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ゼロックススーパーカップ・・ヴェルディの「守備イメージの穴」が目立ってしまった・・ヴェルディ対マリノス(2-2、PK戦でヴェルディ勝利)・・(2005年2月26日、土曜日)

「アナタが言ったことは正しいと思うよ・・ところで、何て言ったんだっけ・・??」。その瞬間、私は爆笑っ!! たぶん、周りの記者たちも笑っていたとは思うけれど(もちろん様々なニュアンスを内包する「笑」?!)・・。

 それは、私の質問に対して一通りコメントを述べたオジーが放った最後の(ウイットにあふれた?!)一言でした。記者会見での私の質問は、こんな内容だったハズです。「今シーズンのヴェルディは、ワシントンも加入したし、いまやっているサッカーの内容的にも確実に優勝候補だと思う・・この試合での前半の出来も素晴らしかった・・ただ、リーグ優勝するためには問題もある・・オジーさんは、しっかりと守備が出来ていたと言っていたけれど、私はそう思っていない・・マリノスは、流れのなかでしっかりとチャンスを作り出せていた・・逆に言えば、ヴェルディ守備ブロックが崩されるというシーンの方が多かったということ・・それは、(中盤プレイヤーたちのマークが甘ということで!)二列目からの飛び出しをうまく抑えられていなかったから・・長いシーズンでリーグ優勝するためには守備をもっとしっかりとしなければならないと思うけれど、どうですか?・・質問が長くてスミマセン・・」。

 それに対してオジーが、開口一番「アナタの質問は、(いつものように!?)私の答えよりも長いよネ・・いまの質問、よく分からなかったからもう一度お願いします・・」なんて応酬する。アハハッ!

 まあ基本的にオジーは、私が聞きたかったことに直接答えるのではなく、こんな意味のことを羅列していました。「今シーズンのマリノスは既に我々よりも多くの実戦を経験している(A3のこと?!)・・たしかにマリノスの方がボールをキープできていた・・ただし、どちらの方が得点に近かったかという視点ではヴェルディの方がよかった・・ワシントンについては、確かにまだコンビネーションの精度を上げていかなければならない(イメージシンクロのレベル?!)・・勝つことによって自信を深められ、そのことで、自分たちが目指すサッカーに近づくことができる・・このゲームの分析は、月曜日に落ち着いてやることにする・・この週末は、とにかくセレブレーションだゼ!!」なんてネ。そしてその最後に冒頭の言葉をつなげたというわけです。

 このオジーの発言では、最後の「ゲーム分析は月曜日に落ち着いて・・」というクダリが大事だと思っていた湯浅です。基本的に彼は、「何を言ってやがる・・ウチの守備はうまく機能しているんだよ・・一体オマエはどこに目を付けているんだ・・」なんてことで、「冷静に」憤っていたのだろうけれど(もちろん、ディベートのキッカケになるような反論が私の質問の意図!)、最後は、ここで意見を戦わせるのではなく、とにかくビデオでのゲーム分析をしてからだ・・とまとめたところが、冒頭の「イヤミ」も含めて、素晴らしく冷静でインテリジェンスあふれる対応だったと思ったわけです。

 私はその発言の背景に、「 I understand (what you are telling...), but I don't agree...」という、ディベートという実効コミュニケーションの価値をしっかりと理解する人々に共通する本質的な態度(姿勢)をみていたというわけです。

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 私が感じていたヴェルディ守備ブロックの問題点とは・・。具体的な現象としては、マリノス選手たちが「比較的頻繁に」ヴェルディゴール前の決定的スペースや、最終ラインの前の二列目スペースにフリーで入り込んでいたということなのですが、その原因として、二列目や三列目からのボールがないところでの飛び出し(動き)に対するマークイメージがうまく機能していなかったという事実を挙げたわけです(質問は、舌っ足らずだったけれど・・)。

 実際にパスが出なかったとしても、ゴール前の決定的スペースや二列目スペースに入り込んだ相手が、ある程度フリーでパスを受けられる・・またパスを受けてからの時間的余裕もある・・という状況は望ましくないということです。左サイドをドリブルで上がりながらタテパスを出し、そのまま、前方に広がるスペースへ走り上がっていったけれど、彼をマークしていた小林大悟は、そのまま行かせてしまった・・とか、右サイドで遠藤彰弘をマークしていた平野が、ボールをめぐる競り合いシーンに目を奪われ、スッと前方へダッシュした遠藤に行かれてしまう(その直後には、後方からオーバーラップした田中隼磨にも行かれてタテパスをフリーで受けさせてしまう)・・とか、小林慶行が、スッと二列目スペースへ前進していった上野に対するマークを怠ってしまう・・とか、また同じような状況で、何人ものマリノス選手が、ヴェルディゴール前の決定的スペースへフリーで入り込んでいく・・とか、中盤で誰もチェイス&チェックアクションに入らず、マリノスに自由にボールを回されてしまう・・とか、そんなシーンが目立っていたのです。

