でも、今日、そろそろ鹿島へ出発しようかと単車にまたがってエンジンをかけたときのことです。ドゥオン、ドゥオンという、並列四気筒独特の(ホンダ独特の・・)スムーズな吹け上がり音。と、次の瞬間、ストン!とエンジンが停止してしまったのですよ。電気系のトラブル?! そのことは、すぐに分かりました。何せ「ストン!」というエンジンストップ状態ですからネ。焦りました。すぐに単車を押して、行きつけのオートバイショップへ。「これは、ジェネレーター(発電器)かもしれないしレギュレーター(電気系調整器?!)かもしれない・・何とも言えませんが、どちらにしても置いていっていただくしかありません・・」。私が信頼するメカニックの言葉に、仕方なく代車(50CCのスクーター)で家へとって返し、クルマに乗り換えて鹿島へスタートしたという次第。
それにしても残念。単車で、それも厳しい自然環境のなかをスタジアムへ向かえば、おのずとコンセントレーション(集中力)と気合が高まるものなのですよ。だから試合前の「観戦準備イメージトレーニング」も実効あるものにできる・・。でも今日はクルマでの移動ですからね。楽だから、それだけ内的なエネルギー集約に欠けてしまうというわけです。そんな私のルーズな雰囲気が乗り移ったわけもないでしょうが、日本代表の試合も、緊張感の高まりが感じられない(締まりのない)内容に終始してしまうのです。
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対戦相手のマレーシアは明らかに格下。目に見えて実力差が感じられる相手ということです。まあ、このゲームの意義は、勝負マッチ(W杯予選オマーン戦)の前に弱いチームを相手にすることで、限りなく自分たちが主体になって「チーム内での戦術的イメージを深化・強化する」ということでしょうから、その視点ではまあまあのマッチメイクをしたということです。
でもそのゲームミッション(トレーニングマッチの具体的な目標・目的)を達成するためには、(相手の実力が低いからこそ!)攻守にわたってギリギリの自分主体チャレンジをくり返さなければいけません。特に「ボールなし状況」においてネ。それがあってはじめて、自分たち主体で戦術イメージを確認し、そのシンクロレベルを引き上げることがてぎるのですよ。でもこの試合での日本代表のプレー姿勢からは、その部分を「真摯に突き詰めるための厳しさ」を感じ取ることが十分にはできなかった・・。
日本代表は、個人的な能力は別にして、戦術的プレーレベル(攻守にわたる組織プレーイメージのレベル)で、マレーシアよりも数段上なのですよ。にもかかわらず、(たしかにディフェンスでは大きな実効差を見せつけてくれはしたものの!)特に攻撃では、その実力差をグラウンド上の現象として現出させられないという消化不良プレーのオンパレード・・。
ボールがないところでの動きの質と量が高揚してこないから、全体的なボールの動きにも驚きがない・・またボールホルダー(パスレシーバー)のプレーが「多すぎ・遅すぎ」ることで、周りのパスレシーバーのボールなしプレーイメージが阻害されている・・これではボールなしの動きダイナミズムが徐々に低落していくのも道理!・・結局ボールは、マレーシア守備ブロックの「視野の範囲内」を、主に横方向へ動くばかりだし、その動きのスピードも遅い!・・ということで日本代表は、マレーシア守備ブロックをうまく崩せないし、決定的スペースを突くようなスルーパスチャレンジシーンを演出することもままならない・・久保や藤田(パスレシーバー)が決定的スペースへ抜け出すシーンは目にするが、パサーが躊躇する(勇気がなく勝負パスを逡巡する!)といった消極シーンが目立つ・・これでは、時間が経つにつれて、前線選手の決定的フリーランニングや、二列目選手の抜け出しアクションに対する意欲が殺がれてしまうのも道理(心理的なネガティブサイクル)・・そして、攻めにおける全体的なエネルギーが低減していく・・。
ちょっと厳しい評価ですが、前述したように、この試合には、相手が弱いからこそ(!)のミッションがあったはずですからね。このゲーム内容では、そのミッション(≒目的・目標)が達成されたとは言い難いというのが私の総合評価なのです。
