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今週の、中田英寿・・稲本潤一・・中村俊輔・・(2002年9月30日、月曜日)

さて、中田英寿、稲本潤一、そして中村俊輔のプレーについてショートコメントを。

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 今回は、素晴らしいプレーを展開し、チーム内での存在感を格段に高揚させている中田英寿からはじめましょう。

 前回のコラムで、『開幕ゲームのプレー内容は、まあまあといったところ・・でも昨シーズン2-3月以降に魅せつづけた、攻守にわたる復活のダイナミックプレーから比べれば、かなり見劣りする・・他の中盤プレーヤーとの呼吸もまだまだ・・』なんて書きました。

 たしかに、チームとしては、中盤での組織的なボールの動きに課題は残っています。それでも、最終ラインの4人と中盤の4人で構成する「守備ブロック」は頑強になっていますし、(この試合では、左右の二列目に入った)中田英寿も、積極的な、そして「クリエイティブ」な守備プレーを展開していました。また、そこから繰り出されるカウンターも危険そのもの。

 昨シーズンの覇者ユーヴェントスが本当にタジタジでしたよ。パルマを甘く見ていた!? まあそんなことはないでしょうが、終わってみれば、「パルマが本当に惜しい勝ち点2を失った・・」という評価が妥当ということになりました(終了直前のデル・ピエーロのゴールで、ユーヴェが辛くも2-2の引き分けに持ち込めた!)。それほどパルマは、強固な守備を基盤に、クレバーで、実効あるゲームを展開していたんですよ。

 プランデッリ監督のベーシックな意図は、「4X4の組織ディフェンスでしっかりと守り、カウンターで活路を見出していく・・そこでは、中田英寿をコアにした最終パス攻撃、ムトゥーのドリブル突破やアドリアーノのポストプレーやヘッドという個の特徴を最大限に活用する・・また、他のミッドフィールダーによる、確実なバックアップを基盤にした二列目からの飛び出しも、チャンスを見計らって繰り出していく(このチャンス状況に関する理解の仕方は人それぞれ!)・・」なんていう戦術プランが見えてきます。そして、「例によって」選手たちは、忠実に、そのプランに則ったプレーを展開するのです。

 まあ「それ」は、イタリアの社会・文化体質にも深くかかわってくることでしょうし、これまで彼らは「それ」で世界に冠たるポジションを築いてきました。でもここにきて、世界サッカーのなかでのイタリアが、「それ」で、逆に存在感を薄れさせていっていることも確かな「世界サッカーの動き」だと思われているのですよ。

 「それ」とは・・戦術に偏りすぎたサッカーのことです。そこには、我々コーチの永遠のテーマである、「規制(戦術プラン)と自由(選手たちのインプロビゼーション=才能ベースの即興性)のせめぎ合い」というテーマが隠されているというわけです。

 まあ、そんな「定型のネガティブ要素」が見え隠れするとはいえ、この試合でのパルマが、攻守にわたって「実効」あるソリッドな(堅実な)サッカーを展開したことは確かな事実です。それも、相手のホームで・・。素晴らしい。

 また中田英寿も、チーム戦術を守りながらも、クリエイティブで実効ある「自己主張プレー」を魅せつづけていましたよ。「クリエイティブなルール破り」、「チーム戦術を超えたプレー」へのチャレンジ・・それです。

 前半には、アドリアーノとの「あうんの呼吸」から爆発フリーランニングをスタートさせ、アドリアーノからのヘディング・ラストパスを、自身の決定的なシュートに結びつけたシーンがありましたし、後半では、自身が先制ゴールを決めただけではなく、この試合でのベストシーンともいえる、自分自身でボールを奪い返してからの怒濤のカウンターの演出家になるというシーンもありました(最後は、中田からの決定的パスを受けたムトゥーからアドリアーノへラストパスが通されて追加ゴール!)。

