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ジーコは、パラグアイ戦から守備ブロックを大幅に入れ替えました。特に最終ラインは全く新しい「組み合わせ」。そしてそれをニュージーランド戦まで維持し、フランス戦でもウィニングチーム・ネバー・チェンジという不文律を堅持した。それに、恒例になっていた、スターティングメンバーの「事前告知」も止めた。チーム内の「競争環境」の整備をベースにした、ポジティブな緊張感の高揚・・。
ジーコも「学習」し発展している?! それとも、この「変化」は、就任当初から織り込み済みだったのか?! とにかく、この日本チームが、うまく「バランス」のとれたチームになっている(成長している)と感じます。もちろん、実効ある(本物の)守備意識をベースに、ある一定の規律のうえに成り立つ自由度を駆使しながら・・。
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前半の日本代表は、たしかに攻め切れませんでした。それでも、徐々に「自信レベル」を高揚させていくことで内容を充填し、攻守にわたるプレーを活性化させていきました。まさに、一つのゲームのなかで大きく成長した日本代表といったところ。
そんな自信レベル高揚のバックボーンは、言うまでもなく本物の守備意識でした。ボールがないところでの忠実&クリエイティブなディフェンス・・。
フランスがゲームを支配しはじめていた前半立ち上がりの時間帯。日本代表は、まさに一人の例外もなく、実効あるディフェンスを展開します。相手ボールホルダーに対するチェイス&チェックがダイナミックなだけではなく、ボールがないところでの次の勝負所への「イメージ構築」も素早く、そして正確。だから、ボール際の競り合いでも、よりよい体勢で臨むことができる。そんな実効あるディフェンス(より高質な守備イメージ包囲網!)によって、徐々にフランスの攻撃が、より「個」に偏っていったと感じました。互いのプレーを有機的に連鎖させることがままならなくなったことで(素早く、広くパスをつなぐことができなくなったことで)、ごり押しの単独勝負が目立つようになったのです。
まあそれには、フランスが、第一戦と大幅にメンバーを入れ替えたこともあったのでしょう。互いの仕掛けイメージがうまくシンクロしないことで、どうしてもグループコンビネーションが機能しない・・だから詰まったカタチでの「個の勝負」に陥るようになってしまう・・。もちろんそれこそが、日本代表の選手たちがイメージしていた展開。ヤツらのコンビネーションイメージを分断してやる! そして、ボール絡みの忠実守備プレーを基盤にフランス選手たちを局面で孤立させ(ボールの動きを停滞させ)、それを最初からイメージしていた周りの選手たちが「集中」して協力プレスを仕掛けてボールを奪い返してしまう。ボールがないところでの積極ディフェンスが功を奏したということです。
そんな守備での「善循環」が彼らの自信を深め、次の攻撃での勢いを加速させていったということです。もちろん、局面での競り合いミスやマークミスはあります(フランス勝ち越しゴールシーンでのアレックスのマークミスは悔やまれる・・一瞬のボールウォッチングで、ゴブーにウラスペースへ入り込まれてしまった!)。それでも全体としては、守備ブロックが素晴らしい機能性を魅せていたのはたしかな事実です。
稲本と遠藤で組む守備的ハーフコンビと四人の最終ライン、それに効果的にディフェンス参加してくる中田英寿と中村俊輔の攻撃的ハーフコンビ(この試合でも、中田英寿が前気味で、中村が後方から組み立てるというイメージ)が展開する、追い込みと次の勝負という「前後の」コンビネーションが、素晴らしいハーモニーを奏でるのです。
特に、中村俊輔の守備での(特にボールがないところでの守備での)実効レベルが格段に向上しはじめていると感じました。最終ラインまで戻ってのボール奪取(意図ある全力ダッシュ!)・・中盤でのピレスへのスライディングタックル・・中盤でアレックスを抜き去った相手を全力で追いかけてカバーしたディフェンス(最後は中村自身がボール奪取!)・・等々。そんな実効ある守備プレーがうまく回っていたからこそ、彼の攻撃でのパフォーマンスもアップした?!
