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05_世界クラブ選手権(トヨタカップ)決勝・・三位決定戦も含め、久しぶりに、したたかな勝負強さのラテンサッカーを見せつけられた思いでした・・(サンパウロvsリヴァプール、1-0)・・(2005年12月18日、日曜日)

さて、まず三位決定戦(アルイテハド対サプリサ)からいきましょう。この試合にも、興味を惹かれるテーマがありました。まず何といっても、アジアのレベルアップを世界にアピールできたというテーマ。我々は、アジアのクラブシーンを代表して頑張ったアルイテハドに感謝しなければいけません。全体的なサッカーの内容で、サプリサを明確に凌駕していましたからね。個々の能力レベルでも少なくとも互角のチカラを魅せつけたし、攻守にわたる戦術的な部分でも高いクオリティーを感じさせてくれました。また、それらのファクターを集積したシュートチャンスの量と質でもサプリサを圧倒していました。準決勝のサンパウロ戦も含め、世界に抗していけるだけのサッカーをアピールしたアルイテハドだったというわけです。

 ・・と、ここまで書いて、ハッとある事実がアタマをよぎったのですよ。たしかにアルイテハドは十分にアピールしたけれど、「世界」は彼らのことを、アジアというよりも、やはり「中東」と考えている・・このことは、友人のヨーロッパジャーナリストたちも同じ感覚だったっけ・・やはり、韓国や日本、はたまた中国のクラブチームが出てきてはじめて「アジア」をアピールできるということか・・。

 さて次のテーマだけれど、それは「ラテンの勝負強さ」。まあこれについては、決勝戦も含まれますよね。何せ両ゲームともに、試合の全体的な流れを牛耳るだけではなく、しっかりとチャンスも作り出したチームの方が、ワンチャンスをモノにして守り抜いた相手に負けてしまったのですからね。まあサプリサは、大逆転だったわけだけれど、その粘りは、まさにラテンのテイストでした。

 まず三位決定戦でのアルイテハド。彼らは、組織プレーと個人プレーがハイレベルにバランスした優れたサッカーでゲームをコントロールしつづけ、ほとんど勝利を手中にしていたのですよ。それが、最後の最後に、PKとフリーキックでうっちゃられてしまった。この最後の最後で逆転されたという現象について、「まさに、アジア的な脆さだよな・・」なんて感じていた湯浅だったのです。相手は、準フットボールネーションのコスタリカ。ラテンの勝負強さ・・というか、攻守にわたって、「ここが勝負!」というポイントでは、まさに「一撃必殺のエネルギーの集中」を魅せてくれるのですよ。そのエネルギーを集中させるための鋭い感覚を象徴していたのが、前半に作り出した4つの「ウラ取り」シュートチャンスだったのです(そのなかの最初のチャンスが先制ゴール!)。要は、トントンと素早くボールを動かし、ある瞬間に、ある程度フリーのボールホルダー(要は、仕掛けの起点)を中盤に作りだし、そして「あうんのイメージシンクロ」で爆発スタートを切った最前線プレイヤーが飛び込んでいく「決定的スペース」へ、これしかないというタイミングの勝負パスを送り込むというコンビネーションのことです。これは、パサーとレシーバーの勝負イメージが正確に「シンクロ」していなければ決して成就しない。だからこそ、トレーニングの賜だと思うのです。

 そんな、瞬間的な「一発・爆発コンビネーション」は、サンパウロとリヴァプールで争われたファイナルの決勝ゴールも同じでしたね。右サイドから左サイドへパスが送られる・・これでリヴァプール最終ラインは、そちらのサイドへ引き寄せられる・・その状況で、右サイドから入り込んでいたミネイロがフリーで決定的スペースへ抜け出すのと、まさに同時に浮き球のスルーパスが出される・・そしてミネイロが、リヴァプールのゴール前に広がる決定的スペースで、まったくフリーでシュートモーションに入っていく・・ってな具合。

 「まず選手たちにおめでとうと言いたい・・我々は21本のシュートを打ち、17本のコーナーキックを蹴った・・我々は内容で相手を完全に凌駕したのだ・・たしかに結果にはガッカリしたが、内容は誇っていい・・だから選手たちを祝福したい・・」。試合後の記者会見でリヴァプールのベニテス監督がそう言っていました。たしかに、何度も、何度も同点機を作り出しました。また実際にゴールのなかにボールをたたき込んだりもしました(オフサイドでノーゴール!)。でも私は、試合の流れは、完全にサンパウロにあり・・と感じていたのです。

 リヴァプールは、クロスやコーナーキック、またセットプレーでもチャンスの雰囲気をプンプンと臭わせていました。でも、うまく「はまら」ない。ツキにも見放されている。それに、モリエンテスという「高さ」があるのにもかかわらず、それを「アバウトでもいいから」もっと頻度高く活用するという発想の仕掛けが、あまりにも少な過ぎる。私は、ルイス・ガルシア、モリエンテス、そしてシャビアロンソというスペイントリオのプレーイメージには、「アバウトなハイボール」という選択肢がないと感じていました。ハイボールならば、ピンポイントのクロスしかない・・というわけです。そんなだから、ここぞのマークでは抜群の忠実さと正確さを誇るサンパウロの守備ブロックに簡単にはね返されしまうのも道理。それに対し、終盤で魅せたパワープレーでは、「放り込みのハイボール」からビッグチャンスを作り出していましたからね。ハイボールをヘディングで流し、それを、オーバーラップしてきた二人目、三人目が狙うというわけです。はじめから「それも」やれば、サンパウロ守備ブックも迷ったろうに。攻撃におけるもっとも重要なキーファクターは「変化」なのですよ。

 それにしてもリヴァプールが最後の時間帯に魅せたパワープレーの迫力がレベルを超えていたからこそ、身長2メートルのクラウチを投入するタイミングの遅れや型にはまった仕掛けイメージを残念に思っていた湯浅だったのです。

 とにかく今日は、一発の「あうんコンビネーション」で奪ったゴールをねばり強いディフェンスで守りきったサンパウロと、ねばり強い守備で「追加失点」を防ぎ、最後の最後に作り出したワンチャンスで大逆転劇を成就してしまったサプリサに、「したたかな勝負強さのラテンサッカー」を見せつけられた思いの湯浅でした。




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