 特に、パルマ二点目のシーンで中田英寿が魅せた「守備」が素晴らしかった。瞬間的に「感じた」んでしょう。「よし! このタイミングだったらボールを奪える!!」。7-8メートルの「全力ダッシュ(このダッシュに秘められた明確なチャレンジ意図に鳥肌が立ちましたよ!)」から(味方ペナルティーエリア際で!)ボールを奪い返し、そのまま、背筋をピンッと伸ばした「ルックアップ・ドリブル」で攻め上がる。例によっての「スペースをつなぐドリブル」です。そしてそこからの、フリーになったムトゥーへの完璧なファウンデーションパス。フットボールネーションのエキスパートたちがもっとも高く評価するプレーの一つです。いや、素晴らしい。

 たしかにパルマは、(うまく手を使って挙げたデル・ピエーロのタイムアップ寸前ゴールで!)ユーヴェントスと引き分けてしまいました。それでも全体的な内容ではパルマが上回ってたとする判断に異論を唱える方は少ないに違いありません。忠実&堅牢なディフェンスブロックをベースに立派なサッカーを展開したパルマ。そんな彼らのソリッドな発展プロセスにおいて、中田英寿が重要なポジションを占めていることを実感できて安心した湯浅でした。まあ、彼につていは、まったく心配していませんでしたがネ・・。

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 さて次は稲本潤一。

 前回のコラムで、『発展プロセスは明確に感じるものの、もっと動きまわって、彼が中心になったボールの動きを演出できなければ・・まだまだ、味方が作り出した仕掛けの流れを観てしまうシーンが目立つ・・とにかく彼は、基本的には前気味のボランチというイメージでプレーしなければいけない・・要は、もっと、中盤でボールを奪い返す流れに乗らなければならないということ・・深追いは必要ないが、もっとディフェンスを活性化させ、高い位置でのボール奪取に成功すれば、中盤のどこからでも自分がコアになった攻撃ユニットを仕掛けられるのに・・場を勝ち取り、発展している今だからこそ、チャンスを逃さず、攻守にわたる勝負シーンへの吹っ切れた絡みをイメージし、忠実に実行していくが、ものすごく大事・・』なんていう内容を書きました。

 昨日おこなわれたエバートン戦ですが、そこでも、基本的には同じような印象が残りました。そして心配になりました。たしかに、攻守にわたってバランス良いポジションを取ろうとはしているし、そこからの中継プレーもいい・・また、ここぞのチャンスには、積極的にシュートやラストスルーパスにチャレンジしたりする(でも結局は、ゲーム立ち上がりの時間帯だけでしたがネ!)。それでも・・。

 とにかく彼は「守備へのアクティブな参加が内包する深い意味」を、もう一度、見つめ直さなければならないと思います。自分の「守備範囲」にいる相手にパスが回されることが明確に分かっていながら「見てしまう」というシーンを何度も目撃しましたし、彼がボールを奪い返すシーン自体がまったく出てこないのです。

 相手からボールを奪い返すことへの「強い意志」。それこそが、積極サッカーの絶対的な基盤です。それさえあれば、攻撃に入ったときの「ボールのないところでの動き」も活性化するものですし(ロジックな説明は、ちょっと難しいですがネ・・)、味方の信頼も勝ち取ることができます。また高い位置でボールを奪い返せれば、自らが「コア」になった仕掛けも繰り出すことができるでしょう。「守備からゲームに入っていく」という姿勢は、心理的にも、ものすごく大事なことなんですよ。

 でもこのゲームでは、攻守にわたって中途半端なプレーに終始した稲本潤一。ゲームが連続していることでの蓄積疲労!? そんなことが言い訳になるはずがありませんし、それでプレーが「ぬるま湯」になってしまうのだったら(それでは、彼に対するエキスパート評価が決定的に低下してしまう!)、それこそ自殺行為に匹敵する逃げの発想です。とにかくグラウンド上では、常に、攻守にわたる全力のクリエイティブ実効プレーに取り組まなければいけません。それで燃焼し切って走れなくなり、交代させられる方が、何百倍もポジティブじゃありませんか・・。

