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高校選手権決勝・・様々な意味で考えさせられる決勝でした・・市立船橋高校vs国見高校(1-0)・・(2003年1月13日、月曜日)

結局昨日の日曜日は、「外国人」を追いかけ、ゲームレポートを上げて寝たのが朝方の4時。その後、数時間横になり、午前中にサッカーマガジンの連載を仕上げ、その足で国立競技場へ向かったっちゅう次第。

 皆さんご存じのように、湯浅は冬休みをとっていたため、高校選手権は、一回戦、二回戦くらいまでしか観ていません。ということで、ここでは、試合の流れを追いかけながら戦術的な見所を探ることにします。

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 いや、本当に国見は強い。それでも、その「強さ」の背景に潜むコノテーション(言外に含蓄される意味)は、この年代のユースサッカーの「本来の目的」にとって、本当にプラスなのかい??

 このことは、ここ2-3年の間、高校サッカーについて書いてきたことです。何といっても、高校サッカーの主役は、国見でしたからネ。そして思ったものです。やっぱり、この高校サッカーという一発勝負システム自体が、発展するための全てのベースである「考える姿勢」を伸ばさなければならないユース選手たちにとって、確実にマイナス要素になっている・・。

 高い個人能力(身体的、技術的)をベースに、スッポンマンマーク、ボールを奪い返してからの、決定的スペースを狙ったロングボールを主体にした攻撃など、忠実な「戦術サッカー」を展開する国見高校。そりゃ、強いはずだ。しかし私は、そのサッカーに対して「ノー」を突きつけざるを得ません。

 とはいっても、国見高校のサッカーが、あのように「規制と解放のバランス」を欠いた(規制方向へ振れすぎている)勝利至上主義のタクティカルプレーに終始している現象について、決して小嶺総監督に非を負わせるわけにはいきません。逆に私は、コーチ仲間として、よくここまで選手たちをトレーニングしたな・・という畏怖の念で一杯になったものです。あれだけ「ステレオタイプサッカーの規制」を徹底させること(全員のイメージをシンクロさせる作業)は並大抵のことではないし、そんな「国見サッカー」のイメージを選手たちに深く浸透させ、それを確実に実行させつづけたんですからネ。もちろん小嶺総監督の判断で出来ると思われる選手には、創造的なドリブル勝負やタメなどの単独勝負プレーも許しているということは聞いてはいますが・・。

 私が言いたいことは、小嶺総監督が、高校サッカーという「システム」の範疇において、勝つことで選手たちが獲得できる「価値」を信じ、最大の(数字的な)成果を挙げることを「目的」にしているのだろう・・ということです。小嶺総監督は、その「目的達成」をイメージし、着実なステップを踏みつづけているのですから、それはそれで素晴らしい「プロの仕事」だと思うわけです。

 何といっても、高校サッカーには「一発勝負トーナメント」しかないのですからね。そこで、選手たちがより多くの体感(経験)を積み重ねることが出来るための(要は、確実に勝ち進むための)ソリューションを代表するのが、いまの国見サッカーだということです。

 だからこそ私は、「システム自体」を大きく転換しなければ、ユースの選手たちが本当の意味で発展できる環境は整わないと言いつづけているわけです。決して先生方が悪いわけではない・・。これは経済や政治など、様々な領域やレベルの社会メカニズムにも言えることなのですが、成果に対する評価基準のベースとなる「パラダイム(枠組み)」に問題がある場合(あるいは、成果自体の定義に問題がある場合)、それを改善しなければ、確実に、本来あるべき目的が歪みつづけ、あらぬ方向へ一人歩きしてしまうのが世の常だということです。

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 年間を通じたリーグシステムによって、一週間に一度は「勝負のゲーム」がある・・、そこでは、短期的な勝利ではなく、より深く「内容」が問われてくる・・。それは、100年を越える世界サッカーの歴史が培ってきた最良の「発展システム」なのです(もちろん細論では、リーグシステムにも様々な問題点はありますが・・)。

 川淵キャプテンを中心に、高体連や中体連などとも連携しながら、いまその改革が急テンポで進みつつあると聞いています。

 もちろんそこには、様々なファンダメンタルズ的課題が出てくるでしょう。それでも、決して今までのように、「出来ない理由を探す関係者」に押し切られないで欲しいと願って止まない湯浅なのです。とにかく、今後の改善に期待しましょう。

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 ハナシが、本当にあらぬ方向へ進んでしまいましたが、高校サッカーを語る上で避けて通れないテーマですからネ・・ご容赦アレ。

 さてゲームですが、思った通り、国見がゲームを支配しつづけ、何度も決定的チャンスを作り出すという展開に終始します。そんななかで、耐えに耐えつづける市立船橋が後半に盛り返し、ここ一発のロングシュートを小川が決めて優勝をもぎ取るのです。

 決勝ゴールが決まった後の最後の15分間は、見応え十分の攻防が繰り広げられました。何度も崩されかけながらも、GK国領の攻守や、ギリギリのカバーリングなどで耐えきった市立船橋ディフェンスブロック。万雷の拍手に値する闘いでした。

 それにしても国見は強い。低く抑えられた正確なシュート、完璧なカタチをもっているコーナーキックからの勝負、攻守にわたる競り合いテクニック等々、とにかく彼らのプレーからは、実効あるトレーニングの内容が見えてきます。

 もちろん勝った市立船橋高校も、優れたチーム戦術的な方向性も含め、よくまとまった好チームです。堅実な守備ブロックが展開する忠実でクリエイティブな(読み)プレー、しっかりとボールを動かす組み立てをベースにした(だからこそ虚を突くカウンターが実効を伴う!)、後ろ髪を引かれない爽快な攻め上がり等、攻守にわたるプレー発想のレベルは高く、ここでも、布監督の確かなウデが如実に見えてきますよ。

 久しぶりに満員にふくれ上がったスタジアム。深い考察に値するコンテンツが詰め込まれたゲーム内容。満喫しました。




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