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「J1」セカンド第12節・・レッズの確信レベルは向上しつつある・・コンサドーレ札幌vs浦和レッズ(1-1)・・・・(2001年11月5日、月曜日)

ちょっと所用が重なってしまい、コンサドーレ対レッズ戦のレポートが(約束よりも)遅れてしまいました。ご容赦アレ・・

 レッズの「出来」ですが、良かったですよ。前半の途中からは、最後まで勢いを落とすことなく、ゲームの大勢を握っていましたしネ。それでも(同点後、たしかに決定的チャンスは作り出したモノの)攻めきれなかった・・。それには、何といっても「良くトレーニングされたコンサドーレ」という面を、まずピックアップしなければ・・。

 中盤のビジュが中心になり、野々村と森下、そして両サイドが、本当にうまく中盤守備ブロックを構成します。また最終守備ラインも、クリアな戦術イメージをもって守備プレーを展開していると感じます。

 要は、最終ラインと中盤ブロックによる「守備における有機的なイメージ連鎖」ということが言いたいんです。レッズのボールホルダーが「決定的なカタチでフリー」になるシーンは皆無・・、また少しでもボールの動きが停滞したら、すぐに周りが「詰めて」協力プレスをかける・・、そして「ボールを巡るチェック網」をベースに、「周り」が、常に次、その次の「ボール奪取チャンス」を忠実に狙いつづけるのです。

 また最終ラインは、レッズ選手たちの「前後のポジションチェンジ」にも、組織の乱れがほとんど出てこない・・、その時点でマークする相手だけではなく、トップ選手が、スッと戻ることで出来る「最終ライン周辺のスペース(=後方から上がってくるレッズ選手)」をも、イメージ的にケアーしている・・。そんなふうに、声を掛け合って(!?)前後左右のマークの受けわたしを、うまくこなしてしまうんです(もちろんマークが決まるまで!)。そんな彼らの「集中力(=考えつづけるチカラ)」は、最後まで切れる(衰える)ことはありませんでした。本当に(戦術的発想という意味で)良くトレーニングされている・・。

 前後左右の「ポジショニング・バランス」をベースに、ここぞ!のポイントでの「効果的なブレイク(ボール奪取へのチャレンジ)」を魅せながら、レッズの攻撃を抑え込んでしまうコンサドーレ。

 ということで、前半の半ばをすぎたあたりから積極的に押し上げつづけたレッズでしたが、コンサドーレの決定的スペースを「美しく」突いたシーンは、前半では、エメルソンの、右サイドからのドリブル突破シュート(ドリブル突破でもパスでも、とにかく決定的スペースである程度フリーでボールをもった状態を演出することを決定的スペースを突いたと定義!)、前半終了間際の、山田がフリーで抜けだし決定的センタリングを返したシーン(素晴らしい「山越え」のラストセンタリングが見事にエメルソンに合う! でもダイレクトボレーシュートが、コンサドーレGKの好セーブに防がれる!)、後半では、アリソンの、その時点でマークしていたビジュの「視線を盗んだ」タテへの決定的フリーランニングに、阿部が見事にタテパスを合わせたシーン(8分)、そして延長後半9分の、山田からのタテパスに反応した(はじめからタテパスをイメージいていた!)田中が、決定的スペースで「完璧フリー」でシュートしたシーン(これまたコンサドーレGKの果敢な飛び出しで弾かれてしまう!)くらいでしたかネ。とはいっても、これだけ決定的スペースを攻略できれば大したものだという捉え方もできますがネ・・さて・・。

 レッズがゲームの大勢を掌握するような展開になった(コンサドーレが、完全に「守備を強化してカウンターを!」というサッカーへ「戦い方イメージ」を統一していった!?)背景には、前半4分にウィルが挙げた、「クレバーなロビングシュート」からの先制ゴールを守ろうとするコンサドーレが「より」守備を強化するようになっていったということと、一点を追うレッズの「前への勢い」が増幅したことがあったわけですが、どちらかといえば私は、レッズの(選手一人ひとりの自分主体プレーが集積された)ダイナミズムの増幅を支持します(後術)。

 押されてはいるものの、時折、危険なカウンターを繰り出すコンサドーレ。それが成就しそうになります。

 後半11分。右サイドのエメルソンからバックパスを受けたレッズの鈴木が、左横にいた阿部かアリソンへパスを回そうとします。でも、「直前」のタイミングで、コンサドーレの森下が、その「横パス」をイメージして守備アクションを起こしていました。そんな状況で、鈴木のパスが出される「直前」、目標になっていたアリソンがスッと、前のスペースへ動いてしまったのです。これでは、寄ってきていた森下に、易々とボールを奪い返されるのも道理。もちろん森下は、そのままドリブルで進み、危険なカウンターの起点になります。

 どんどんとドリブルで上がっていく森下。最前線は、左に播戸、右にウィル。その瞬間、ウィルが、スッとタテへ抜け出します。ただ井原には、その「最終勝負のフリーラン」が見えていました。スパッと、バックする動きを「止め」ます。「よし! 最終勝負のラインコントロールが決まった!」・・と思った瞬間、私はフリーズしてしまいました。「井原の意図」を感じていなかった石井が、戻る動きを止めず、そのために、森下からタテパスが出された瞬間、ウィルがオフサイドではなくなってしまったのです。あわててウィルのチェックへいく井原。でも、この状況(あの間合い)では、ウィルの切り返しに振り回されてしまうのは道理。結局、切り返し、まったくフリーになったウィルに決定的シュートを打たれてしまったのです。幸運にもシュートは浮いてしまいましたが、それは、レッズ最終ラインの「イメージ・コンビネーション」が破綻した瞬間でもありました。

