まあ、まず攻めで目立っていたポイントから入ることにしましょう。もちろん、スロバキア最終ラインのウラを取る攻撃のことですよ。
この試合では、日本代表が演出する、「決定的スペースの攻略」が目立ちに目立っていました。それは、まず何といっても、スロバキアの「フラット・フォー」に機能性が欠けていたから(ラインの維持と、ブレイクポイントのメリハリがない!)、そして日本代表の「二列目・三列目」の、ウラ取りフリーランニング意識が活発だったからに他なりません。
最初は互角の立ち上がり。そして前半9分。最初の「ウラ取り」が成功します。演出家は、中村俊輔とアレックス。あっと・・、そこで西沢と森島が魅せた「オトリの動き」も高く評価しなければ・・。さて、そのシーンです。
「俊輔、待て!」。そのとき思わず声が出ていました。グラウンド中央のセンターサークルで中村俊輔がボールを持ちます。そのとき、左サイドの(俊輔から)15メートルは後方から、アレックスが全力ダッシュで駆け上がっていたんですよ。
中村には、明確にアレックスが見えていたに違いありません(だから、湯浅の「待て!」なんてかけ声は、余計な御世話!)。中村は、「まだだぞ! まだだぞ!」と自分自身に言い聞かせるようにボールをキープします。この状況で、日本代表の最前線にいる西沢と森島は、スロバキアの最終ラインと、オフサイドをめぐる駆け引きを展開していました。そして結局、二人とも「オフサイドの位置」まで入り込んでいきます(スロバキア最終ラインが、戻る動きをストップした!)。
その、西沢と森島のアクションが良かった。それによって、スロバキアの守備ラインが、「これでは、あの10番(中村)はタテパスを出せないだろう・・」とタカをくくったに違いありませんからネ。ただもう一人、決定的スペースを狙って爆発ダッシュをつづけていた日本選手がいたのです。アレックス・・。
アレックスの全力ダッシュは、「確信」のカタマリでした。俊輔に対する絶対的な信頼を感じるじゃありませんか。
そして、最後の瞬間まで我慢して「タメ」た中村から、絶妙のタイミングとコースのスルーパスが放たれたんですよ。パスを受けたアレックスは、まったくフリーで相手GKと一対一。最後は、狙いすましたアレックスのシュートがGKにはじき出されてしまったが、本当に見事な「フラットライン破り」でした。
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そして、そのプレーを「キッカケ」にして(日本選手たちは、スロバキアのフラットラインのコントロールは不安定だぞ、と感じていた!?)、どんどんと、スロバキア最終ラインの裏に広がる「決定的スペース」を攻略しはじめたんです。
前半12分には、稲本から、左サイドを駆け上がるアレックスへ絶妙のタテパスが通され、直後の14分には、コンビネーションプレーから、抜け出した中村俊輔へロビングスルーパスが通されたりします。また22分には、中村俊輔から、これまた見事なスルーパスが、駆け上がった稲本へ通されちゃう・・。
それだけじゃなく、成功はしませんでしたが、前半19分には、左サイドの稲本が、逆サイドの柳沢への「ラスト・ロング・サイドチェンジパス」にトライしちゃったりして。もう快感そのものじゃありませんか。
日本代表は、そんなふうに、繰り返し繰り返し、「フラット」なスロバキア最終ラインの背後に広がる決定的スペースを攻略しつづけます(攻略にチャレンジしつづけます)。それは、とりもなおさず、パスを出す方と受ける方だけではなく、オトリになるトップ選手たち(西沢と森島)も含め、最終勝負に絡む全員が描く「勝負イメージ」が、ハイレベルにシンクロ(同期)していることの証明でした。
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前半33分の中村俊輔のプレーは見応えありましたよ。右サイドでボールを持った中村。まず当たりに来る相手を「スクリーニング」で押さえ込み、そこからスッとボールを押し出すことで、当たりにきた二人目のスロバキア選手も置き去りにしてしまう。最後は、ベストタイミングの「ウェーブ動作」で決定的スペースへ抜け出す西沢へ、これまたベストタイミングのスルーパスを決めてしまいます。最後の西沢のシュートはサイドネットへ飛んでしまいましたが、とにかくそこでの中村の「身体を張った」タメのキープと、最終勝負へのアプローチには、ワールドカップ出場にかける気概を感じたものです。
それでも私は、まだまだ不満。彼だけではなく、後半に登場してきた小笠原も、守備に、攻撃にと、全力ダッシュを何度も織り交ぜたアクティブプレーを披露してはいました。それでも「まだ」不満。彼らに求められるのは、攻撃では、ボールを持った状況での、もっといえば、相手にマークされた状況での、勝負の「起点プレー」等であり、ドリブル突破チャレンジなどの変化プレー、守備では、前線からの「明確な実効」を伴った「ファウンデーション守備」。それが、相手に近づかれたら、すぐに横パスに逃げてしまったり、ボールをもつ相手へのプレスが中途半端になってしまったりする・・。それでは、味方も「頼りにする」という感覚を抱けません。そこなんですよ、私がいつもいう「リスクチャレンジのマインド」って・・。
前半の中村俊輔、そして交代出場した小笠原は、攻守にわたり、限りなく「自由」にプレーしていいという「二列目」のポジションを与えられました。もちろん、ここでいう「自由」とは、攻守にわたり、常に、全力で「仕事を探す」という姿勢にイコールです。その意味で、まだまだ不満だったのです。「他とは一線を画したハイレベルパフォーマンス」という表現までは到達していない・・っちゅうことですかネ。もちろん前述したように、局面では、明確に才能を感じさせるプレーはありましたが・・。
