案の定、完全にヨルダンにゲームを支配され、前半11分に先制ゴールまで奪われてしまうという体たらく。それでも、その一分後にはセットプレーから同点ゴールをたたき込んでしまうのですよ。斜めに走り込んだ中澤のアタマ目がけた、例によっての中村俊輔のピンポイントフリーキック。そしてピタリと合わせられたボールを「スリップヘッド」で流す中澤。そのボールが、持ち前の忠実さで(こぼれ球をイメージして!)相手ゴール前まで走り込んでいた鈴木隆行にこぼれていったという同点ゴールでした。
大会を通じ、日本代表のセットプレーでの確信レベルがどんどんと高揚しつづけていると感じます。以前に書きましたよね、もし高い確率でセットプレーゴールを奪えるのだったら、肉を切らせて骨を断つというギリギリの闘いがつづくW杯の地域予選では、勝利することだけを目指し、良い位置でフリーキックを得ることをより強くイメージした仕掛けプレーをやってもいいかな・・なんてネ。とはいっても、それでは、この日本代表チームが、日本サッカーのイメージリーダーにはなり得ないですけれど・・。
とにかく、落ち着いたペースから、ココゾ!の急激なテンポ(スピード)アップをリードできる目覚ましプレーヤーがいないことで、ゲームの流れでは完全にヨルダンに圧倒されつづける日本代表という、フラストレーションがたまるゲーム展開なのです。まあ、そんな流れのなかで、セットプレーだけは危険なニオイを放ちつづけていましたが・・。
焦らず落ち着いて、ジックリとボールをキープし(例のポゼッション!)、チャンスを見計らったテンポアップで(複数の味方が仕掛ける、ボールがないところでの爆発フリーランニングを有機的に連鎖させることで!)、相手守備ブロックの薄い部分(決定的スペース!)を突いていく・・。それがジーコのイメージというわけですが、でもネ、それをうまく機能させるためには、中盤での「ペースアップ(心理的)リーダー」が必要だし、選手全員の、常にテンポアップをイメージしつづける研ぎ澄まされた「猛禽類の感覚」が最低条件ですよ。それがあってはじめて、ボールのないところでの仕掛けアクションにも勢いを乗せることができるというわけです。
でもこのチームには、テンポを低落させる(スピードアップの流れを断ち切ってしまう!)ボールプレーヤーはいるけれど、テンポアップを主導できるリーダーがいないし、監督の意識付けにしても、選手たちの自主的な(自由な)戦う意志にオンブにダッコ!? まあこの日本代表チームでは、ディフェンスブロックの「忠実、かつクリエイティブな強さと上手さ」だけが支えっていうことです。
前半と同じような展開になった後半でしたが、日本代表のプレーは、セットプレーだけではなく、ゲームの流れのなかでも少しは活性化しはじめたと感じました。特に後半終了間際に飛び出した中村俊輔と鈴木隆行の「イメージコンビネーション」は素晴らしかった。中村俊輔からのサイドチェンジ気味のラストクロスが、まさに100パーセントの決定機を生み出したのです(逆サイドでフリーになっていた鈴木隆行がヘディングシュート!)。もちろんヨルダンも何度か決定機を作り出したから、内容的には互角に近づいたというわけです。あっと・・後半では、両サイドのアレックスと加地のオーバーラップが効きはじめたことも特筆でしたね。でも延長になったら、中東チームのねばり強さ(体力的・心理的なフォーム!)に一日の長があるはずだから・・。
それにしても日本の守備ブロックは強い(下記の文章とはチト矛盾しますが・・全体としては、たしかにシュートチャンスは作られてしまったけれど、最後のところでヨルダンの攻撃をしっかりと抑えていた・・)。ここまで日本代表がみせていた勝負強さのほとんどは彼らが担っていたのです。特にこのゲームでの中澤のパフォーマンスは、冷静でクレバーな守備イメージ、ボール絡みシーンでの絶対的な競り合いの強さなど、まさに神がかり的でした。何度彼が、ヨルダンの危険な仕掛けの流れを断ち切ったことか。それ以外でも、宮本の読みベースのカバーリング、守備的ハーフとの守備イメージの有機的な連鎖などなど、とにかく頼りになる守備ブロックです。
とはいっても、ヨルダンの攻めの勢いは止まらない。どんどんと「人数をかけた」攻撃を繰り出しつづけるのです。そんな積極的な仕掛けにもかかわらず、次の守備ではしっかりと人数が足りている・・。やはり、コンディション的、ギリギリの勝負という状況になったときの「中東の闘う意志」はレベルを超えている。彼らは戦争を知っていますからネ・・。
延長における両チームのチャンス内容ですが、ヨルダンが少し押し気味という展開のなかで、まず日本代表が(後半の中村と鈴木コンビが演出したような)サイドチェンジ気味のラストクロスでチャンスを作り出します。今回は本山のヘディング。ただそのシュートは、鈴木のヘディングシュートと同じように、ギリギリのところで、ゴール左上角を外れていってしまいました。それに対しヨルダンは、流れのなかから二本の決定的チャンスを作り出しました。というわけで、全体としてはヨルダンに軍配が上がるといった延長戦のゲーム内容でした。
神様になった川口能活など、PK戦のドラマについてはコメントなんて必要はありませんよね。それにしても「同じ立ち足ミス」をくり返したアレックスには閉口させられてしまいました。最初に蹴った中村にしても、立ち足の状態をしっかりと確認していなかった?! まあ、そんな批判を受けても仕方のない二人のミスでした。彼らは、このミスを効果的な学習機会にしなければいけません。
さて準決勝の相手は、またまた「発展をつづける」バーレーン。体力的にも、技術・戦術的にも、相手にとって不足なし。確実に、オマーン戦のシミュレーションになるはずです。その意味でも、ドラマチックだったPK戦を制することが出来て本当によかった・・。
ところでジーコは、次の試合でも、「焦らず、落ち着いて、ジックリと・・」という意識付けでゲームに入っていくのだろうか・・このチームは、一度「落ち着いたら」、そこから自分主体でペースアップし難いことは既に証明されているのに・・そして、またまた守備ブロックに頼り切るサッカーになってしまう?!・・さて・・。