でも決勝では、まず11分にアドリアーノが爆発パワー(中距離)シュートを決め、その5分後にはカカーが、ワザありのコントロール(中距離)シュートを決めてしまう。まあ、この二つのシュートともに、そうそう簡単に決められるようなものじゃないから、ツキにも恵まれたということなのだけれど、とにかくブラジルの場合は、シュートレンジが広いし、ちょっとでもスペースを与えた次の瞬間には、こんなスゴイシュートを放ってしまうという事実を体感させられてしまった。相手の守備ブロックの心労は極限にまで達するでしょう。何せ、ほんのちょっとでも集中を切らせてボールホルダーをフリーにしたら「これ」だもんネ。あっと・・。この試合でのアルゼンチンが、アドリアーノとカカーをフリーにし過ぎたというわけではありませんでした。彼らは、ものすごいプレッシャーのなかでも、あのスゴイシュートを「素早いモーション」で放ってしまったのですよ。ブラジルの凄さを再び体感させられてしまった・・。
今はもう夜中の0030時。これから他のメディア用のコラムもアップしなければならないからちょっと厳しい。だから、例によって、試合中にメモをしたキーワードを編集することで、このゲームのポイントを書き綴ることにします。
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・・最初の時間帯に、こんなにポンポンとゴールを決められてしまったアルゼンチン・・もちろん前へ重心が掛かる・・そこからの攻めには、アルゼンチン独特の、組織パスプレー主体のなかに、ハイレベルな個人勝負プレーがミックスされるという素晴らしい仕掛けコンテンツを魅せつづけてくれた・・
・・そのなかで、前回のメキシコ戦で厳しく批評したリケルメの才能の凄さを体感させられた・・たしかに、リケルメの運動量は極端に少ない・・また守備もしない・・ただ彼のところにとにかくボールが集まる・・それはチーム内の合意事項・・そこから、メキシコ戦ではあまり見られなかったタテへのリスクチャレンジパス(ダイレクトパス)が、どんどんと出てくる・・またリケルメ自身がドリブルで突っかけていったり、ズバッとスペースへ飛び出していったりする(パスレシーブの動き)・・とにかくこの時間帯でのアルゼンチンの危険なシーンのほとんどは、リケルメの仕掛けイメージが主体になっていた・・ナルホド、これだったら、リケルメのチームにしても大丈夫かもしれない・・でも不安要素の方が大きいことも確かな事実・・何せ、時間が経つにつれて、どんどんと彼のカゲが薄くなってしまったから・・
・・このゲームでは、サッカーの基本はパスゲームというテーマを持っていた・・もちろんそれは全てのチームに共通だけれど、仕掛けプロセス(仕掛けコンテンツ)は、たしかにかなり違う・・昨日オランダで行われた「U20準決勝」では、ブラジル対アルゼンチン、モロッコ対ナイジェリアの激突があった・・そこでは、面白いことに、一方はパス主体で仕掛けていくチーム(アルゼンチン)が、内容でも結果でも凌駕し、もう一方のゲームでは、逆に個人プレー主体で仕掛けていくチーム(ナイジェリア)が勝った・・特にモロッコ対ナイジェリア戦では、立ち上がりの20分間だけを見たら、もうモロッコの大勝だと確信させられた・・それほど内容に差があった・・でも時間が経つにつれて、モロッコ守備ブロックの集中が切れはじめ、ナイジェリア選手たちのドリブル勝負に、安易にアタックを仕掛けて置き去りにされてしまうシーンが目立ちはじめる・・こうなったらもうナイジェリアのもの・・自信を深めたナイジェリアのドリブル勝負の勢いが倍増するのに対し、モロッコ守備ブロックがどんどんと不安定になっていく・・そして最後は・・それにしても、この二つの試合結果は、面白い「対比」だった・・
