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ジーコジャパン(54)・・なかなか内容は良かったのに・・ちょっと元気を殺がれてしまった・・(イランvs日本、2-1)・・(2005年3月25日、金曜日)

フ〜〜ッ・・まあ仕方ない・・次だ、次だ・・。

 この試合でもっとも残念だったことは、日本代表が、勝ち越しゴールを入れられた後の時間帯(特に残り10分になったあたり)で、相手守備ブロックを押し込んでいくだけの勢いを絞り出すことができなかったことです。チーム戦術とか、そういうロジックとは別物の、勝つための闘う意志のチカラ・・。それが明確に感じられなかったことが一番残念でした。全体としては、地域予選という視点では優れたサッカーをやっていたのに・・。

 もしその吹っ切れた闘う意志のチカラがあったならば、それは、中盤での守備コンテンツとしてグラウンド上に現出してくるでしょう。相手の展開を先読みしたチェイス&チェック・・次のパスをターゲットにした全力でのボール奪取勝負の仕掛けや、ドリブルする相手に対する全力での協力プレス・・等々。そんな主体的な積極ディフェンスイメージさえ連鎖しはじめれば、必ず、次の攻撃におけるボールがないところでの動きが活性化し、組織プレーにも確固たるリズムが乗ってくるものです。同点にしなければならないという厳しい状況だからこそ、ディフェンスなのですよ。相手からボールを奪い返す守備・・相手の攻めにキッカケさえ与えないダイナミックなディフェンス・・。それこそが、心理パワーを爆発的にアップさせるための唯一のエネルギー源泉なのです。

 もちろんディフェンスを活性化させるためには、とにかくまずボールを追いかけ回さなければならない。そんな「動的なディフェンスの起点」を前線から演出していかなければならないわけですが、それが見えはじめさえすれば、自然と周りの守備プレーも有機的に連鎖しはじめるものです。効果的な「守備の起点」によって、次のボール奪取勝負シーンが具体的に見えはじめてきますからネ。しかし一点を追いかける最後の時間帯でも、そんな「実効ディフェンスの輪」が広がることはありませんでした。

 特に交代して入った選手たちの、ボールがないところでのディフェンス姿勢に、かなりガッカリしていた湯浅だったのです。どうしてフレッシュな選手たちは、もっともっとボールを追いかけ回ないんだ!! 最後の時間帯で中盤の底に入った中田ヒデの方が、二倍も三倍もボールがないところで走りまくっていた(必死に仕事を探しまくっていた)じゃないか・・。

 まあ、そんな最後の時間帯を除けば、この試合で日本代表が展開したサッカーは、全体的には、勝負を明確に意識したハイレベルなものだったというのが私の評価です。互いのポジショニングをうまくバランスさせる守備ブロック・・イランが「個の勝負」を主体に攻め上がってくることを明確にイメージした、相手の仕掛けプレーのスピードダウンとタイミングの良い協力プレス・・そしてボールを奪い返してからの、組織プレーを主体にした攻め・・ただいかんせん、最終勝負を効果的に仕掛けていく上で必要な「変化」に欠けていた・・たしかに、大いなる可能性を感じさせてくれた時間帯も多かったけれど・・要は、パス主体の仕掛けはいいけれど、それに個の勝負をうまくミックスしていけない(ドリブル勝負やタメの演出がままならなかった)ということ・・。

 イランの攻めは、まさにイメージ通りに「個のドリブル勝負」が主体。だから日本代表の守備ブロックがウラを突かれるシーンはほとんどといっていいほどなかったし、組織的に守備ブロックが振り回されるといった状況もなかった・・。そんな攻撃に対してイランの守備は、日本の組織パスプレーをしっかりとイメージしたハイレベルなものでした。たぶん彼らは、日本の攻めを徹底的にイメージトレーニングしていたに違いない(もちろんイバンコビッチ監督の手腕!)。とにかくボールがないところでの守備が素晴らしく徹底していたと感じました。だから日本は、イランにパスをカットされる頻度が高かった・・そのことで、日本選手たちのパスレシーブの動きが沈滞し、もっと頻繁にパスレシーブポイントを狙われる・・。だからこそ、攻めのアクセント(変化)としてのドリブルが必要だったのですよ。突破ドリブルではなくても、とにかく相手守備プレーの逆を取るような変化が・・。また、変化と言えば、もっともっと中距離からのシュートにもトライしなけば・・なんてことも思っていました。小野の中距離シュートが出たときには、思わず「それだ!」なんて声が出た。とにかく日本の攻めには、何らかの変化が必要だったのです。でも結局は・・

 それにしても、改めて、イラン選手たちの個人的な能力の高さを見直していました。スピードやパワー、テクニックが素晴らしいだけではなく、ヘディングも強いし、守備での競り合いでも抜群の強さと上手さをみせつける。もちろん、そんな高い個人能力はヤツらの両刃の剣なのだけれど、この試合のようにカッチリと守備を固め、攻撃では「それ」を徹底して繰り出しつづけるのだから、それはそれで(仕掛けプロセスにおいて互いのイメージがうまくシンクロした!)勝負強いサッカーになるはずだ・・。それに対して日本は、攻守にわたる優れた組織プレーで対抗するのだけれど、いかんせん変化が・・。

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 どうも発想が広がらない・・どうもサッカー内容に深く入り込んでいけない・・どうも個々の選手のプレーを明確に評価するところまで確信レベルを高揚させられない・・。そんな歯切れの悪さの背景に、諸般の事情で今回はどうしてもイランへ行くことができなかったこと、そして日本代表が惜敗してしまったことがあるのは言うまでもありません。

 とにかく、ゲーム戦術的にクレバーなサッカー内容だったことで、少なくとも引き分けをイメージしはじめたタイミングで勝ち越しゴールを入れられただけではなく、その後の吹っ切れた闘う意志に対する期待が肩すかしを食らったことで、ちょっと元気を殺がれてしまったという体たらく・・でした。

 イカン、イカン!! これこそが待ちに待った血わき肉おどるホンモノのドラマじゃないか・・本大会は、ある意味お祭りだけれど、「W杯地域予選」は違う・・そこには本物の肉を切らせて骨を断つ闘いがある・・その地域予選のドラマはこれからが本番なんだ・・とにかく、自分自身の学習機会としても、とことん入り込んで楽しむゾ!!

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 ところでこの度、ケータイでもコラムを連載することになりました。ブンデスリーガ公式ムービー、「湯浅健二の独壇場」です。URLはこちら→http://i.bundesliga.jp。PCのプロモーションページはこちら→http://www.bundesliga.jp/

 また、4月から「BS Japan」で放送がはじまる「サッカーTVワイド」では、Jリーグ監督とのインタビューを担当することになりました。この番組の放送日は、毎週木曜日の2100時〜2254時。また翌週の金曜日の深夜には再放送される予定です。最初のゲストは、浦和レッズ監督のギド・ブッフヴァルト。さて、どうなることやら・・

 



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