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私が実際に体感した、「勝負マッチへ向けた最終準備ゲームのあるべき雰囲気」の例にはこんなものがあります。1980年代初頭のドイツ代表。ある日、1982年スペインワールドカップ予選マッチへ向け、ケルン近くのヘネフ・スポーツシューレ(ドイツ全土に点在する世界に誇るスポーツ総合施設の一つ)で合宿に入っていた彼らが、隣接するスタジアムで(数百人規模の収容人員の小さなアマチュアスタジアム!)で、その州のユース選抜チーム(U18)とトレーニングマッチを行いました。
相手はユース・・観客は数百人くらい・・はたまた、数日後にW杯予選の勝負マッチが控えている・・。そんな状況にもかかわらず、当時のエースだったカール・ハインツ・ルンメニゲや、チームのクリエイティブリーダー、リトバルスキー、またルーベッシュやブライトナーたちが、本当に必死に走り回って相手のユース選手達をボロボロにやっつけてしまうのですよ。観ている方が呆れかえるくらい徹底的にネ。決定的フリーランニングでは、必死にマークしようとするユース選手を手と体をつかって押さえたり、肘打ちまで食らわせたり・・。ホント、そこまでやるか?!なんてことを思っちゃいました。終わってみたら、たしか20数ゴールをたたき込んでいました。最後の最後まで手を抜かないでガンガンに攻め込みつづけたドイツ代表の強者達。その鬼気迫る雰囲気に、観客達は、ただただ息を呑んで見つめているだけでした。いや、ホントに凄かった・・。
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私がこのゲームに対する総体的な評価として言いたいことは、ホンモノの勝負マッチを控えたチームが臨む総仕上げマッチにしては、気合の入り方(≒攻守にわたる自分主体のリスクチャレンジ姿勢?!)が不十分だったのでは・・ということです。やる気のポテンシャルレベルは、攻守にわたるボールのないところでのプレーに如実に現れてきますからネ(まあ守備に関しては合格レベルでしたが・・)。そのプレーの質が高ければ、マレーシア守備ブロックを完璧に崩しきるような高質なコンビネーションなど、守備ブロックのウラをどんどん突いていけたはず・・。
たしかに危険な仕掛けプレーも繰り出していた日本代表でしたが、それも「個の勝負」がベースだから、どうしても単発という印象を拭えないということです。全力で走り抜けるフリーランニングがない・・爆発的なスタートダッシュがない(パスの後、ほとんどの選手が足を止めて無為の様子見状態に陥ってしまう!)・・だから相手守備ブロックのウラを突くようなコンビネーションが出てこない・・(繰り返しになりますが・・)。
後半24分でしたかネ、日本代表が、素早いワンツーコンビネーションでマレーシア守備ブロックを崩しきるチャンスを演出しました。この試合では、それが最初で最後のウラ突きコンビネーションだった・・?!このシーンの演出家(ワンのパスとパス&ムーブ!)は、やはり藤田俊哉でした。
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局所的にはハイレベルなプレー(イメージ)も見られた日本代表でしたが、残念ながら、それらがうまくシンクロする最終勝負シーンはほとんど出てきませんでした(もちろん相手のレベルを基準にした評価・・)。また、チームの心理ダイナミズムを高揚せられるだけのリーダーがいないというポイントも目立っていました(小笠原にしても藤田にしても、リーダーシップという視点でももの足りない・・)。ということで、全体的な内容については、ミッションに対する意識が希薄な(国内組のギリギリの意地が感じられない・・ジーコの意識付けの痕跡も明確に感じることができない)落胆ファクターの方が先行するゲームだったとするのが妥当なところでしょう。
そんな気合の抜けた(やる気エネルギーの爆発を感じない!)ゲーム内容が、ジーコジャパンに対する「そこはかとない不安」の本質なのかもしれない・・。たしかに勝ちはしたけれど、(マレーシアの実力をベースに考えた場合)相手守備を崩したシュートチャンスがあまりにも少なかったことも含め、その「つかみ所のない不安」は増幅したのかな・・?!