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さてトヨタカップ。まあ、この試合についてはショートコメントにまとめましょうかネ。
互いに「一発勝負のゲーム戦術」で臨んでいた・・、だからゲームのダイナミズムは、まさに低調・・、でも静けさの中に潜む極限テンションの「蜂の一刺し攻撃」では互いの特徴は出た(それだけを見ているだけでも面白かった)・・、ボカは、リケルメの才能を活かす「タメを基盤とする勝負の仕掛け」と、相手の「心理的な空白」をうまく突いていこうとする・・、対するバイエルンは、両サイドにボールを散らせて、そこからのピンポイントセンタリングを狙ったり、セットプレーからの一発勝負を狙う・・ってなところですかネ。
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ボカは、とにかくまずリケルメにボールを預けようとします。ボールを持った全員が、まず彼を捜すのです。そしてボールを持ったリケルメは、「これぞ天才!」といったキープから(要は、クリエイティブな「タメ」から)ドリブル突破などを介して決定的スルーパスを狙います。バレシュケロット、デルガド、はたまたトラベルソなど、リケルメのプレーリズムを熟知している周りの「フリーランナー」も、彼のプレーを見ながら、スタートタイミングを狙うのです。
とにかくリケルメは上手い! でも「クラシック」な天才。現在のスピーディーなサッカーでは、彼が入ることで、チームワークに大きな問題が生じてしまうでしょう。何といっても彼は、マラドーナのように、ドリブル突破や素早いパス回しで相手守備ブロックをズタズタにしてしまうようなレベルまでは到達していませんからネ。それが、彼が「まだ」母国リーグでプレーしていることの背景にあるんでしょう。ヨーロッパのクラブにしても、彼の「使い方」を明確にイメージできないでいる・・ということです。でも、本当に魅惑的なプレーをする。何度、あの屈強なバイエルンディフェンダーが、それも何人ものディフェンダーが、彼一人の「天賦の才」に翻弄されてしまったことか・・。フ〜〜。
もう一つ、ボカの「攻撃のツボ」。それは、相手の意識の(心理的な)空白に対して、レベルを超えた集中度で狙いを定めているということです。
例えば、中盤での「ファール」。その瞬間、電光石火の素早さで、次へ、もっといえば「最終勝負」へ持っていってしまうのです(素早い勝負のタテパスなど)。もちろん最前線の選手も、そのタイミングを、もの凄い集中力で意識していますから、動きだしも早く、そして変化に富んでいる・・。前半27分のボカの決定的チャンスは、その典型的な例でした(バイエルンGK、オリバー・カーンがギリギリのスライディングで防ぐ!)。いや、素晴らしい。
また、最後尾でゆっくりとボールを回している状況で、最前線のバレシュケロットやデルガドが、オフサイドラインに沿うように横方向へ動きながらタテの決定的スペースへの飛び出しを狙います。バイエルン選手たちの、「ホッ・・」と息をつく瞬間を狙って・・。そんな気の抜けた瞬間を、バレシュケロットが逃しませんでした。前半29分。クフォーのコントロールが停滞した瞬間を狙ってボールを奪い返し、そこからの爆発的なドリブルスタートから、右サイドでまったくフリーになったデルガドへラストパスを送り込んだのです。でもデルガドのダイレクトシュートがミスになってしまって・・。そんな、針の穴のようなチャンスに対する鋭い感覚。ボカの真骨頂を見た思いがしたものです。
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対するバイエルン。前の「四人(エウベル、ピサーロ、パウロ・セルジオ、ニコ・コバチ)」に、臨機応変に一人が絡んで攻撃を組み立てます。ただ組み立てとはいっても、彼ら本来のボールの動きではありません。その動きが緩慢そのものなんですよ。そんなユッタリパスだったら、ボカの守備ブロックに簡単に読まれてしまうのも道理。
たしかにゲームは、バイエルンが押し気味に進めています。それでも、ボカの守備ブロックが強力なこともあって(7人で強力なブロックを組のが彼らのゲーム戦術!)、まったくといっていいほどウラを突くことができないばかりではなく、センタリングなどのピンポイント攻撃でも、ボカのスーパーGK(コルドバ=コロンビア代表!)に、センタリングのタイプやコース(意図)を読まれ、ことごとくはね返されてしまうんです。
バイエルンのチャンスは、33分の、フリーキックからピサロがフリーシュートを放ったシーンと、42分の、左サイドのセルジオから、アタマを越えたラストパスが、エウベルへ通ったシーンくらいでしたかネ(まあ11分の、ロングパスがエウベルに通ったシーンと、18分の、スローインからピサロがシュートまでいったシーンもありましたが・・)。
私は、このまま後半勝負だな・・なんて思っていたわけです。ところが、その前半のロスタイム。やらかしましたよ、デルガドが。
リケルメがボールを持ち、ドリブルでハーグリーブスをかわし、「安易」に当たりに来たフィンクまでも置き去りにします。その瞬間、タテへスタートを切ったデルガドへ、ピタリのタイミングのスルーパスを決めたのです。もちろんバイエルンGK、オリバー・カーンが飛び出してきます。その瞬間、オリバーは感じました。「あっ、これは間に合わない・・。でもデルガドがスルーパスを受けても、左サイドへ行くしかないから、直接シュートはできないし、ストッパーのクフォーも追いついてきている・・、これは行かせた方がいい!!」と、スッと、飛び込む動作を止めたのです。
