たしかにレッズ戦の終盤やこの試合の後半のように、集中力が部分的に途切れてしまうといったネガティブな時間帯もあるけれど(この試合では、4-0というリードも彼らの緊張感を緩めた?!)、全体としては、なかなかの高質サッカーを展開しているフロンターレなのです。二部から昇格してきた新参者とはいっても、決して侮るべからず・・。
そのもっとも重要なバックボーンは、何といっても、堅牢な守備ブロック。ここで誤解を避けるために一言。彼らの場合は、決して、人数をかけて分厚い守備ブロックを形成し、受け身の安全・確実ディフェンスをイメージしているというわけではありません。そうではなく、高い「主体的な守備意識」をベースにしたクリエイティブ&ダイナミック守備プレーを志向しているのです。だからこそ、次の攻撃にも勢いが乗る・・。
基本は、前後左右の相互ポジショニングをうまくバランスさせるという、ポジショニングバランス・オリエンテッドな組織作り・・それをベースに、勝負所では、確信に満ちた組織ブレイク(ポジショニングバランスから相手を見るマンマークへ移行しボール奪取勝負を仕掛けるディフェンスプレー)をタイミング良く繰り出していく・・そこでは、ボールへのチェイス&チェック、周りのインターセプトアクション、周りでの相手に動きを素早く、正確に、忠実に抑制するマーキングアクション等々が見事なハーモニーを奏でる・・まさに、有機的なプレー連鎖の集合体といった守備ブロック・・。
とにかく選手全員が、本当に忠実にディフェンスに参加しつづけるフロンターレなのです。勝負所では、組織ブレイクによって自然と決まってくる相手を確実にマークしつづける・・決して最後までマークを離すことはない・・だから守備ブロック内での「タテのポジションチェンジ」も日常茶飯事・・もちろんそれは、二列目からタテの決定的スペースへ走り抜けようとする相手に対する、忠実で確実な粘着マーキングを意味する・・ってな具合なのです。そんなだから、ヴェルディー選手たちも、まったくといっていいほど決定的スペースを活用できない。まあ、その背景要因では、ヴェルディーの自業自得という意味合いも強いですがね。
とにかく前半のヴェルディーのサッカーは見るに耐えられるシロモノじゃありませんでした。人が動かず、ボールだけが味方の足許から足許へ動くだけ・・。それでは、次のパスをフロンターレ守備ブロックに読まれ、効果的なボール奪取勝負を仕掛けられてしまうのも道理じゃありませんか。案の定、スパッ、スパッと「高い位置」でボールを奪い返され、つづけざまに効果的なカウンター攻撃を食らってしまうヴェルディーなのですよ。
一体ナニをやっているんだ・・人とボールがよく動くクリエイティブサッカーが聞いて呆れる・・相手がキッチリとしたマンマークや協力プレス守備網を敷いてくるのは分かっているはず・・どうしてもっと(好調時には連続して繰り出せていた)相手守備ブロックを攪乱するような人の動き(=パスを呼び込む動き!)が出てこないかな・・そうか・・その原因の一つには、林健太郎と小林慶行が前方での仕掛けに絡み過ぎているということもありそうだな・・
・・昨シーズン、ヴェルディーの調子がよかったときのヤツらは、後方からのデバイダー(正確なパスの供給者≒後方のゲームメイカー)として機能するなど、攻守にわたって後方からのバックアッププレーに徹していた・・だからこそ小林大悟や平本一樹といった若手のダイナミックプレーが大きく活性化された・・でも、チームの調子が最高潮に達した頃から、またまた後方から「ちょっかい」を出し過ぎる傾向が強くなりはじめた・・ヤツらは天才肌のボールプレーヤー・・ヤツらがボールを持ってこねくりはじめたら、どうしても若手は遠慮がちになり、仕掛けのリズムも、ヤツらがイメージする緩いペースになってしまうし、足許パス(ポゼッションパス)ばかりが増えてしまう・・。
それだけではなく、守備でもいい加減さが目立っています。ゼロックススーパーサッカーレポートでも書いたけれど、この試合でも、フロンターレ選手たちが繰り出すボールがないところでのタテへの動き(決定的なパスレシーブフリーランニング!)に対するマークがいい加減の極みなのです。たぶん彼らは、決定的な場面での「縦方向のマークの受けわたし」やパスカットをイメージしているのでしょう。でもネ、そんなプレーは、イタリアの天才ディフェンダーたちにとっても難しいことこの上ないのですよ。
