションとタスクをこなしていく。そんな、「才能ある職人」たちが演出する忠実な戦術サッカーが、鹿島が魅せる勝負強さの秘密なのだ。

 それに対し磐田は、まさに「流動的」なサッカー。極端にいえば、ポジションが決まっているのは最終ラインの三人と、トップの中山ゴンだけともいえる。そして中盤の六人(奥、金沢、藤田、西、服部、福西)がポジションチェンジをくり返す。名波がいたときは、そのポジションチェンジは、それこそ「縦横無尽」という表現がピタリと当てはまるほど美しく、ダイナミックなものだった。守備においても、攻撃においても。たしかに「中盤のイメージリーダー」を欠いた今の磐田は、この「流動性」に陰りが見え隠れするが、「タテのポジションチェンジ」は健在だ。中山のダイナミックなフリーランニングを「オトリ」に、チャンスを感じた中盤の誰もが攻撃の最終シーンまで顔を出してくる。それでも、守備に入ったときの中盤でのポジショニングバランスが崩れることはない。全員が、意識レベルで、常に「100%」ゲームに参加していると感じる。

 この両チームに共通しているのは、攻守にわたる積極的な「リスクチャレンジ」と、そこでの「リスクマネージメント」のバランスがうまくとれていることだろう。繰り返しになるが、そこでの「マネージメントの仕方」が微妙に違う。守備意識の高さは共通しているのだが、鹿島が、戦術的な決まり事を重視にするのに対し、磐田の場合は、選手一人ひとりの、臨機応変な「自分主体アイデア」がより前面に押し出されるということだ。

 ボクは、「自由(変化)のハーモニー」いう意味で、磐田の進歩性に一日の長があると思っている。ただ「勝負」という視点では、逆に鹿島の方に分があるとも思っている。チャンピオンシップでは、今シーズンの対戦成績(磐田の3勝1引き分け)は、まったく参考にならない。とにかくこの試合が、日本サッカー史に残るハイレベルマッチになることには、疑念をはさむ余地はない。

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 さて、いかがでしたか・・

 本文には、スペース的に入りませんでしたが、私が、ジュビロの方が進歩的だといった背景には、私がよく使う、「理想はポジションなしのサッカーだ・・」とか、「前と後ろが入れ替わっても全体バランスが崩れないサッカーが理想だ・・」などといった発想があります。選手たち全員がポジションチェンジをくり返す・・、それでも、守備に入ったときには、チーム全体の組織バランスが崩れない・・それです。だから私は、ジュビロが、確実に理想へ向かった歩を進めていると感じるのです。

 また、「リスクチャレンジ」と「リスクヘッジのマネージメント」という発想があり、そのバランスをとるのがコーチの仕事だというテーマについては、今後とも、様々なケースを例示することで追いかけていこうと思っていますので・・。

 さてチャンピオンシップはどうなるのか・・。私は、日曜日(12月2日)の夕方に成田に到着し、そのまま「新宿のロフトプラスワン」で開催されるトークショーに出席します。テーマは、インターネットの将来について。私以外にも、実効ある仕事をされている優秀な方々がパネラーで出席されるとのこと。楽しみで仕方ありません。

 またその後、チャンピオンシップ第一戦のビデオを観戦し、すぐに静岡へ向かいます。そして月曜日(12月3日)の早朝(7時から)の「SBSラジオ」の番組に出演します。一時間番組だそうですが、それが終わってから東京へとって返し、チャンピオンシップ第一戦についてレポートする予定・・フ〜〜! ということで・・

 




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