でも、デルガドは、オリバーの飛び込みを「想定」していました。そして、見事に、ブッ倒れる「演技」をしてしまったのです。その横では、ヒザを曲げて「直立」し、オレはまったく触ってないよ・・と、アピールするオリバーの姿が。これでは、レフェリーが「演技だ!」とイエローを出すのも当然。デルガドは、仕方ない・・と、諦めたような表情を浮かべています。でもそのイエローが、彼にとっての二枚目だった・・。
これで、後半のボカは、10人で闘わなければならなくなってしまって・・。
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ということで、後半は、バイエルンの「ゲームコントロール」が、より鮮明になります。でも、彼らのゲーム内容は好転の兆しを見せない・・、守備ブロックだけは無傷なボカが、前半同様に、余裕をもってバイエルンの攻めを受け止めるのです。とはいっても、ボカの攻めはままならない。当たり前です。前には、リケルメとバレシュケロットしかいないんですから・・。また後方からバックアップすべき、トラベルソやビジャレアルも、次の守備に対する意識が強すぎるようで、まったくといっていいほど、攻撃への効果的な絡みを魅せることができません。そして時間だけが経過していく・・。
なんてだらしないサッカーをやっているんだ!・・なんて、私は心のなかで憤っていました。もちろんバイエルンに対して。でも冷静に考えれば当然なのかも・・。何といったって、ブンデスリーガ、そしてチャンピオンズリーグと、3-4日ごとに「ギリギリのハードゲーム」をこなしている彼らが、先週土曜日のブンデスリーガをこなし(ニュールンベルクと痛恨の引き分け・・0対0)、その翌日には、12時間かけてシベリアを越えて日本にきたんですから(到着は月曜日!)。
状況は、先日、日本代表と対戦したイタリア代表とまったく同じ・・というわけです。対するボカは、一週間前に来日して調整していたのです。
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それでも、後半31分に、ニコ・コバチとハーグリーブスに代わって、スフォルツァとヤンカーが登場してからは、ちょっとゲームが動きそうな雰囲気だけは出てきます。38分には、フリーキックから、ベストタイミングでフリーランニングしたピサーロへパスが通ってシュート(でもスーパーGKのコルドバがしっかりと押さえる!)、42分にも、フリーキックからの一発ヘディングシュート(これもコルドバの正面へ!)。でも結局は何も起こらずに延長に入ってしまいます(後半のボカは、ほとんどチャンスメイク出来ず!)。
でも延長に入ると、バイエルンが、連続して決定的チャンスを作り出します。やっと彼らも、「このままじゃ帰れない・・」っていう心境になったようで、攻撃にも鋭さが戻りはじめ、サイドからのセンタリングにも、より勢いが感じられるようになってきたのです。
延長開始早々、左からのセンタリングをヤンカーがヘディングシュートを放つが、ポストの右を僅かに外れていく・・、7分、左からのセンタリングをピサーロがヘディングで折り返し、それをヤンカーがそのまま左足でダイレクトシュートするが、またまたコルドバの正面へ・・、11分、右のサニョールからのピンポイントセンタリングを、ヤンカーが強烈なヘディングシュートを放つが、僅かにバーの上・・、そして延長前半のロスタイム、またまたサニョールからのセンタリングが決定的なスペースへ送り込まれるが・・ってな具合。
それでも、そんな決定的チャンスが、徐々にバイエルンの選手たちの勝負マインドに火をつけたようで・・。「このままじゃ終われない・・オレたちは、こんな遠くまで一体なにをしにきたんだ・・ってなことになってしまう・・」。
そして、延長後半の3分、コーナーキックの競り合いからのこぼれ球を、(レギュラータイムの前半に決定的なミスを犯した)クフォーが蹴り込みます。決勝ゴ〜〜〜〜ル!!
その後、ボカが攻め上がりますが、そこは百戦錬磨のバイエルン。余裕をもって逃げ切ったというわけです。
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この試合は、決してアトラクティブな内容ではありませんでした。典型的な一発勝負のゲーム戦術。とはいっても、見所はあったということが言いたかった湯浅でした。
もう一つだけ・・、本当は「もうトヨタカップのミッションは終わったんじゃないのか・・」なんてことを考えていたことも付け加えておかなければ・・。ヨーロピアン・サウスアメリカンカップが(第三国の)東京で、それも一発勝負という形式で開催されるようになった背景を、皆さんご存知ですか・・? それを考えれば、本当はもう、本来のホーム&アウェーで勝者を決めるのが本筋だと思う湯浅だというわけです。
追加でもう一つ・・、バイエルンでプレーしたドイツ人が何人いたか、数えてみてください。今のヨーロッパプロサッカーが、もっと言えば、プロリーグのブランドネーションが抱える「危機因子」が見えてきますヨ。まあこれについては、おいおい「経済と文化の動的な均衡」というテーマで、過去のコラムをまとめながら、私のHPで発表することにします・・たぶん12月の中旬くらいから・・。
では本日は、このあたりで・・。「ショート」といいながら長くなるのが悪い癖の湯浅でした。