 「最終勝負のラインコントロール」。それは、相手がラストパスを出せる状況での「最終手段」。相手のボールホルダー(パサー)のキープ状況を「正確に判断」し、最終ラインが「バックする動きをストップ」することで、決定的スペースを狙う相手トップを、オフサイドの位置に陥れてしまうというわけです。相手のパサーが状況を見ていれば、タテパスを出せなくなりますし(味方トップがオフサイドの位置にいるから!)、そのまま「持ち替え」たら、味方の中盤ディフェンスの餌食になります。

 これは、最終ラインが「一体」となって、タイミングを合わせながら「スッと上げる」オフサイドトラップとは、基本的には性格が違う・・と、フットボールネーションでは考えられています。オフサイドトラップは、(オフサイドルールの変更に伴って!)危険すぎるということで、あまり見かけなくなりましたが、相手の「最終勝負の起点(ラストパスの出所)」のプレー状態を冷静に(確実に)判断し、決定的スペースへフリーランニングを狙う相手トップをマークする動きを、ピタリと止めるという「最終勝負のラインコントロール」は、どのチームでもチャレンジしているプレーなのです・・(もちろん日本代表も含めて!)。これについては、トピックスコラム、「フラット守備システムを語り合いましょう」を参照してください。

 この「難しい」最終勝負のラインコントロールを、井原をリーダーに、何度か成功させていたレッズだったのですが・・。もちろん、この「守備でのリスクチャレンジ」が失敗したら目も当てられないピンチに陥ってしまうことは言うまでもありません。素晴らしいプレーをつづける石井だったのですが、この瞬間だけは・・。もう一度、最終ラインのリーダーを中心に「意思統一(イメージの調整)」が必要なのかも・・。

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 さてレッズ。

 この試合でも、前節、エスパルス戦での「心理ダイナミズム」を持続していました(もしかしたら、少しは発展したかも・・)。先発メンバーも同じ。そして、(たしかにウィルに、技アリのシュートを決められはしましたが・・)ホーム、コンサドーレの「立ち上がりの勢い」をしっかりと受け止め、ゲームが落ち着いてきた時間帯からは、逆に押し返すだけの力強さも魅せたのです。もちろんそれには、一点ビハインドという状況もあったわけですが、私は、守備ブロックをしっかりと機能させた上で、徐々に「前への勢い」を加速させていくという「試合の流れに対する確信レベル」が向上した結果だったと思っています。

 この試合では、コンサドーレが「下がり気味」になってしまったこともあって、両サイドの押し上げも、どんどんと加速していきます。特に山田の攻撃参加は、目立ちに目立っていました(前述した、前半の決定的チャンス、延長後半での田中への素晴らしいタテパスなど、決定的な仕事も・・)。

 それには、コンサドーレ左サイド、アダウトがケガで交代したこともあったのでしょう。とにかく「サイドの攻防」は、どちらのエネルギーが相手を呑み込むか・・で決まるということです。だから、この攻防を中心に観戦するのも一興・・!?

 鈴木啓太のパフォーマンス(自信と確信レベルの向上)は、どんどんと発展しています。この試合では、中盤での忠実マーク&バランスマネージメントだけではなく、「自信を込めた」タテパスを通したり(前述した、森下にカットされてカウンターを食らったパスはいただけませんがネ・・)、攻撃の最終局面に顔を出すなど、攻撃でも存在感をアピールします。

 これもこれも、阿部というパートナーがいるから。守備、中盤でのキープ、展開パス、仕掛けプレーなど、彼のパフォーマンスは安定しています。阿部の左サイドですが、相手が下がってしまったこともあったのでしょう、この試合では、守備的ハーフと変わらない実効性を魅せていました。

 さてアリソン・・。彼が良いカタチでボールをもったとき、エメルソンは忠実に反応します。彼のパス能力を信頼しているということです(実際に高い能力を備えている)。エスパルス戦でもそうでしたが、この試合でも、決定的パスチャレンジには、ハイレベルな可能性が込められていました。とはいっても、まだまだ運動量が足りない。しっかりと動けば、相手マークをかわし、もっと高い頻度で「良いカタチ」の起点になれるのに・・なんてことも思ってもいました。

 また守備でも、「勝負所」に対する実効あるイメージを持っている(ボールを巡る最後の勝負に、効果的に絡んでいける!)とは感じます。守備的ハーフのポジションでも、ある程度のパフォーマンスを発揮していましたからネ。でも足が遅く、コンディションが万全ではないから、ボールがないところでの「読みディフェンス」でも、ハイレベルな意図を感じるものの、振り切られたらそれっきり(ネバリのない一発勝負も多すぎる)・・というシーンを何度も目撃しました。まあこの試合では、コンサドーレが「下がり気味」にプレーしていましたから・・。ということで、高い期待値が当然の「外国人」として、もっと、もっと「出来る」と要求したい湯浅なのです。

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 「鉄を熱いうちに打てなかった」ことで、またビデオ観戦だったもので、レポートはこれくらいにしようと思っている、ちょっと疲れ気味の湯浅でした。

 




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