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ヨーロッパの日本人・・今週はちょいと長めに高原直泰をとりあげ、最後に中田英寿と戸田和幸について短くまとめます・・(2004年2月15日、日曜日)

今週は、まず高原直泰から。

 先週のボーフム戦では、後半からの出場だつたわけですが、登場した瞬間から、危機意識満点の積極プレーで存在感を発揮した高原。このヴォルフスブルク戦で先発メンバーに入るのも自然な流れだと確信していた湯浅だったのです。そして案の定・・。

 彼の基本的なプレーイメージは、マハダヴィキアと組む、左右サイドを「基点」とするチャンスメイカー&ストライカー。まあマハダヴィキアについては、クロスボールの仕掛け人というイメージが定着していますから、高原は、どちらかといえばロービング(曲線的なフリーランでスペースへ入り込む・・)ストライカーというイメージとも言えそうです。

 もちろんロメオが「不動」のセンター。その後ろの三列目に、バルバレスとヤロリームのコンビが入り、守備的ハーフにはバインリッヒが入る・・。とはいっても、バインリッヒとヤロリーム&バルバレスは、どんどと前後左右にポジションチェンジをくり返しますからね、この三人については、攻守わたってかなり流動的といっていいようです。だからこそ、チーム攻撃のダイナミズムは、この三人によってジェネレート(発電)されている・・。マルトリッツがケガで戦列を離れたことで(仕方なく?!)組まれた中盤トリオなのですが、全員が高い守備意識を持ち、ディフェンスの実効レベルも高いことで、素晴らしい機能性を魅せていましたよ。やはり、「守備意識と実効ディフェンスレベルの高さ」こそが、優れた中盤プレーの絶対的な基盤・・というわけです。

 さて試合ですが、中盤での攻守にわたるダイナミズムで上回るホームのハンブルクが、ゲームの流れを支配するという展開で立ち上がりました。それだけではなく、最初の10分間のハンブルクは、ヴォルフスブルク守備ブロックを崩しかけるというところまで支配レベルを高めていたと感じます。もちろんヴォルフスブルクは、アウェーということで注意深くゲームに入っていっているのですが、対するハンブルクが、人数をかけて守るヴォルフスブルクの守備ブロックを振り回すというシーンを何本も演出していたのですよ。この支配状態だったら、もしかしたら先制ゴールへつながるかも・・なんて思っていたら、やはり10分を過ぎたあたりからヴォルフスブルクも盛り返してきました。まあヴォルフスブルクにとっては、ゲームの立ち上がりは落ち着いてハンブルクの攻めを抑制しようとしたけれど、守備ブロックが崩されかけてチャンスを作り出されるという「ネガティブ刺激」を受けたことで、図らずも、攻撃への勢いが増幅していったということでしょう。やはりサッカーは、ホンモノの心理ゲームなのですよ。互いの心理パワーのせめぎ合いこそが、サッカーゲームの本質・・。

 こうなったら(チーム全体の意識が前へ統一されはじめたら!)ヴォルフスブルクの攻撃は強い。何せ、ダレッサンドロクリモヴィッツのアルゼンチンコンビや、ペルロフ、トビッチ等々、優れた攻撃の才能を有していますからネ。要は、オレたちの才能レベルは凄いんだゾ!という自信と実績があるということです。ということで、そこから10分くらいの時間帯、ヴォルフスブルクのペースがつづきます。そんなゲームペースが反転した状況で、必死に押し返そうとするハンブルクですが、ボールなしの動きとボールの動きがうまくシンクロしないことで(攻撃にうつったときの押し上げの量と質が十分ではないことで!)、ピタリとパスコースを読んだプレッシャーをかけられたり、インターセプトを決められたり等、簡単にボールを失ってしまうシーンが連続するのですよ。この時間帯の高原も、そんな悪い流れを押し返すことができず、沈滞したプレーに終始します。この試合で高原とマッチアップすることになったのは、ドイツ生まれ&育ちのガーナ人選手ザルパイ。攻守にわたって、高原が押されるシーンがつづいていたのです。

