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良い、良い。攻守にわたる勝負所への絡み方が素晴らしい。もちろんベースは、攻守にわたって常に実効シーンに絡んでいこうとするプレーイメージの描写と、それに支えられた効果的な動きの量と質。たしかに中村俊輔自身が言うように、コンディションはまだ万全ではなさそうだけれど、それでも、ボールがないところで動きつづけながら、攻守の勝負所に絡みつづけようとする意志は「ダイナミック」そのものです。
攻撃では、ズバッという「緩急をつけたパスレシーブの動き」がいい。そしてシンプルに攻撃的な展開パスをまわし、間髪を入れずに次のボールなしアクションに入っていく。要は、パス&ムーブが素早く効果的だということだけれど、そんな忠実な組織プレーがしっかりとしているからこそ、味方も彼を信頼し、ボールを俊輔へ集めようとするのですよ。「ヤツにボールを預けておけば、確実なトラップで組み立ての起点になってくれるから安心だ・・またパスも、分かりやすいタイミングで出されるからスペースへ動きやすい・・それに、パスをした後すぐに次のパスレシーブの動きに入ってくれるから、オレたちのプレーのオプションも広げてくれる・・もちろん個人勝負プレーにも抜群のキレがあるから、彼がボールを持ったときの期待値は高い・・ナカムラは、良いプレーヤーだし、オレたちにとってプラスになる選手だ・・」なんていう味方選手達の評価が聞こえてくるようです。
そして、そんな組織プレーをベースに、タメからのスルーパスやドリブルなど、抜群に実効レベルの高い個のエスプリプレーを繰り出していく中村。試合後は、あまり満足そうなコメントはしていなかったけれど、内心ではポジティブマインドにあふれていたに違いない・・!? 何せ、自分自身のイメージ通りにボールに絡みながら勝負のコンビネーションをリードするだけじゃなく、1対1の場面では、効果的な「個のエスプリ勝負」まで披露しちゃうんだからネ。あっ・・また繰り返しになってしまった・・ゴメン・・。
ちょっとハナシが前後しちゃうけれど、そんな効果的な攻撃プレーを支える大前提がディフェンスにあったことは言うまでありません。この試合でも中村は、常に守備からプレーに入っていったということです。それもまた味方から信頼されるための基盤。ボールがないところでの忠実&クリエイティブなマーキングプレーは言うまでもなく、前線からのチェイス&チェックアクションや協力プレスアクションにも明確な意志が感じられます。彼のディフェンスコンテンツは高みで安定してきていると感じます。相手からボールを奪い返すプレーの魅力に「も」目覚めはじめたということなんでしょうネ。
わたしは、中村が展開する、ボール絡みとボールなしのプレーコンテンツ(プレーイメージ&プレー意志)に目を凝らしつづけていました。そして、そのプレー姿勢を頼もしく思い、中村がコアになったアイデンティティー(誇り)が高揚したものです。彼は、攻守にわたって間断なく仕事を探しつづけている・・たしかにボールなしの動きが緩くなった時間帯もあったけれど、意志が込められたプレーコンテンツは、コンディションが上がってくるにしたがって大きく高揚するに違いないと確信させてくれるほど「充実」したものだった・・もちろんこれから、ブリティッシュの激しい当たり(厳しいマークと集中ディフェンス!)と対峙しなければならないだろうけれど、サッカーでは、バランスが崩れた体勢から力ずくで相手のプレーを阻止するようなディフェンスプレーのほとんどは反則になるし、そんな強い当たりにはイタリアで慣れているから問題ないだろう・・実効ある(自分主体の意志が込められた=自己主張バリバリの)守備プレーをベースに、シンプル組織プレーと活発なボールなしのパスレシーブアクション、そして効果的な個の勝負プレーを繰り出していく中村・・とにかく、天才が、良いカタチでたくさんボールに触れば良いプレーができるのは道理だと感じる・・もちろん良いカタチで多くボールに触るという現象には「深い背景」があることは常々書いている通りだけれど・・ということで、中村が交代するときにスタンドから贈られた「スタンディングオベーション」は、確実に彼自身のプレーコンテンツが勝ち取ったものだった・・。
ところで中村の「シンプルプレー」。典型的なシーンはこんな感じかな・・。中村が、ズバッとパスレシーブアクションをスタートする・・もちろん相手マーカーが背後からピタリとプレッシャーをかけている・・そこへ味方からの強い足許パスが飛ぶ・・そして次の瞬間、フェザーのような柔軟なタッチで、クリエイティブで正確なダイレクトパスを決めてしまう・・それも、後方からのズバッというパスを、自分の背後の味方へ向けて、正確でソフトなパスにしてしまうという「驚きシンプルプレー」だから堪えられない・・観客席から「オ〜〜ッ」という溜息が聞こえてくるのも道理・・さすがにフットボールネーション・・観客は、あの状況で中村のプレーを予測していたけれど、それが見事に、そしてポジティブに裏切られたということ・・それに対する感嘆は大きい・・。そんな、(攻守にわたる忠実なプレーをベースにした)クリエイティブな組織シンプルプレーは、深いサッカーファンならば誰でも好きだよね。
この日の俊輔は決してベストコンディションというわけじゃなかったけれど、その高質なプレー意志(プレーイメージ)に舌鼓を打っていた湯浅でした。その他の彼のプレーについては、ジーコジャパン・コラムでも書きましたので・・。
もちろん力ずくで(暴力的に)クリエイティブプレーが抑え込まれてしまうというゲームもあるでしょう。そんな逆境を、俊輔がどのようにクリアしていくのか・・。とにかく興味は尽きません。また、中田英寿がイングランドのボルトンへ移籍するというハナシもあると聞きます。ということで今シーズンは、ブリティッシュ・プレミアリーグに釘付けになるのかな・・。