鈴木啓太ですが、後半の36分あたりにヴィッセルが繰り出した危険なカウンターでは、これまで彼が魅せつづけた忠実なダイナミックプレーを象徴するような、まさにスーパーなディフェンス勝負を魅せました。最後の最後までタイミングをはかりながら基本マークポジションを維持し、タテパスが出された最後のシュートの瞬間にスパッと身体を寄せてシュートをブロックする・・。いやホント、啓太が魅せつづける攻守にわたる目立たない忠実プレーに対し、心からのレスペクトを!!ってな具合です。また、このディフェンスシーンと相前後するように、後方から飛び出してフリーシュートを放つ(後方からの飛び出しというタテのポジションチェンジをベースにした完璧なゴールチャンス!)なんていうシーンも彼自らが演出しましたからネ。とにかく、彼の攻守にわたる実効プレーには心からの拍手を惜しまない湯浅なのです。
さてレッズのサッカー。ナビスコの前節では、チーム戦術のオプションが広がりつつあると書いたわけですが、この試合でも、その印象は変わりません。まあ、その広がりを維持するためには、たまには山田暢久や長谷部誠を二列目のセンターに据えることも必要になってくるでしょうがネ。このゲームでは、たしかに全体的なダイナミズムが減退して足が止まってしまうという緩慢な時間帯もあったけれど、全体的には、うまく組織と個の勝負プレーがバランスしていたとすることができそうです。
この組織と個のバランスですが、それを「ある壁」を突き破っていくくらい発展させるためのベースファクターとしては、やはり「個人の能力」の方が先行しますかネ。何せ、組織パスプレー(活発な人とボールの動き)を基盤にした攻撃は、イメージさえしっかりと持てればある程度のレベルまでは到達するけれど、もし十分な個のチカラが備わっていない場合、仕掛けの変化を演出するという視点では、どうしても停滞気味になってしまうでしょうからね。その意味でレッズには、十分に個で打開していくチカラが備わっているし、ギド・ブッフヴァルト監督も組織プレーと個人勝負プレーの両方をしっかりと見つめていることで、レベルを超えて発展していけるだけのキャパシティーには、どのチームよりも高いモノがある・・?! わたしはそう信じていますよ。だからこそ、その発展プロセスを心の底から楽しめるというわけです。
個のチカラの筆頭はもちろんエメルソンだけれど、彼に対するマークは天文学的にキビシイから、逆に彼へのマークを逆手にとるように、周りの味方が仕掛けていく・・。この試合では、永井や田中だけではなく、後半には、長谷部や鈴木啓太までも後方からのドリブル突破にチャレンジしていました。そんな「エスプリの効いた変化」があるからこそ、組織パスプレーにも冴えが出てくるというわけです。決勝ゴールシーンでの、長谷部から岡野へのスルーパスとか・・そこからのファーポストゾーンへのクロスとか・・。あっと、この試合では、永井雄一郎も、パサーとしての秀でた能力を魅せていましたよ。彼にしても、ドリブル突破があるからこそ、スルーパスという変化プレーの実効レベルが高まるというわけです。また永井のディフェンスですが、ようやく彼も「その楽しさ・面白さ」を思いだしつつあるのかな・・なんていうことを実感させられる守備シーンを何度も目撃しましたよ。何せ、ボール奪取勝負に入っていくときやチェイシングのときのダッシュの勢いが、それまでとは全く違いましたからネ。全力ダッシュの量と質にこそ、その選手の攻守にわたるプレー意図(プレーコンテンツ)のクオリティーが表現される・・。
それにしてもヴィッセルのイメチェンは素晴らしい。レオンのウデを感じます。チーム内に、本当の意味での「規律」という背骨ができつつあると感じるのです。現象的には、攻守にわたってボールのないところで無為な様子見に入ってしまうなど中途半端な「気抜けプレー」がまったくなくなったり、攻撃へもしっかりと人数を掛けていったり、それでも、戻りが早いから次の守備でバランスの崩れることがない・・。そんなクリエイティブな攻撃的プレー姿勢の相手と対峙するのはレッズにとって久しぶりのことです。それが背景にあったからこそ、エキサイティングな「積極的に仕掛け合う」という展開も多く観られたということです。レオンによってヴィッセルの「体質」が改善されつつある・・?! これからのヴィッセルの「変化」にも注目じゃありませんか。
--------------
さて最後に、ハンブルガーSVとの親善マッチ(5月31日の火曜日1900時、埼玉スタジアム)について。ファン・ブイテン、ブラルーズ、ヴィッキー、バルバレス、高原直泰、マハダビキア、ムペンザ等々、たしかに、主力である各国の代表選手たちは各国の代表チームに参加しています。とはいっても、そこは、ヨーロッパの名門クラブ。テーマを絞って観戦すれば、楽しめることこの上ないと思っている湯浅なのです。
明日の日曜日は、監督のトーマス・ドルと、BCジャパン「サッカーTVワイド」でシリーズ化している「監督との対談」を収録します。たぶんトーマス自身も、今回の日本遠征について重要なテーマを持ち込んでいるはず。明日の対談では、そのポイントも突っ込む予定です。わたしのHPで連載している「The 対談」でトーマス・ドルと歓談した内容は「こちら」を参照してください。
代表選手たちはいないとはいっても、チカラのある準クラスは目白押し。元ドイツ代表のバインリッヒ、チェコのヤロリーム、ナミビア代表のベンジャミン、ポルトガルのモレイラ、そして何といっても、今シーズンがはじまる前にバイエルン・ミュンヘンから移籍してきたトロホフスキー。また守備にも、シュリッケやラインハルトといった中堅のダイナミックディフェンダーも揃っています(二人とも190センチを超える巨漢ディフェンダー!)。相手にとって不足なし。そんな強者たちを相手に、浦和レッズがどのくらい彼らがイメージするサッカーを展開することができるか・・エメルソンや永井のドリブル突破は?・・長谷部のチャンスメイクは?・・鈴木啓太の中盤ディフェンスは?・・等々。とにかくお互いにとことん楽しみましょう。