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 でも先制ゴールを挙げたのは、悪い流れ(擬似・心理的な悪魔のサイクル)にはまりかけていたハンブルクの方でした。相手守備ブロックを崩したわけじゃありませんでしたが、後方から遅れた上がってきたバルバレスに、うまいタイミングで横パス(戻り気味のパス)が通ったのです。まったくフリーでパスを受けたバルバレス。彼には、そこから勝負イメージを高揚させていくだけの時間的余裕もありました。そして意を決したバルバレスが、遅れ気味のタイミングでチェックにきた相手ディフェンダーを一発の「カット」で置き去りにし、そのまま流れるようなモーションで右足を振り切って、ゴール左サイドに、うまくコントロールされたシュートを決めたという次第。やはりバルバレスは、ゴールを挙げることについては、特異な感覚を有している・・(3年前にはブンデスリーガ得点王にも輝いた!)。

 逆にヴォルフスブルク側から見た場合、この失点は、彼らの悪いクセが出た結果だとも言えるかも・・。要は、今シーズンのヴォルフスブルクは、優れた攻撃の才能を補強したことで「いけいけドンドン」という、相手を押し込んで攻め崩してしまうイメージのゲーム運びが得意なチームになっているという側面もあるということです。だから、攻守のバランスが崩れやすい・・。この失点シーンでは、誰も、後方から上がっていくバルバレスについて戻ってこなかったですからね。だから守備ブロックの選手が、互いのポジショニングバランスを崩してでもバルバレスのチェックへ向かわざるを得なくなり、バルバレスの前に大きなスペースが出来てしまったというわけです(ドリブル勝負&シュートするスキを見出したバルバレスの一瞬の判断と決断、そして実行力に乾杯!)。

 もちろんゲームは、このゴールによってどんどん活性化していきます(ゴール・失点に優る刺激はない!)。もちろん高原のプレーも含めてね・・。

 それまで、守備では十分すぎるほどの効果的プレーを魅せていたものの、攻撃では、どうも仕掛けの流れに乗り切れなかった高原(ハンブルクの仕掛けの流れ自体が単発に過ぎたから、それに乗るのは難しかった?!)でしたが、徐々に存在感を発揮しはじめるのです。特にバルバレスとのコンビ(イメージ・シンクロ・プレー)がいい。この試合でのバルバレスは、多くの時間帯セカンドストライカーに徹していたから、二列目からの押し上げシーンが多い。ということで、バルバレスからの「スルーパス・シーン」が目立つのですよ。昨年から、高原&バルバレスのコンビネーションはよかったですからネ。そんなコンビプレーのなかで、高原の「スルーパスを呼び込むフリーランニング」が決まりはじめたというわけです。要は、バルバレスがボールをキープしているタイミングで、高原が前方スペースへ飛び出していくという仕掛けコンビネーションプレーのことです。

 「パスがくるかな・・」とぬるま湯の動きで様子見になり、パスが出てから(ハッと気付いて)全力疾走にうつるというのでは、相手の(ディフェンス発想の)ウラを突けるはずがない。やはり、ボールホルダーがキープしているタイミングで、全力ダッシュでスペースへ飛び出していく「本物のフリーランニング」こそ、ウラ突きの本質なのです。だからこそ、それが決まったときの成功体感に鳥肌が立つ。

 30分を過ぎたあたりから、バルバレス&高原コンビによって、何度かそんなシーンが演出されるようになったのですよ。まあ、とはいっても、相手守備ブロックのポジショニングミスで高原がフリーになり、待ち構えていたところにスルーパスが通された(そこから高原が超速ダッシュをスタートした!)というシーンもありましたがネ。とにかく、さて(仕掛けイメージのペースが上がってきた)ここからだな・・なんて思っていた湯浅でした。ほとんどの競り合いシーンで絡んでくる高原のマーカーは、優秀なザルパイだから、相手にとって不足なし・・。

