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レアル・マドリーとバイエルン・ミュンヘン・・学習機会としての「ストーリー」を求めて・・(2004年9月1日、水曜日)

今シーズンも、レアルとバイエルンに面白そうなストーリーが見えています。まあ、彼らに対する期待値は際限知らずといったところだから、その物語は、どうしてもネガティブなものになってしまう・・。

 まずレアルから・・。先ほど、パトリック・ヴィエラが、母国のセネガルで創設したサッカースクールの関係者と会ってきました。えっ? パトリック・ヴィエラとは誰かって?? 言わずとしたれ、アーセナル中盤の王様ですよ。彼はセネガル人なのです。9歳のときにフランスにわたったわけですが、でもまだソウル(たましい)はセネガルにある・・そして今、母国の若いサッカーマンたちのチャンスを広げる活動に貢献しはじめたというわけです。自らのアイデンティティーのために・・。素晴らしいことです。

 レアルの話で、何故パトリックのことから入ったかって? もちろんそれは、ヴィエラのレアル移籍が取り沙汰されているからです。「最後はどうなるか分かりませんが・・アーセナル監督との個人的な信頼関係もあるから・・」。その方は言葉を濁していたけれど、どうもこの移籍は成立しそうにないような・・。ということは、今シーズンのレアルは、昨シーズンと同じ悩みを抱えることになる。守備的ミッドフィールダー・・。

 昨シーズンの立ち上がり、私は、デイヴィッド・ベッカムを中盤の底に据えるのは仕方ないにしても、そのパートナーには、何といったってエルゲラしかいないだろう・・と書きつづけました。結果として、ベッカムとエルゲラのコンビが守備的ハーフに入った試合の結果が、統計的に一番良かったとか・・。それでも、やはりそこには課題に山積みなのです。

 たしかに全体的には「そこそこの出来」ではありました。でも、一試合に何回かは、相手に、守備ブロックのウラ(決定的スペースや、最終ラインディフェンダーの間にあるスペースなど)を突かれてしまうシーンが出てくる・・。その頻度は、このクラスのチームでは許されないほど高いのですよ。

 現象その1:エルゲラとベッカムのラインと最終ラインの間のスペースを簡単に使われてしまっている・・要は、守備的ハーフの「ぼかし」ポジショニングがうまく機能せず、背後に対する意識が散漫というのと同時に、最終ライン選手たちのボール奪取勝負に対するイメージにも鋭さを欠くということ・・アウェーでマジョルカと戦ったこの試合では、新加入のサムエルが不在だったわけだけれど、彼がいれば、もっと効果的なリーダーシップを発揮したのかもしれない・・

 現象その2:ベッカムや両サイドは、例によって上がり気味・・積極的な攻撃参加だから、それはそれでポジティブなのだけれど・・それをカバーするのがエルゲラしかいないという状況が多くなり過ぎる・・こんな状況では、ジダンやフィーゴの守備意識も、より強化しなければならない・・一度、右サイドを相手サイドバックに(パスコンビネーションで)突破されるといったピンチのシーンがあった・・そこでは、ジダンが最後まで付いて戻らなければならなかったのだけれど、結局彼は振りきられてしまった・・とにかく、昨シーズンほんの短い期間に見られた、「やっぱりアイツらだけじゃダメだ!」という、中盤守備に対する不安を持ったジダンやフィーゴが、もっと積極的にディフェンスに絡んでいかなければ、結局は昨シーズン同様、中盤ディフェンスが機能不全に陥ってしまう・・とはいってもネ・・フム、難しい・・

 現象その3:勝負シーンでの、相手の二人目、三人目の勝負フリーランニング(後方からの飛び出し)が、しっかりとマークされていないというピンチのシーンが多すぎる・・もちろんその役目は、主にエルゲラが負わなければならないのだろうけれど、それがうまく機能せず、アッと気付いた彼が、入り上がる相手の「ケツ」を追いかけるというシーンを何回か目撃した・・そこにパスが通れば、レアルGKカシージャスと「1対1」になってしまうという、ボールがないところでの最大ピンチシーンだった・・

 現象その4:中盤でのパス出しの起点に対する「抑え」が十分でないという場面が多すぎる・・これも、中盤選手たちの「忠実な守備意識」のレベルによってコントロール化膿なのだけれど・・この試合でのベッカムは、どうも守備意識が散漫に過ぎた・・だからこそエルゲラの負担が大きくなり過ぎた・・相手ボールホルダー(次のパスレシーバー)に対する抑え(=守備の起点プレー)が不十分だし、タテへの飛び出しへのマークも不十分・・これでは、ちょっとヤバイよね・・

 現象その5:そんな、ちょっと機能不全の中盤守備が原因(?!)で、最終ラインのマークも甘くなっている・・守備選手たちは、常に「ボール周りのプレー」を観察しながら次の勝負所を予測し(読み)対処するのだけれど、その予測をするためのベースが定まらないのですよ・・まあ、中盤守備が原因だけではないだろうけれど・・とにかく、肝心なところでのマークが甘い・・要は、(ボールウォッチャーになるなど)状況把握能力に課題があることで、マーキング&カバーリングポジショニングの微妙な修正作業がうまく機能していないということ・・だから、相手に(ある程度)フリーでシュートを打たれてたり、(ある程度)フリーでラストパスを繰り出されたりしてしまう・・