 そして後半も10分が経過したところで交代・・(それは、単なるパフォーマンス不足が原因の交代でしょう)。またまたフラストレーションがたまりました。発展するキッカケを掴んでいるいまだからこそ・・という悔しい思いの湯浅なのです。

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 さて最後は中村俊輔。

 スゲ〜〜! コモ対レッジーナ戦を観はじめてすぐに、そんな声が出てしまいました。スゴイ蹴り合い、スゴイぶつかり合い。肉弾戦そのものといった展開です。まあセリエとはいっても、下位のサッカーがこんなモノだということは、以前わたしも何度も観戦したことがありますから、体感ベースで知ってはいるつもりでした。それでも、実際に観戦したら・・ってな具合なのです。

 上位チームの場合は、守備にしても、まずポジショニングバランスから効率的・効果的なボール奪取をイメージしますが、この両チームの場合は、とにかく最初から「マン・オリエンテッド」な迫力アタックの連続だということです。

 先日のインタビューで中村俊輔が、「インテルは、レッジーナのことを甘くみていたと思う。だからプレッシャーも厳しくなかった。その意味では、初戦のペルージャ戦の方がハードだった・・」と述べていたとか。まあ、その判断は正しいですよね。

 試合開始当初、インテルのディフェンダーたちは、中村がボールを持ったとき、プロではタブーの「タイミング」で飛び込んでいきました。まさに「俊輔を甘く見ていた」といった雑なアタックタイミング。まさに中村のツボです。何度も、相手のアタックを軽く外していました。それでも、その後が「やはり」インテルのインテルたる所以。一度犯したミスは二度とは繰りかえさない・・。中村がボールを持っても、決して安易に飛び込まず、徐々に間合いを詰めることで中村を追い込んでいます。だから前半も半ばを過ぎたあたりから、彼がクリエイティブなパスを繰り出すシーンが激減し、「何も生み出すことがない」安全な横パスばかりが目立つようになっていったものです。

 さて「コモ」との最下位争い。なかなか、中村俊輔が良いカタチでボールを持てません。まあ、パスを受ける動きが緩慢だし、味方のパス技術も高くありませんからネ。だから、パスが出るにしても、相手ディフェンダーに完璧に「読まれた」状況でのみ。これでは、才能の宝庫である中村俊輔であっても如何ともし難い。

 それでも、前半も20分を過ぎるあたりから、彼の「行動半径」も広くなっていきます。もちろん守備参加も含めて。「前線で張っていても、まったく良いタイミングのパスが出てこない・・これは自分が下がってボールに触るしかない・・」という判断なのでしょう。それでも、まだまだパスを受ける動きがカッタるい。だから、彼が中心になった「攻撃の流れ」を演出することがままならない・・というか、そういう状況を演出できる芽さえ出てこない・・。まあ後半は、二度ほど、彼からのロングパスでチャンスを演出したり、自分自身のドリブル勝負が相手のファールを誘うといった実効プレーも出てきましたがね。フムフム・・。

 中村俊輔が抱えるもっとも重要な課題は、より多くボールに触ること。それも、相手マークから「ある程度フリーな状態」で・・。味方のレベルは高くはないから、うまいカタチでパスが出てこない。だからこそ、もっともっと動きまわらなければならないのです。それも、ジョギング程度の動きから全力ダッシュまで、大きな変化をつけてネ・・。

 ホンモノの良い選手と、単に上手いだけの選手との「差」は、攻守にわたる(ボールがないところでの)動きの「質」に如実に現れてくる・・。要は、全力ダッシュこそ、攻守にわたる積極的な「意志(意図)」の現れだということです。

 まあ、マラドーナのような世紀の天才の場合は、全てのチームメイトが、彼にボールを集めることをターゲットにプレーしますから状況は違うでしょうが・・。

 「環境こそが人を育てる」という概念の正しさを早く実感したい・・と思っている湯浅でした。




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