 後半の高原は、立ち上がりから存在感レベルを高揚させつづけます。まず2分。中盤でボールを拾い、そのままロメオとのワンツーを決めて相手ゴール前へ突進していく。誰もが「アッ・・行った!」と確信したに違いありません。最後は、カルハンの粘りマークに抑えられてしまったとはいえ、そこでの爆発的な(急激なスピードアップベースの)個人勝負はインプレッシブそのものでした。前節でも何度も魅せた、吹っ切れた(自分主体の)仕掛けシーン。またその1分後にも、左サイドで、ザルパイを翻弄して抜き去り、そのままファーポストスペースへのラストクロスを決めてしまいます。そのスペースへ後方から入り込んだのはバインリッヒ。完璧なヘディングタイミングだったのですが、最後のところで、バインリッヒの目測ミスで「おじぎヘディング」になってしまって・・(ヘディングされたボールは、ワンバウンドで大きくバーを越えていってしまった!)。

 また、セットプレーでは、何度も、高原がヘディングシュートも放ちます。まだまだ課題てんこ盛りとはいえ、発展ベクトルを高揚させつづけている高原。上り調子の選手を観察することほど楽しい作業はありません。

 この試合では、トップメラー監督が「守りきるゲーム戦術」に切り替えたことで、高原は、後半23分に左サイドバックのラーン(ドイツ代表)と交代しベンチへ退きました(またその後、ロメオもディフェンス要員と交代)。そしてラーンが、決定的なダメ押しゴールを決めたのですから、トップメラー監督の采配を褒めるしかない・・。

 高原は、良いプレーイメージが継続していると体感しているだろうから(まあ記者会見などでは不満ばかりを表明するのでしょうが・・)、全体的にはポジティブな心理状態でグラウンドを離れたことでしょう。とはいっても、まだまだ伸びシロは十分ですからネ、これからは、より多く「ビデオ活用のイメージトレーニング機会」を増やしましょう。もちろん、彼のスタッフがまとめたピックアップシーンビデオ。まあ、私が言うまでもなく、既にやっていることとは思いますが・・。

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 さて中田英寿。スカパーの放送中、現地の北川義隆さんからレポートがありました。北川義隆さんとは、彼が文化放送にアナウンサーとして在籍していたときからのつきあい。今でも、重要なイタリア情報があればメールで流してくれます。大きな組織に呑み込まれることなく、そこを飛び出し、フリーランス・ジャーナリストとして自らの意志で活躍の場を開発していく。敬意を払っています。その北川さんの、ボローニャ・マッツォーネ監督インタビューに関する現地レポート。

 「中英寿を本当に高く評価しているボローニャのマッツォーネ監督曰く・・中田はしっかりとした教育を受けているだけではなく、人を敬うこともできるし、協調性も十分だ・・こんな短い期間でディフェンスラインに対しても指示を出せるだけではなく、ディフェンスラインも中田の言うことをしっかりと聞こうとしている・・素晴らしいリーダーシップじゃないか・・中田は、完全にチームの中心になっている・・だからこそ、中田のプレーイメージそのままに、ボールもしっかりと走るようになるのさ・・まあ、とにかく大したものだ・・」。ナルホド、ナルホド・・。

 この発言のなかでは、人を敬う(うやまう)ことができるという発言がミソ。要は、人に対して敬意を払うことができない者は、決して人から敬意を払われることはない・・ということです。まあそれも、中田自身の自信と確信レベルの高さの(余裕の)証明ということでしょう。何らかの「恐れの感情」に囚われている者は、何に対してもネガティブにアグレッシブになるものですからネ。そして自ら墓穴を掘っていく・・。怒りの心理的な(大きな)背景は、何らかの恐れにあり?! あっと・・またまたちょっと脱線。