平野孝や小林慶行にしても、小林大悟にしても、はたまた山田や相馬まで・・。とにかくイージーに相手を「行かせ」すぎ。そんないい加減なディフェンスもまた、前半に連続的にブチ込まれた4失点の大きな原因でした。そんなヴェルディーに対して、フロンターレ守備ブロックには、創造性と忠実さがうまくミックスした確信がある。
私はヴェルディーを、リーグ優勝候補の一角だと高く評価していました。オジー・アルディレスの効果的なトレーニングによって、「タッチ&パス&ムーブ」というプレーリズム(プレーイメージ)が活性化し、人とボールが効果的に動きはじめたヴェルディー。選手たちの基本的な質はリーグ有数だから、そんなシンプルな組織プレーさえしっかりと回りはじめれば鬼に金棒だと思っていたわけです。組織プレーさえしっかりと機能しはじめれば、自然と彼ら本来の「優れた個の勝負能力」も実効あるカタチでミックスされてくるでしょうしね。シーズンがはじまる前は、オジーの確かなウデも含め、そんな期待が高まったものなのです。それが、ここにきて、「再び」リズムを崩しはじめてしまう・・。
もっと効率的なサッカーをやろうゼ・・等々、徐々に選手たちの意識が「元に戻りはじめている」ということなのでしょうか。昨シーズンのセカンドステージで彼らのサッカーが良くなったのは、攻守にわたる「クリエイティブなムダ走り」がうまく回りはじめたからに他なりません。そのことをいま一度、思い出して欲しいと切に願っている湯浅なのです。何せ、サッカーはホンモノのチームゲームですからね、一度タガが外れたら、それを元に戻すためには大変な労力が必要になるのです。人間は、できるだけ楽をして金儲けしたいと思うもの・・だからこそ、サッカーが本物のチームゲームであるという事実も含め、一度でもタガが外れたら、そりゃ大変なことに・・。
もう一つ、「タッチ&パス&ムーブ」というプレーリズムが減退しはじめた背景に、新加入のワシントンという存在もありそうだ・・。彼はちょっとボールをこねくり回し過ぎ。またボールがないところでの動きも緩慢。もっと動き、シンプルなリズムでの展開パスを出すという意識を明確にしなければ、いくら優れたストライカーとはいっても、全体的には「最前線のフタ」という存在に成り下がってしまう可能性も・・。
まあとにかく、いまのヴェルディーのサッカー内容が下降傾向にあることは疑いのない事実だと思います。ボール扱いに長けたベテランと、ある部分では傑出した能力を発揮する新加入の外国人選手をいかにうまくマネージ(説得)し、チームコンセプト(オジーがイメージするサッカー)にインテグレートして(組み込んで)いくのか・・。オジー・アルディレスのウデに期待しましょう。
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ヴィッセル対レッズについても軽くコメントを・・。この試合では、とにかくレッズが決定的チャンスを潰しつづけたという印象ばかりが残りました。それも、相手守備ブロックを崩し切るというハイレベルなチャンスメイクにもかかわらず。組織パスプレーが活性化しているだけではなく、それをベースに、田中達也やエメルソン、山田暢久や長谷部(酒井)、はたまた両サイド(平川・アレックス)たちが、タイミングの良い危険な個の勝負を繰り出していく。次の発展にとっての唯一のリソースであるリスクチャレンジ。観ていてワクワクさせられましたよ。でも決まらない・・決められない・・。レッズのベンチが焦れるのも無理はない。
このテーマについては、このところ何度も取り上げています。決定的チャンスをゴールに結びつける感覚的な能力・・?! 今度、誰かと「The 対談」をしてみましょうかネ。私にとっても大変興味あるテーマですから・・。
試合ですが、前述したように、やはりレッズの方が明らかに地力で優る。その圧倒的なチャンスメイクパワーを支える基盤は、言うまでもなく主体的な守備意識。常に「ワン・ツー・スリー」といった小気味よいリズムで、次、その次と、ボール奪取アタックがリンクしつづけるのですよ。もちろんそれは、相手ボールホルダーのアクションがしっかりと抑えられているだけではなく、ボールがないところでの守備イメージの描写能力にも磨きがかかっていることの証というわけです。またこの試合では、アレックスも、(ボール絡みシーンでの)圧倒的な競り合いパワーだけではなく、ボールなし状況でのクリエイティブ守備を見せつけていましたよ。もちろんまだまだ気抜けプレーもあるけれど、やっと彼の意識(攻守にわたって主体的に仕事を探しつづける姿勢)も上昇基調に乗ったのかもしれないと期待が高まったものです。また、エメルソンや田中達也の調子も上向きになっているようだし、さてこれからだな・・。