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2005・・「J1」第21節グランパス戦のレッズと中村俊輔という変な取り合わせのショートコメント・・(2005年8月29日、月曜日)

監督の意識付け・・!? まあ、そういうことなんでしょう。グランパス戦のレッズは、数日前のヴィッセル戦とは、まったく違うチームになりました。その背景要因は、言わずと知れたダイナミック守備。最前線のマリッチや永井から「相手の仕掛けイメージの抑制ディフェンス」がはじまり(もちろん最前線からのチェイス&チェックのこと!)、中盤の長谷部・鈴木・山田・平川カルテットと最終ラインがボール奪取勝負のネットを張りめぐらせるというわけです。それにしても、ダイナミックな守備。まさに、有機的なディフェンスプレー連鎖の集合体といったところ。

 くり返すまでもなく、サッカーの絶対的な基盤はディフェンス。そこで蓄積された、選手たちの「成功体感」が、次の攻撃での心理パワーを増幅するというわけです。良い守備ができているからこそ、次の攻撃の実効レベルが上がる。ガンガン中盤でボールを奪い返したレッズ選手たちが、まさに後ろ髪を引かれることなく決定的スペースへ上がりつづけていく・・もちろん、次の守備における味方の「汗かき実効ディフェンス」に対する信頼をベースに・・。ホンモノの守備意識。この日のレッズは、その権化でした。だからこそ素晴らしく効果的な仕掛けを継続的に繰り出せたということです。

 マリッチ・・。よくなっています。彼もまた最前線からのアクティブ守備(意識)をベースに調子を上げています。クロアチア代表とはいっても、生まれも育ちもドイツだから、実質的にはドイツ人。彼の意識の根底には、質実剛健なドイツマインドがある。要は、プロ選手としての真摯なプレー姿勢のこと。そのプレー姿勢をみていると、プロ選手としてのアイデンティティー(矜恃・プライド)を高揚させるための闘い・・なんていう表現がアタマをよぎるのです。たしかに、グラウンド上の実効レベルはまだまだ。でも、これからの完全復活を期待し、応援したくなるプレー姿勢じゃありませんか。

 長谷部・・。若大将はやっぱりいいね。彼が不在だったヴィッセル戦とグランパス戦の対比によって、彼のチーム内での「実質的な実効価値」が再認識されたことでしょう。もちろん彼が自分自身のパフォーマンスを鼻に掛け、「チーム内の心理バランス」が崩れるくらい高慢な態度に出たら、確実にチーム内の心理的フォームに悪影響を及ぼすだろうけれど、まあ彼のことだから、そんな低次元の自己主張なんかではなく、あくまでもクールに「限界まで」闘う姿勢を貫くでことしょう。

 ポンテ・・。このクリエイティブリーダーは、魅せてくれる。徐々にディフェンス貢献度も上がっているし、ボールがないところでのアクションの量と質も上がっている。それにしても上手いよね。彼がボールを持つことが楽しみになります。彼の存在は、長谷部にとっても大いなる刺激になっていることでしょう。

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 さて中村俊輔。この試合での彼のキーワードは「ガマンの子」といったところかな。先週のレンジャース戦では、ほとんどの攻撃が彼の「アタマ越え」だったけれど、この試合でもその傾向がつづいていました。どうもセルティックの選手たちは、中盤に存在する「中村という創造性」をうまく活用しようとするイメージではなく、とにかく前へ!・・という意識が強すぎる・・というか、これが彼らのスタイルなんでしょう。とにかく、仕掛けられるところは直線的に仕掛けていくセルティック選手たち・・。

 デビューした二試合では、落ち着いた組み立てシーンもあったのに、どうしたのだろう・・。まあ、そんな猪突猛進のチームメイトたちの意識を自分に向けさせるプロセスもまた、中村俊輔にとっての大いなるチャレンジということです。

 そんな俊輔チャレンジのコンテンツ自体は、充実していましたよ。積極的なチェイス&チェックだけではなく、次のボール奪取勝負にもうまく絡んでいく・・それだけじゃなく、巧みなテクニックで何度もボールを奪い返してしまう・・中村の「守備での読み」は素晴らしいレベルにある・・もちろんスピードやパワーをぶつけられた吹っ飛んじゃうけれど、サッカーのプレーには、相手のパワーを利用するという特色もあるから・・そしてボールを奪い返した後は、しっかりとボールがないところでのアクションをつづける中村・・スッ、スッとタイミングよく動いて相手マークを外し、良いカタチ(パスを受けた後すぐに振り向いて前へ向いて仕掛けていけるカタチ)でパスを受けられる状態になる・・でもパスが回されてくる頻度が低い・・左サイドバックのカマラが、前に相手二人もいるのに(すぐ横に中村がパスレシーブ状態にいるのに)猪突猛進のドリブル突破を仕掛けていく・・彼が潰された後、フ〜〜ッとため息をつきながら次のディフェンスに入っていく中村俊輔・・だからこそ、この試合での彼のキーワードは「ガマンの子」・・何度ムダになっても、守備やボールなしアクションの量と質は衰えない・・腐らず、クリエイティブなムダアクションを積み重ねていく中村俊輔・・素晴らしい・・そんな目立たない努力こそがチャレンジの本質・・。

 そしてこの試合では、そんな「目立たない忍耐」が報われるというわけです。前半の残り15分あたりから中村にボールが回りはじめるのですよ。まあ2-0でリードしているという心の余裕も出てきたということなんだろうけれど、中村がボールの動きをマネージすることでボールの「動きコンテンツ」が良くなってきていることを仲間も感覚的に理解しはじめ、中村を中心とする組み立ての善循環サイクルが回りはじめたのですよ。そして中村の決定的シュートシーンが追い打ちをかける・・。結局ソレが、後半の初ゴールにつながるのだけれど、そのシュートへ至るまでのボールがないところでの動きの距離とタイミング、スピードなどは、とにかく称賛に値します。その後は、善循環サイクルの量と質が大きな深まりを魅せるのです。

 中村俊輔のスコットランド移籍。ちょっと最初は「?マーク」だったけれど、パワーとスピードをマネージするコントローラーという役割が「確立しはじめた」ことを考えると、これは中村にとって本当の意味での学習機会になるだろうな・・なんて感じはじめましたよ。もちろん、パワーとスピードサッカーに、中村俊輔という「ひと味違う創造的なサッカーコンテンツを付け加えていくこと」に対するチャレンジのことですよ。今後が楽しみになってきました。

 



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