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- 05_ヨーロッパの日本人・・ホンモノへのブレイクスルー真っ最中の中村俊輔・・(2005年12月27日、火曜日)
- クリスマス明けに行われるブリティッシュ恒例のハードスケジュール。でも、稲本と中田英寿は先発じゃない(結局二人とも出番なし!)。中村俊輔は先発メンバーに名を連ねてはいるけれど、セルティックパーク(スタジアム)は停電でキックオフが遅れている。フ〜ッ。年末年始のイングランドリーグ(これぞイングリッシュウイークという四連戦!)とスコットランドリーグは、本当に楽しみにしていたのですよ。それが、ちょっと出鼻をくじかれてしまって・・。
結局、中村の試合(セルティック対リビングストン)は50分遅れのキックオフということになりました。相手のリビングストンだけれど、前回のセルティックとの試合では、ホームであるにもかかわらず、何もできないままに「0-5」という完敗を喫しました。私も観戦したけれど、無力感まで漂うリビングストンといった体たらく。前回の対戦がそんなだったから、中村のプレーを評価するに足るゲームになるのかどうか心配になっていたのですが、それは杞憂だったようです。周りの評価通り、リビングストンもしっかりと持ち直してきていたのですよ。さすがにフットボールネーション。地域を代表するクラブは、その生活文化にとって大事な構成要素の一つということですからね、周りの期待エネルギーの盛り上がりによって、チームの闘う意志も大幅に高揚するというわけです。もちろん選手たちの質が大幅に上がったわけではないから、セルティックとのチーム総合力の差はいかんともし難いけれど、闘う意志という心理パワーに支えられて、守備コンテンツは大きく持ち直しているのです。俊輔のプレーコンテンツを評価するのに好都合じゃありませんか。
前半の中村俊輔は、攻守にわたって良いパフォーマンスを魅せてくれましたよ。前節の(引き分けてしまった)インバーネス戦での低級サッカーが良い刺激になったということなんだろうね。だから気合いの乗り方も違ったということか。立ち上がりは、様子見マインドの方が先行していたけれど、すぐに、守備でのプレーコンテンツの量と質がどんどんと高揚していきました。全力ダッシュを織り交ぜた、クレバーで効果的な守備プレー。もちろん、ボールがないところでの効果的な守備プレーが基盤です。だからこそ、実際のボール奪取勝負シーンでも実効プレーが展開できるというわけです。それにしても、相手のドリブルに置き去りにされないような体勢を維持しながら(要は、相手のドリブルコースを潰しながら!)タイミングよく繰り出す、チョン!チョン!というアタックは巧妙。以前だったら、一発勝負のアタックを空振りし、そのまま置き去りにされるシーンのオンパレードだったのにネ。責任意識(自己主張意識)の向上?! まあ、それもあるんだろうね。要は、環境こそが人を育てるということでしょう。何せ周りは、スコティッシュの強者ばかりだからネ。無責任な「アリバイ守備」は、すぐに糾弾されちゃうということです。
そんな効果的な守備をスタートラインにしているからこそ、攻撃でも勢いが乗る。そこでは相変わらず「魔法」が目立つけれど、それも、シンプルなパスプレーと「魔法」のメリハリが進化していることで、より効果的に(要は、よりフリーなカタチで)魔法を繰り出せるようになっていると感じます。シンプルなトラップと、シンプルなタイミングでのパス&ムーブを駆使することで、よりうまくスペースで(よりフリーに)ボールを扱えるようになった・・だからこそ、魔法を駆使したラストスルーパスやクロス、はたまた自分がコアになったコンビネーションをリードするプレーも冴えわたるというわけです。たしかに自分が最終的なパサーになるというイメージは依然として前面に押し出してはいるけれど、そのなかで、「決定的なレシーバー」になろうとするイメージも着実に根付いているということです。
表現が錯綜してしまうけれど、レシーバーになろうとするイメージを強化することによって、より「頻繁」に決定的なパサーにもなれるという「微妙なメカニズム」に目覚めた・・ということなのかもしれない。
それにしても、夢のようなトラップで相手二人を翻弄し、次の瞬間には、ト〜ン、トッという「二軸動作リズム」でアウトサイドスルーパスを決めてしまったり、中央ゾーンにドリブルで持ち込み、そこからのワンツーでフリーになって夢のようなタイミングとコースのスルーパスを繰り出したりといった「魔法」は、この試合でも(前半だけだったけれど!)目立ちに目立っていましたよ。それは、マローニーやマクギーディーが展開する「ドリブル主体の勝負」とはまったく違うタイプの仕掛けフロー。攻撃の変化の演出。だからこそ効果的だというわけです。いまのセルティックは、右サイドからは中村の魔法、左サイドからはマローニーやマクギーディーのドリブル勝負という大まかな仕掛けイメージが定着していると感じます。まあ逆に、だからこそ相手ディフェンスにうまく対処されてしまうという危険性も増大するのだけれどネ・・。
その危険性が現実になったのが後半のゲーム展開だったのかもしれません。そこでのセルティックの攻めは、まさにステレオタイプに陥っていました。それは、リビングストンが展開する、素早くダイナミックな守備によって、セルティックの仕掛けイメージが悪魔のサイクルに陥ってしまったということなのかもしれません。素晴らしいチェイス&チェックと、それに対応した周りの守備コンビネーション。リビングストンが魅せる、まさに有機的に連鎖しつづけるディフェンス。そんな展開のなかで、セルティック守備ブロックの重鎮、バルデのミスで同点ゴールを奪われちゃったんだからネ。リビングストン守備ブロックの集中力が極限まで高揚するのも道理でした。
たしかにセルティックも、交代出場したマクグリンシーのシュートチャンスなど、1-2度はチャンスはあったけれど、後半の全体的な試合展開としては、「1-1」のまま同点で終了してもまったくおかしくない流れに陥っていました。まさにリビングストンの思うつぼ。中村俊輔も、ハードなマークと集中プレスに、持ち味をどんどんと薄められてしまって・・(後半は、明らかに中村へのマークが厳しくなった!)。そんなジリ貧の雰囲気のなかで飛び出した、意を決した中村俊輔のスーパープレーからの決勝ゴールだったというわけです。タテパスを受け、二人に挟まれながらも、最終勝負への意志を陰らせることなくドリブルで突き進み、流れるようなフェイントで相手を翻弄して放ったスーパーシュート。美しさと力強さのコラボレーションといったところ。また、そのゴールを決めた後の態度や表情も良かった。そこには、逞しさがアリアリと表現されていました。その瞬間、思わずガッツポーズをしていた湯浅でした。
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