 まあ、リーグ開幕戦に勝つには勝ったけれど、今シーズンのレアルも大変だ・・と予感させられる内容ではありました。

 とにかく、私にとって、昨シーズンの「マケレレの放出」は、いまでも不可解そのものなのです。誰が見ても、中盤の最も重要な存在は彼だったわけですからネ。そのマケレレに対する評価が低く(年俸が低かった?!)、そして結局「いらない」ということになってしまった・・。それって「マンUの陰謀」?! 何せ、(昨シーズンのレアル監督)カルロス・ケイロスさんは、マンUに復帰したわけでしょ。あははっ・・

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 さて調子が出ないバイエルン。第三節では、絶好調のレーバークーゼンとアウェーで対戦しました。そして、問題点が白日の下にさらされてしまう・・。マガート新監督が言うように、たしかに攻守にわたって、自ら仕掛けていくというプレー姿勢に欠ける選手たち。このことについては、スポナビの連載コラム「湯浅健二の質実剛健ブンデスリーガ」も参照してください。

 この試合でのバイエルンは、攻守にわたって、完璧にレーバークーゼンに凌駕されてしまいました。立ち上がりはそうでもなかったけれど、時間が経つにつれて、彼らの「深層のプレー姿勢」が、どんどんと表面化してきてしまったというわけです。もちろん、レーバークーゼンが良すぎたから・・という見方もできるけれど、それにしても、バイエルン選手たちのプレー姿勢に、根本的な課題が露出していたと感じました。

 それにしてもレーバークーゼンは素晴らしいサッカーを展開しました。特に最終ラインのブラジル代表コンビ、ホッキ・ジュニオールとジュアン、中盤のスーパーイタリア人ポンテ、最前線のブルガリア代表ベルバトフと、ブラジル代表フランサが展開するスーパープレーには陶酔させられましたよ。ボール絡み、ボールのないところでの、攻守にわたるダイナミックな主体プレーをベースにして、どんどんビッグチャンスを演出していくレーバークーゼン。前半は「1-0(結局4-1)」だったけれど、実質チャンスからすれば、もう2-3ゴールは入っていてもおかしくありませんでした。もちろん、彼らが展開した素晴らしいサッカーの絶対ベースは、守備と、攻撃でのボールがないところでのクリエイティブな無駄走りの積み重ね。アウゲンターラー監督は、本当によい仕事をしています。その魅惑的なダイナミックサッカーを観ていて、今シーズンのチャンピオンズリーグでは、レーバークーゼンが抜群の存在感を発揮するに違いないと確信した次第。あっと・・このコラムは、バイエルンについてでしたっけネ。でも、このゲーム内容じゃネ・・。

 バイエルン選手たちのプレー姿勢は、攻守にわたって、とにかく「アナタ任せ」。そんなネガティブな消極プレー姿勢を認識できるのは、もちろんまず守備においてです。要は、相手ボールホルダー(次のパスレシーバー)を抑えるという意識レベルで、レーバークーゼンと雲泥の差があるということです。そんな中途半端なプレー姿勢では、中盤でフリーなレーバークーゼン選手たちがどんどんと出てきてしまうのも道理だし、最終ラインも「次を読んだポジショニング」に入れるはずがない・・また「次でボールを奪い返す」という先を読むという意識にも課題が満載だから、簡単にボールウォッチャーになってしまったり、ボールがないところでの決定的アクション(決定的フリーランニング)も掴まえられない・・単純なワンツーにも付いていけない・・。

 もちろん、そんな受け身で消極的な「様子見ディフェンス姿勢」は、次の攻撃にも暗い影を落とします。十分な人数をかけられない・・そんなパスレシーブ可能性の少ない単発な仕掛けでは、レーバークーゼン守備陣に「次」を読まれて潰されてしまうのも道理・・そして単に「個の勝負」を無為に積み重ねるという低級な仕掛けに落ち込んでいく・・。

 相手のミスを「待つプレー姿勢」が、プレーイメージの深層まではびこってしまったバイエルン。レーバークーゼンに「2-0」にされてからやっと覚醒し、本来のダイナミックサッカーの片鱗をみせはじめたバイエルンでしたが、時すでに遅し。そしてバランスを欠いて攻め上がるウラを突かれたカウンターで失点を重ねてしまったというわけです。

 それにしても、彼らの基本的なプレー姿勢を再び活性化するためには、大変なエネルギーを必要とするだろうな・・試合を観ながら、そんなことを考えていました。まあ、フェリックス・マガート監督のウデの見せ所ではあるけれど、現代のプロサッカーでは、監督に与えられる時間は本当に少ないですからネ・・。

 とにかく、魅惑的なサッカーのレーバークーゼンが、レアル・マドリー、ローマ、ディナモが相手となるチャンピオンズリーグ本戦でどのようなサッカーを展開するか・・また、フェリックス・マガート監督によるバイエルンの復調マネージメントは・・なんていう「ストーリー」が見えてきました。

 



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