・・言いたかったことは、仕掛けの流れを演出するプロセスにおいて、パスやパスレシーブの動きがコアの手段になっているのか、それとも、ドリブルやタメなどの個人勝負プレーが主体になっているのかという分析視点のこと・・ブラジルなど、ドリブル主体で仕掛けていくチームでは、たしかに「展開パス」という種類のボールの動きしかない・・つまり、止まっている味方の足許にしっかりとつなぐポゼッションパス・・それでも、強く、距離の長いパスを正確につなげば、相手ディフェンスの人数的&ポジショニングバランス的な「穴」に入り込んで個人勝負を仕掛ける可能性も大きい・・対するアルゼンチンは、人とボールを活発に動かすことで相手の穴へ作り出し、そこでパスレシーブして最終勝負の起点(ある程度フリーでボールを持つ選手)を作り出すという発想・・もちろんアルゼンチンは、そんなボールの動きになかにも、いたるところで、個のエスプリ勝負プレー(ドリブルや、相手アタックをかわすフェイント等々)をミックスするから素晴らしい・・
・・この大会のアルゼンチンでは、多分、ドイツ戦の「23分間」に魅せたサッカーが最高のクオリティーだったのではないか・・ドイツが「2-1」となる勝ち越しゴールを入れてから、アルゼンチンが同点にするまでの時間ですよ・・これについては、以前のコラムかスポナビコラムを参照してください(スポナビのこのコラムを参照)・・試合後の記者会見でそのことをペケルマン監督に聞こうとして手を上げたら、隣のアルゼンチン人にマイクを横取りされてしまった・・やはり、アルゼンチン対ブラジルのゲームだし、ホストがドイツだから、その国のジャーナリストが優先されるのは仕方ないけれど・・まあ仕方ない・・
・・ところでブラジルのバレイラ監督・・1994年アメリカ大会で優勝したのに、守備的に過ぎると批判され、悔しい思いをしたに違いないプロコーチ・・ヨーロッパでは、ものすごく評価が高いプロコーチ・・彼が、そのことについて、記者会見でこんことを言っていた・・1994年は、(あまり選手たちの才能レベルが高くなかったから?!)ソリッドなチームにしなければならなかった・・ただ今は、素晴らしい才能を抱えている・・だからこそ、違うタイプのクリエイティブで魅力的なサッカーにトライできる・・
・・それは、たしかにそうだと思う・・ロナウジーニョ、カカー、ロビーニョ、アドリアーノに、ロナウドや、それ以外にも才能のオンパレードだから・・でもサ、現象面を正確に分析したら、このチームのやり方は「2002」のフェリペ・スコラーリと同じ・・それは、後方の6人ディフェンスブロックが基本的に守り、前方の四人が基本的に仕掛けていくという構図・・要は、前後分断・・だからこそ、やり方や選手のプレーのクセをしっかりと把握されたら完璧に抑え込まれてしまう可能性も大きいということ・・南米予選や、今回のドイツ戦、メキシコ戦も、その類かな・・それでもたしかに魅力的なサッカーだし、全体的に抑え込まれたって、ワンチャンスで「個の才能」が爆発したら・・ネ・・
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今回のコンフェデレーションズカップは、もう何度も書いたように、参加チームのシリアス度が高く、それぞれのゲームコンテンツにも本格感がムンムンでした。背景は、これまでのコラムやスポナビコラムで書いたとおりです。そんな大会で、ドイツが、中南米の強豪3カ国と対戦するなど、大会プロセスを通して成長し、最後はメキシコと立派な闘いを披露して3位に入ったことは、素晴らしいことでした(一人退場になってからの闘いコンテンツには極上の価値がある!)。
このチームは、若いだけではなく、常にリスクにチャレンジしつづけるなど、ギリギリの闘う姿勢を体感させてくれます。それがドイツ全土に、大いなる期待という元気を与えつづけています。素晴らしいことじゃありませんか。日常の社会的現象としてのサッカーをとことん楽しみ、それを元気の元にする・・。サッカーには、「文化」として語り合えるだけのコンテンツが詰め込まれているのです。とにかく日本も、徐々にフットボールネーションの本格感が備わってきていると感じているのは湯浅だけじゃないに違いありません。その意味でも、今回のコンフェデレーションズカップのコノテーション(言外に含蓄される意味)を体感できたことは、この上もない幸運でした。
私はこれから、まだドイツで何人かのサッカー関係者と会った後、アメリカ&カナダ経由で帰国する予定です。「J再開」の初日には間に合わないかもしれないけれど、とにかく帰国したら、前述のコンフェデ・コノテーションを基盤に、今度は国内リーグをとことん楽しむぞとモティベーションがアップしている湯浅でした。ではまた・・