でもその後は、たまっている原稿に取りかからなければならず、スタジアムに併設されたメディアセンターで(そこでしか十分なインターネット環境が得られない!)ちょっと忙しい気分にさせられていた湯浅だったのです。そして今、スタンドの記者席でインターネットにつなぎ、U20大会において日本がグループ二位抜けで決勝トーナメントに進出したことを知りました。ベナン、日本、そしてオーストラリアが「勝ち点2」で並び、互いに引き分けただけではなく得失点差も同じだったことで(勝ち点が同じ場合は、当該チーム道の対戦結果がまず考慮されるんじゃなかったですかネ・・?)、総得点がもっとも多かった大熊ジャパンが二位になったという次第。それにしても珍しいケースじゃありませんか、勝ち点2ですからネ。まあ、あまり誉められたものじゃないけれど、とにかくやっとツキに恵まれはじめた大熊ジャパンというわけです。このツキを、今度は大きく花咲かせなければいけません。頑張れ大熊ジャパン!!
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さてドイツ対チュニジア。ドイツの先発では、オリバー・カーンとイェンス・レーマン、ベルント・シュナイダーとダイスラー、そしてクラーニーとアザモアがそれぞれ入れ替わりました。要は(フィールドプレイヤーに限れば・・)、先日のオーストラリア戦で、良い展開になった後半に主役だったメンバー構成でのスタートということです。特にダイスラーは、先日のゲームでは、一発ドリブル勝負がよみがえりましたからネ。良いイメージを維持・発展させようというユルゲン・クリンズマンの意図なんでしょう。なかなかのマネージメント手腕だと捉えている湯浅なのです。
何せダイスラーのキャパシティーは折り紙つきですからネ。あとは自信を取り戻すだけというわけです。私も、たぶんクリンズマンも、数年前の彼のスーパープレーが脳裏に焼き付いて離れない・・?! もちろん、そんな強烈なイメージが、ベンチの判断を狂わせるというケースも多いから危険だけれど、ダイスラーの場合は、チャンスを与えつづけることに実効ある意味がありそうです。なかなか期待できるスターティングメンバーじゃありませんか。
ということで、さて気合いを入れて観戦するぞ・・なんて思っていたら、私の隣の席に、見たことがある顔が座りました。元コロンビア代表監督のマツラナさん。ビックリして思わず話しかけ、握手までしてしまいましたよ。何せ、彼が座るときに目が合い、微笑みを交わしたから挨拶せざるを得ない。「この試合は、アナタが率いていた頃のコロンビア代表が、1990年ワールドカップでドイツと対戦したときと同じような構図になるかもしれないと思うんですが、どうですか? パワーで押し込もうとするドイツのエネルギーを、上手さでかわすようなスマートなサッカーを展開する・・?」。マツラナさんは、あまり英語が上手ではなく、深いところまでは会話が弾まなかったけれど、私の質問は理解していただいたようだけれど、反応は、「どうかな〜」と両手を広げてウインクというものでした。でも、もちろん内心では、「そうそう、そんな展開になるはずだよ」なんて思っているに違いない・・なんてネ・・。
さて試合。思った通り、プレッシャーサッカーを志向するドイツのダイナミズムが、チュニジアの上手さに空回りするという展開になります。ガンガンと前から協力プレッシャーを掛けていっても、簡単にそのボール奪取プレスの輪を外されて逆サイドへ展開されたり、タテへのパスを通されて攻め込まれてしまうんですからネ。観ているドイツ人のフラストレーションは最高潮に達しちゃう?! でも私は、そんな展開を見ながら、隣のマツラナさんと微笑みあったりして・・。「やっぱり、当時と同じ展開になったじゃありませんか・・もちろんアナタのチームの方が、一まわりも二まわりも優れていましたけれどね・・とにかく当時のコロンビア代表は、伝説のチームだから・・」なんてネ。いや、本当にその発言は、私の正直なところなのですよ。そのときのマツラナさんの満足した微笑み。皆さんにお見せできなくて残念至極です。
さて、フラストレーションが天井知らずといったドイツ代表。先発では、ダイスラーは良いけれど、どうもアザモアが機能していない・・。プレーが中途半端だから、どうしてもミスばかりが目立ってしまう。ドリブルで勝負しなかければならない状況なのにパスを探したり、逆にパスをしてフリーランをつづけた方がチャンスが広がるのに、自分からスペースを潰すルートへドリブル突破をはかったり・・またパスをするにしても、パスを狙ってるという態度があからさまだから、そのパスコースを読まれてカットされ、危険なカウンターを食らったり・・。
そんな寸詰まりの展開がつづいているなか、ユルゲン・クリンズマンが決定的な仕事をするのです。ゲームの展開を逆流させたといっても過言ではない素晴らしいタイミングと内容の選手交代。ということで、このコラムのテーマは、選手交代がもたらす刺激と、プレーイメージの活性化・・ってなことになりそうです。何せ、それまで停滞し切っていたドイツの攻撃が、アザモアに代わってクラーニーが入り、ヒッツルスペルガーに代わってベルント・シュナイダーが入ったことで、急に活気づいたんですからネ。要は、その後退の後、ボールがないところでの動きの量と質が、格段に高揚したということです。やはりドイツサッカーの基本は「組織パスプレー」。それがうまく回ってはじめて個のチカラも活かされるというわけです。
ボールがないところでの動きが活性化することで、ボールホルダーのオプションが増えるばかりか、スペースも作り出されることで、ボールなしのプレーの可能性も格段に増えるというわけです。やはりサッカーは、ボールと人が、有機的に連鎖しあうボールゲームということです。その「動きの量と質」がサッカーのクオリティーを決定してしまうといっても過言ではない。でも逆に、一つでも、前述した組織プレーファクターが停滞したら、全体の流れがすぐにでも阻害されてしまう。サッカーは、奥の深い、限りなく自由なチームゲームなのですよ。だからこそ人々の心を掴んでやまない・・。
その後、選手交代で活性化したドイツ代表が3ゴールをたたき込んだわけですが、その展開を観ながらマツラナさんが、「チュニジアは頑張ったけれど、急に守備が乱れちゃった・・肝心なところでマークが甘くなったよね・・やはりアフリカチームは世界を相手に勝ち抜くのはまだ難しいということなのかな・・」と言い、それに対して私が、「そう・・だからこそ、あの当時のコロンビア代表が伝説になるんですよ・・サッカーの魅力は、何といっても個人のテクニックですからね。テクニックに秀でたチームが勝負にも強ければ、確実に伝説になりますよネ・・」なんてことを言う。そして互いに微笑みあいながら、また来年のワールドカップでお会いしましょうなんて固い握手を交わしていた湯浅とマツラナさんでした。
それにしてもドイツ代表のフリングス。素晴らしい「クリエイティブな汗かきプレイヤー」じゃありませんか。また後方からのオーバーラップ(バラックとのタテのポジションチェンジ)にも素晴らしい鋭さがある。今更ながら感心しきりの湯浅でした。何度彼が、全力でボール奪取ポイントへ急行してピンチを救ったことか。そんな彼がいるからこそミヒャエル・バラックやシュヴァインシュタイガーといったアタッキング・ミッドフィールダーが活躍できる・・。彼のプレーを観るだけでも入場料にオツリがくるというものです。トルステン・フリングス。これからも注目しましょう。いまメディアセンター内のテレビでは、アルゼンチンが2-0でリードしている状況を映し出しています。いまから、来週火曜日のドイツとアルゼンチンの激突が楽しみで仕方ない湯浅でした。乱筆・乱文・誤字・脱字・・失礼!