ということで、マドリッドからドイツの友人に電話を入れました。「オイ! UEFAカップの決勝だけれどサ、そっち(ドイツ、ハンブルクの近郊)に到着するのはたぶん夜中になってしまうから、ビデオにとっておいてくれよな・・」。
「彼」はちゃんとやってくれました。それでも次の木曜日(今日=5月9日)は所用に追われ、昼間にビデオを見ることができず、結局、コメントはその日の夜(日本時間で、金曜日の朝方)になってしまったという次第。ご容赦アレ。
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ところで、ビデオをとってくれた友人ですが(Aライセンスのコーチングスクールで同期!)、その彼の自宅にはサッカー好きの連中が集まっていました。みんな、日本人のコーチが来ると聞いて、興味津々で待っていたようです。次の日(木曜日)はドイツの休日ですから、まあ仕事には差し支えないということだったのでしょう。みんな、地元クラブの「オールドタイマー・チーム」でプレーしている良き仲間たち。私の友人は、元プロコーチ(プロの二部クラブの監督をやったこともあります)なのですが、今は家業を継ぎ、地元のアマチュアクラブのコーチをしています。
ヤツらの平均年齢は「40歳」をちょっと越えるくらいでしょうか、ビジネスマンや教師、はたまたパン屋さんまで、職業は雑多の極みです。サッカーが「人類史上最大の異文化接点パワー」を備えていることの証明じゃありませんか。雰囲気は、ものすごくフランク。まあ、グラウンド上では、職業などに関係なく、みんな「素っ裸(本音だけ!)」でプレーしますからネ。いや、気のいいヤツらです。「オ〜〜! やっと来たゾ!」、なんて歓迎してくれましたよ。
到着したのは、夜の10時を過ぎていたのですが(ということで、ちょうど試合が終了したタイミング)、テレビ画面では、ドルトムントの監督、マティアス・ザマーがインタビューを受けています。
そこで彼らは、まず状況を「判断」しようと私の顔を見ています。「言ってもいいよ。どうだったんだい、結果は・・?」と私。彼らは、試合の結果を言ってしまっていいモノかどうかを迷っていたのです。「いいんだよ・・。オレにとっちゃ、結果じゃなく内容が大事なんだから・・」。そんな私の言葉に、皆、堰を切ったように話しはじめました。
「本当に、アイツ(ユルゲン・コーラーのこと!)は馬鹿なファールをしたよな。PKを取られただけじゃなく、レッドカードで一発退場になってしまったんだから・・。とにかくドルトムントの守備ラインはミスが多すぎたナ。でも、まあ仕方ないよな。ヤツらは、一番欲しかったタイトルを獲得して、モティベーションは最低レベルまで落ち込んでいたんだから・・」。高校(ギムナジウム)の教師をしているメンバーの一人が、まず「堰を切り」ます。
ナルホド・・。たしかにドルトムントにとっては、UEFAカップは、あまり重要なタイトルじゃなかったよな・・(結局は、人々の記憶には残らない!数年前のシャルケ04の優勝のときもそうだった!)。それに対して、自国リーグのタイトル争いで敗北を喫したフェイエノールトにとっては、地元(ロッテルダムスタジアム)での決勝だし、20数年ぶりのヨーロッパタイトルだから・・。
まあ、負け惜しみも少しは入ってはいたんでしょうが、たしかに、ドルトムントの選手たちに、血の最後の一滴まで注ぎ込む闘いを期待するのは難しかった・・というのもよく分かる・・なんて思っていました。
「ところで、オノの出来はどうだったんだい?」。
そんな私の質問に、別のメンバーが、「彼にゃ、シャワーは必要ないネ・・」と、キツ〜〜い一言。小野伸二の仕事内容では、シャワーが必要なくらい汗なんてかいていないヨ・・という、サッカーピープル特有の厳しい「アイロニー(皮肉)」ってわけです。他の仲間たちも、「そうだよな、確かに彼はうまいし、守備もまあまあだったけれど、どうも、ココゾ!っていうときの個人勝負で、まったく自己主張が感じられなかったよな・・」なんて、異口同音に、同じような低い評価をするんですよ。フムフム・・。
その後は、サッカー談義に花が咲き、結局その友人宅を出たのは夜中の2時を回ってしまいました。私の留学当時の昔話から今回のW杯まで、話題百出のトークショーってな具合。とはいっても、私のアタマのなかでは、最後まで、彼らの小野伸二に対する厳しい評価がクルクルと回りつづけていました。確かに彼らはアマチュアです。それでも、サッカーを観る目には確かなモノがありますからネ。
ということで、「これは、しっかりとビデオで確認しておかなければ・・」なんて思った湯浅だったのです。そして・・
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試合を観ていて、何度も「ナルホド・・」なんてうなずいていました。前述の「サッカー・オールディーズ」の小野伸二に対する評価のことです。
小野伸二に関しては、これまで何度も書いてきました。大雑把な内容は、守備にしても攻撃にしても「単なる中継ぎプレー」に終始している・・。そしてこの試合でも・・。
彼の基本的な(イメージ的)なポジションは、守備的ハーフのボスフェルトと、チャンスメーカーのトマソンの「中間」だったようですが、とにかく彼は、そのポジションに「いること」ばかりを極端に意識していると感じます。「基本的なポジション・バランスをできる限り維持する・・」ってか〜〜!!