 試合(ボローニャ対モデナ)ですが、伝統的な地域ダービーということで、両チームともにものすごく集中しています。もちろん、そんなプレー姿勢は、そのほとんどが中盤でのホールのせめぎ合いに現れてきます。スゴイですよ、ホント、両チームの中盤ディフェンスでの集中レベルは・・。

 中田英寿に対しても、ものすごいプレッシャーがかかります。まあ、ボローニャの仕掛けリズムの演出家だから当然ですが、それでもある程度は存在感を押し出す中田。大したものだ。

 そんなギリギリのせめぎ合いのなかで、前半32分には、ボローニャ中盤ディフェンスの汗かきキング、コルッチが二枚目のイエローで退場になってしまうのですよ。これは・・なんて思っていたその2分後こと、ホームのボローニャがラッキーな先制ゴールを奪ってしまいます。スコアラーは、相手のクリアミスを奪って冷静に蹴り込んだロカテッリ。前半35分のことです。

 そこからのゲームの構図は、一つに集約されます。ガンガンと押し上げていくモデナに対し、耐えに耐えながらのカウンターを繰り出していくボローニャ。

 そこでの中田も、攻守にわたって素晴らしい存在感を発揮します(ここぞボール奪取勝負だけじゃなく、ボールのないところでの抑えマーキングもサスガ!)。とはいっても、モデナの勢いは尋常じゃないこともあって、攻撃にうつった中田もシンプルプレー(シンプルなボールの動きとコンビネーション)をリードすることがままならない。

 そんな流れのなかで、モデナのアモルーゾがワンチャンスの同点ゴールを挙げてしまうのですよ。後半19のことです(素晴らしい胸トラップからのダイレクトボレー!)。

 さてこれで、ボローニャも攻め上がるかな・・と思っていたのですが、この試合でのモデナの勢いは、たしかに尋常じゃなかった。だから、ボローニャよりも一人多いことが、殊の外効いている・・。やはり、チームとして人数が多い状況では(相手の一人が退場になった状況では)、全員が「より多く」走れるという意識でプレーすることが、ゲームの全体的な支配状況を「より効果的に」することができる・・より相手を押し込み、心理的な悪魔のサイクルにまで落とし込むことができる・・ということです。もちろんこの試合でのボローニャは、決して心理的な悪魔のサイクルにはまり込むことはありませんでしたが、一人多いという状況を「最大限に活用」するモデナの勢いに、最後までゲームを支配されていたボローニャだったのです。だからボローニャにとっては、どちらかと言えばラッキーな引き分けだった・・。

 まあ、あんな状況にもかかわらず、中田は存分にチカラを発揮していたから、私は満足でしたがネ・・。

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 最後に、戸田和幸についてショートコメント。

 これまで2-3ゲーム観ています。まあ今のところは、とにかくディフェンスをカッチリこなすことをスタートラインにしようというプレー姿勢のようです。でも、どうもボール奪取シーンへの効果的な絡みに、感覚的なマイナス面が目立つ・・。要は、彼のプレーに、自信が感じられないということです。だから、読みでの「寄せ」に勢いが感じられない・・守備でのリスクチャレンジ姿勢が感じられない・・。とにかくミスなく、ステディーな(安定した)プレーを志向していると感じるのです。いや、安定志向が強すぎるから、プレー姿勢に、戸田本来のアグレッシブな香りが感じられないといった方が正しい表現でしょうか。そんな後ろ向きのプレー姿勢だから、攻撃でもミスパスが目立つようになってしまう。それには、これまで絶対的なゲーム数が少なすぎた(もちろんレベルの高い勝負マッチの数)ということも背景にあるということです。

 とはいっても、部分的には、鋭いディフェンスや、前線へのクリエイティブなパス、はたまた鋭いオーバーラップからの攻撃参加も見られます。そのときは、以前の本格感がビシビシと匂ってくる・・。とにかく戸田はこれからが本番。基本的な能力は十分なのだから、とにかくチャレンジに対する意志を強くもってポジティブ志向で頑張って欲しいものです。私もこれから「戸田というストーリー」を練ろうと思っていますので・・。




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