 いつも言っているように「タテのマークの受けわたし」は、守備のなかではもっとも難しいコンビネーションプレーです。もちろん多くの場合、タテに走り抜けた選手へのパスが出てこなかったり、パスタイミングが遅かったことで後方の味方がうまく対処できたり、(確実なマーキングポジションに入るのが遅れたことで!)パスコースに入ったところに相手がパスをしてくれたり等など、基本的なマーキングミスが目立たないという結末になってしまうわけですがネ・・。

 ある程度フリーでボールを持つ(仕掛けの起点になる)という攻撃の当面の目標イメージについてですが、実際に達成されないまでも、その意図が成就しかけるというシーンが頻発するようでは、その守備ブロックに構造的な(守備イメージ的なところで)欠陥があると言わざるを得ないというわけです。ヴェルディの基本的な守備イメージは、ポジショニングバランス・オリエンテッドな「ゾーン的」ディフェンス方法。ということで、ポジショニングをバランスさせることを基本に、勝負所では、そのバランスを「ブレイク」してマンマーク(チェイス&チェックやボール奪取勝負など!)へ行き、また次の瞬間には再び、互いのポジショニングバランスを取るというアクションを忠実にくり返さなければいけません。ただしこのやり方は、選手たちにより多くの「言い訳の可能性」を与えることにもなります。よほど選手たちの「守備意識が確立したモノ」でなければ、なかなかうまく機能させられない・・という危険性も高いというわけです。もちろん、これほど面白いディフェンスは他にはないことも確かなことなのですがネ・・。

 とにかく、ゲーム後半のヴェルディが攻め込まれ、流れのなかで何度もピンチを迎えた大きな原因は、そんなマーキングミス(戦術的には、集中力が欠如したサボりとも言える?!)にあったと思っている湯浅なのです。もちろんヴェルディ選手個々の能力が高いから、そんなピンチでも何とか守り切ってはしまうのだけれどネ。能力レベルが高いという両刃の剣・・。ということで、特に守備においてヴェルディが抱える「両刃の剣ファクター」は、大きな危険をはらんでいる・・選手たちの優れた仕掛けイメージも含め、攻撃ではあれだけのコンテンツを有している(仕掛けコンテンツが発展しつづけている)ヴェルディだからこそ、守備での戦術的イメージの修正を(忠実ディフェンス意識の高揚を!)・・なんて願っている湯浅なのですよ。何せ今シーズンの彼らには、明確な優勝候補として大いなる存在感を発揮することで「J」を面白くしてもらわなければいけませんからネ。

 そんなヴェルディに対してマリノスの守備ブロックは、もう「安定」の一言でした。記者会見で岡田監督が、「いまの我々は、誰が出ても、どんなやり方でも、しっかりとしたサッカーが出来る・・」という、このところの自信のキャッチフレーズを連発していました。そこでのキーワードが「守備意識の高揚」。ナルホド・・。

 ボールがないところで勝負が決まるサッカー・・だからこそ、ボールがないところでのマーキングが重要な意味を持つ・・チェイス&チェックをベースにした全員参加のディフェンス・・その流れのなかで、ボールがないところでの相手アクションが抑えられていれば、周りの味方は、ボール奪取勝負をより明確にイメージできる・・そんなマリノスの守備では、ヴェルディ選手がスペースへフリーで入り込むというシーンは皆無に近かった・・だからこそヴェルディは、流れのなかでチャンスを作り出すことがままならなかった・・等など。

 とにかく、ポテンシャルの高い若手(小林大悟、相馬崇人、平本一樹、森本貴幸などなど)が多いヴェルディが、タイトル戦をつづけて制したことだけではなく、ワシントンという新戦力が存在感を示せたことは、新シーズンへ向けて、彼らの自信と確信レベルを(経験値を)高揚させるうえでこの上なく重要でした。さて、今シーズンの「J」にコンテンツが詰まってきた・・。

 



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