ドルトムントとフェイエノールトの「プレー内容」は、確実に、ドルトムントに軍配が上がります。守備での「動的なバランス」。また攻撃での、縦横無尽のポジションチェンジを繰り出す「変化の演出」。
前半30分に、ドルトムントのユルゲン・コーラーが、クレバーなトマソンへの愚鈍なファールを犯し退場になってしまうわけですが(コーラーのコントロールミスにブーイング! 逆に、トラップの方向を読んでボールを奪ったトマソンに拍手!)、その、前半30分までの試合内容を比較分析するのが、もっとも妥当でしょう。それまでは、状況的にも、また選手の人数的にも「まったくイーブン」でしたからネ。
その後(PKでの先制ゴールの後)は、フリーキックからのファン・ホーイドンクの追加ゴールも含めて、試合の「戦術的な環境」が大きく動いてしまいます。10人で攻め上がらなければならなくなったドルトムントに対し、二点リードということで、人数をかけて守り、カウンターを狙えばよいフェイエノールト・・。
前半の30分までの試合内容ですが、「ホーム」のフェイエノールトは、前述したように、基本的なポジションバランス「ばかり」に気を遣っていました(まあトマソンだけは自由に動きまわっていましたがネ)。たしかに守備は、ある程度は安定するものの、攻撃ではまったくといっていいほど変化を演出できない・・。だから、ドルトムント守備ブロックのウラを突くような攻撃を繰り出せない。
対するドルトムントは、エヴェルトンやリッケン、アモローゾやロシツキー、はたまたトップのコレル等が、本当に縦横無尽にポジションを変えつづけ、クリエイティブで危険な攻撃を仕掛けつづけます。もちろん大前提は、「それぞれの状況」に応じ、自軍ゴール前まで戻って守備につくことを強烈に意識していることです。
ズバッと戻ってきたコレルの足許への正確なタテパス。同時に、守備的ハーフのロイターや右サイドのエヴェルトンが、最前線へ飛び出していく。そこへ、ベストタイミングでのタテパスが通る・・。
また、攻め上がったドルトムントのストッパーの代わりに、リッケンが最後尾まで戻って「実効ある」ディフェンスを展開する。はたまた、最前線のコレルが、中盤でのプレス守備に参加する・・。
前半の30分までに、「流れのなか」で作り出した決定的チャンスは、ドルトムントの3本に対し、フェイエノールトは「ゼロ」。それでも、ドルトムントの守備ブロックに穴が空くようなシーンは皆無。多分フェイエノールトは、実力的には劣るということを大前提にゲーム戦術を組んだのでしょう。とはいってもネ・・
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ということで、小野伸二のプレーも、まさに「戦術に凝り固まり過ぎた」というレベルに留まりつづけていました。前にスペースがあるにもかかわらず、決して、トマソンや、ファン・ホーイドンクを追い越そうとはしない・・、いや、追い越しフリーランニングを仕掛けるという発想自体を感じない・・。またチャンスがあるのに、ドリブル突破にチャレンジしない・・。要は、「バックアップ・バランサー」に徹するっていう意識だったんですかネ。
守備にしても、やはり・・というか、彼自身がボールを奪い返すシーンは、本当に少ない。たしかにボールホルダーに対する「チェック」は忠実ですが、満を持した「読みベースアタック(=守備でのリスクチャレンジ)」なんてまったく出てきません。
湯浅は、小野伸二に対して期待し過ぎなんでしょうか・・。
たしかに、この試合は「勝つことだけが目的」の一発勝負ファイナルです。だから、守備では、とにかくフリーでスペースへ走り込まれないこと(ボールのないところでの仕掛け!)、またボール絡みでは相手に置き去りにされないこと、また攻撃では、変なカタチでボールを奪われないことと、常に「次の守備」を大前提にポジショニングすることを強烈に意識していたんでしょうが・・。まあ「結果」からすれば、それは正解ではあったわけです。それでも、上に書いたように、「プロセスの内容」では、フェイエノールトが、明らかに「ルーザーコース」に乗っていたことだけは事実だったのです。
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とにかく私は、フェイエノールトの「戦術(ロジックに過ぎる)サッカー」には納得しません。確実にそれは、「創造性の発展」にとってはマイナス方向です。もちろん、一発勝負の場合は、仕方ない・・という側面もありますが、彼らの場合は、リーグ戦でも大差ないサッカーをやっていますからネ。
サッカーでは、全員の「クリエイティブな守備意識の高揚(自ら、次の守備の仕事を探し続けるという姿勢の発展)」を大前提にチーム作りをしなければなりません。それは、計画された守備ブロックのバランスを「崩すさない」というやり方とは、根元的な発想が違います!
ロジックは重要。でもそれは、あくまでも「スタートライン」のハナシ。守備においても、攻撃においても、最後は、エイヤ!の「アンロジカル(一見ではそう見えてしまう)プレー」がモノをいいます。人はそれを「クリエイティビティー(創造性)」と呼んだりするわけですが、それに対するチャレンジがあるからこそ、全員の「バックアップ(次の守備)」に対する意識も高まりるものなのです。
サッカーに限らず、世の中の事象すべてにおいて、「限界」を前提にした「白か黒か」という発想は、多かれ少なかれマイナスの(後ろ向きの)結果につながってしまうもの。だからこそ「グレーの発想」を常に視野に入れておくことが大事なのです。
「・・は重要だし大原則だ。でもその裏側にひそむ本質的な意味は??」と、常に自問自答し分析することから全ての考察をはじめなければなりません。特に、不確実性要素テンコ盛りのサッカーではネ・・。