とはいっても、少なくとも中村俊輔は、ワールドカップメンバーのサバイバル戦で、大きな一歩を記したとすることができそうです。ちょっと微妙な表現で申し訳ありません・・。とにかく、もっと、もっと「自己主張(≒リスクチャレンジ)」を・・といいたい湯浅なのです。
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さて柳沢。いや、面白いじゃありませんか。
たしかに、立ち上がりの5-10分間くらいは、その、攻守にわたる中途半端なプレーに、「一体なにをやっているんだ・・!!」なんて声が出そうになりましたが、その後は、「フ〜ン!」なんて、妙に納得しちゃったりして。
右サイドに入った柳沢は、(実戦だからこそ!?)前半だけで、大きく成長してしまったと感じます。やはり、レベルを超えた才能だということですネ。あれほど足が速く、テクニックもレベルを超えている・・、もちろん身体能力や戦術の理解レベルも十分。いや、面白いじゃありませんか。
まだ守備テクニック(ギリギリの競り合いでの「駆け引き」も含め・・)では課題は抱えています。それでも、「これは、もう少しやったら、確実にスーパーサイドプレーヤーにまで成長しちゃうに違いない・・」なんていう確信を持てましたよ。まあ、あれだけの才能ですからネ・・何度も繰り返しますが・・。
もちろんフォワードとして失格だというわけではありません。それでも、サイドに入ることで、より「高い頻度」で、攻守シーンに「義務的」に関わっていかなければならないというサイドのポジションに入ることは、今の彼にとって、ものすごく有効な「心理プロセス」になるかもしれません。
本物の勝負の場での「戦術的オプション」を増やすための、フィリップ・トルシエのチャレンジ・・フムフム・・。
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全体的な内容については、チカラの差がアリアリでしたから、細かくコメントする必要もないように感じます。まあ、ヘディングに勝てないというポイントくらでしたかネ、不安が見えたとしたら・・。
だから、相手のセットプレーでは「怖かった」ですよ。不安が広がってしまいました。でも、そんなヘディングに強い相手に対しても、例によって、久保竜彦のヘディング能力はレベルを超えていました。小笠原からのセンタリングを完璧に競り勝ったりしてネ。それも、まったく同じ条件で、彼よりも背の高い相手に対して・・。これは使えるし、日本代表に、確実に「攻め手」が一つ増えます。
久保竜彦は、またまた強烈に存在感をアピールしました。どんどんとボールのないところで「全力」で動きまわりながらパスを「要求」するという自己主張も顕著になってきましたしネ。「あの」久保がですよ。まあサンフレッチェでは、以前から主張していましたが、「人見知りの激しい」彼も、やっと日本代表に慣れてきた・・ちゅうことですかネ。ホント良かった。ワールドカップに間に合って・・。
後半29分には、ボールを持った小笠原に対し、最前線での「爆発ダッシュ」でラストパスを要求します(この時点で、マークする相手を完全に振りきっている!)。そして久保は、まさに「小笠原らしい」フィーリングあふれる素晴らしいタテパスを、ズバッと抜け出してトラップし、飛び出してくる相手GKの頭の上をフワッと越えるループシュートを放ちます。惜しくもバーに当たって得点にはなりませんでしたが、とにかく、久保が、持てる才能に見合った存在感を、日本全国にアピールした瞬間ではありました。
久保竜彦については、来週発売の「週間プレーボーイ」でも取り上げました。何といっても、本格的なセンターフォワードとして、彼ほどの能力を備えている選手は他に見あたりませんからネ。
とはいっても、この試合で先発した西沢の出来も良かったですよ。何度も、最前線でのオトリ役をこなすだけではなく、ポストプレーや、トラップの際の「すり抜けプレー」など、才能をバチバチに表現していました。
とにかく久保や西沢も含め、ギリギリの「競争」を通じて、日本代表のフォワードたちにより大きくなって欲しいと願って止まない湯浅なのです。
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さて、長くなりすぎるのも何ですから、最後は、稲本で締めましょうか。
全体的には「良くなっている」と思います。でも、まだまだ攻守にわたる、実効あるダイナミズムのレベルが戻っていないとも感じます。これは、アーセナルで「前へ送り出され過ぎている」から・・!? 何といってもアーセナルには、ビエラなど、優れた守備的ハーフが揃っていますから、そこで稲本は「後ろはオレたちに任せて、オマエは前へ行け!」と、前へ押しやられているように感じるのですよ。そんな「中途半端なポジショニングのクセ」が日本代表でも・・!?
もっと「原点」に戻り、中盤で、自分自身がボールを奪い返すシーンを連発するような忠実プレーからゲームに入っていくことを心がけなければいけません。それがあってはじめて、日本代表での「守備的ハーフ」として、攻守にわたって、以前のレベルの機能性を取り戻すための「自信」を再構築できるのです。
まあ、あれだけの能力ある選手ですから、あと1-2試合もこなせば・・なんて期待している湯浅です。
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次は「強い」ホンジュラス戦。ここで、どんな新しい発見ができるのか・・。今から楽しみで仕方ありません。
さて明日は、チャンピオンズリーグの「レーバークーゼン対マンチェスター・ユナイテッド」。例によって、参加意識バチバチで「応援」しようと思っています。ということで、レポートを忘れてしまうかも・・。そのときは、ご容赦アレ。あははっ・・