あるデータによれば、中村の運動量が、レッジーナのそれよりも数割アップしているとのこと。守備での「実効レベル」の高揚と、全体的な走りの量の向上(よいカタチでのボールタッチ回数の向上!)。それが、彼の「天賦の才」をうまく引き出した背景にあるということです。中村俊輔がたたき込んだこの試合唯一のゴールは(バルテズでも防ぎきれい程のスーパーフリーキックゴール!)、まさに、向上をつづけた全体パフォーマンスに対する正当な報酬でした。
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前半は、まったくといっていいほど、決定的スペース(フランス守備ブロックのウラ)へのチャレンジが叶わなかった日本代表。それでも後半は、守備に対する確信レベルの高揚をベースに、徐々に、攻撃にも人数をかけられるようになっていく。遠藤や稲本が、はたまた両サイドバックのアレックスや山田が、後ろ髪を引かれることのない吹っ切れた勢いで、タイミングよく攻撃の最終シーンへ顔を出していくのです。だからこそ、自由な発想をベースにした「組織的な変化」をつけられるようになったし、チャンスも作り出せるようになった。もちろん「個の打開能力」には限界があるにしても、より活発に「タテ方向」にもボールが動くようになったことで(そこへのサポートの動きや、抜け出すフリーランニングも活性化したことで)、より効果的に、彼らがイメージする(?!)組織的な仕掛けも展開できるようになったということです。
それこそ、次の守備(味方のカバーリング)に対する確信が為せるワザ。もちろんそれには、リードするフランスが、ちょっと下がり気味になったこともあるのですが、私は、そんなゲーム全体の流れを「感じ取った」日本代表の攻勢に、一つのゲームのなかでの成長プロセスを見ていました。
攻撃における概観的な指針(=選手たちに共通する攻めのイメージ概観)は、安定した守備ブロック(高い位置でのボール奪取!)をベースにした、仕掛けのタテパスと積極的なタテへのサポートの動き(タイミングのよい攻撃人数の増大)ということでしょうか。
それにしても、山田・坪井・宮本・アレックス・遠藤・稲本(中田浩二)で構成する基本守備ブロックはうまく機能していました。それには、中田英寿(この試合でも、期待に違わない活躍・・明確なMVP!)と中村俊輔の実効ある守備参加という強力な後ろ盾もありました(またフランス攻撃が、組織で噛み合わず、個の勝負に偏っていたという側面もあった)。次の勝負所に対する「有機的に連鎖するイメージ」をベースにした優れた組織ディフェンス。それがあったからこそ、よいカタチで(相手を追い込んだ)次の「個の勝負」に持ち込めた・・だからこそ、局面の競り合いでも負けていなかった・・。
とにかく組織ディフェンスが安定したからこその、攻めにおける(ジーコがイメージする?!)自由度の広がりでした。
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チーム内の健全な競争環境(健全な緊張感のバランス)、選手タイプのバランス、守備と攻撃のバランス、規律と解放のバランス・・等々、様々な視点のバランスが向上したからこそ(ジーコのバランス感覚も含めて?!)、チーム発展の可能性が感じられるようになってきた日本代表。次は、勝負のコロンビア戦(二試合目ではニュージーランドを「3-1」と撃破!)。(自己営業の?!)モティベーションレベルが高く、実力もある好チームです。世界に対する存在感のアップという目標を、ワンステップ、クリアした日本代表が、(出場停止の稲本と怪我の中村俊輔を欠いて?!)どんな自分主体の闘いを披露するのか。私自身の学習機会としても、楽しみで仕方ありません。
やはり、アルゼンチン戦やウルグアイ戦など、相手の実力が高ければ高いほど「見えてくる内容」の質が深くなる。この試合についても(もちろん次のコロンビア戦も)、機会を改め、様々な視点で分析しようと思っています。
ちょいと疲れ気味ですが、ジーコジャパンが展開した立派なサッカーに勇気づけられて、今この時点で思うところを最後まで書き終えられた湯浅でした。フ〜〜。