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- 2006_オシム日本代表(その9)・・手応えを感じていたからこそのネガティブコメント!?・・(日本対サウジアラビア、3-1)・・(2006年11月15日、水曜日)
- 「あっと・・この試合で良かったことも言っておかなければならないですね・・それは、次は誰がPKを蹴ってはいけないかがはっきりしたことです・・(笑)」。
記者会見でのオシムさん。ネガティブ(反省&課題)コメントのオンパレードでした。勝って兜の緒を締めよ!? まあ、そういうニュアンスも込められていたんだろうね。でも私は、彼の表情や発言の「行間」を読んで、このゲームの内容が良かったからこそ、本当の意味で「世界」と比べられる(世界一流スタンダードで評価できる)ということ「も」匂わせたかったのかもしれないと理解していました。
その視点では、まさに、おっしゃる通りだと思っていましたよ。世界の強豪と、このような勝負マッチで対峙したら、この試合で何度も見られた「小さなミス」につけ込まれて決定的ピンチに陥ってしまっただろうからね。まあ、サウジは、そのレベルになかったけれどネ。その意味では、オシムさんの意見にアグリーする部分が多かったですね。
そんなコメントの流れで、オシムさんは、「一見して危険だと思われるゾーンとは違うところに本当の危険が潜んでいる・・」なんていうことも言っていました。要は、ボールがプレーされているゾーンとは違うところに出来たスペースを使われる方が、ドリブルやコンビネーション等のボール絡みのプレーで突破されるよりも、より危険になることが多いということが言いたかった!? 基本的にはパスゲームであるサッカーでは、ボールがないところで勝負が決まる・・というわけです。その視点でもミスが多かったと課題を挙げつづけるオシムさんなのでした。
まあ、様々な視点のネガティブ(反省&課題)コメントがつづいたわけだけれど(たしかに小さなミスも多かったけれど)、とはいっても、このゲームの内容が、ガーナ戦も含めて、オシムさんになってから最高のレベルにあったことは確かな事実だと「も」思っている湯浅なのですよ。
要は、オシム日本代表が、着実に発展をつづけているということです。そのことが正直に嬉しかった。強豪のサウジアラビアを、まあ局所的なミスはあったものの、「全体的な」内容で完全に凌駕したのだからね。そして同時に、アジアカップ予選グループでトップの座も射止めた。
とにかく、この試合で日本代表が展開したサッカーが素晴らしくソリッド(安定した忠実プレーとリスクチャレンジの優れたバランス!?)だったということは厳然たる事実だと思っている湯浅なのですよ。
まず何といっても、「全体的な」守備が素晴らしかった。鈴木啓太、また(特に、別人かと見まちがうほど攻守にわたって積極的に仕事を探しつづけた)アレックス、中村憲剛、そして両サイド(加地と駒野)の中盤ディフェンスが良かった。そしてそれを基盤にした最終ライン(今野、阿部、トゥーリオ)の守備も本当に素晴らしかった。
特に最終ライン。この三人は、まさに鉄壁だったよね。トゥーリオのパフォーマンスは言うまでもないけれど(まあ何度かはアタマで競り負けたけれど・・)、それに輪をかけて、阿部と今野のパフォーマンスも素晴らしいかった。身体を寄せて、屈強なサウジ選手に競り勝ったり、インターセプトを決めたり。もちろん「それ」もまた、中盤ディフェンスがうまく機能していることの証だという見方も出来るけれどネ。それにしても素晴らしかった。
もちろんそれには、サウジの攻撃があまりにも「単純」だったということもあります。要は、人とボールの動きのレベルが、あまりにも低すぎる(組織プレーのレベルが低い)ということです。もちろん直接的なコンビネーションや「ワンツー」はあるけれど、それに絡んでくるべき「三人目の動き」が全く出てこないのですよ。
そんなだから、日本守備陣にとっては、サウジの次の攻めを読むのは簡単でした。それじゃ、相手のウラを突いていけるはずがない。そして最後は、ゴリ押しの個人勝負を繰り出して潰されつづけるサウジなのです。もちろん個人的なチカラには素晴らしいものがあるから(スピードやパワーなど、ある側面では日本を完全に凌駕するチカラを秘めている!)、ツボにはまったら怖いことこの上ないけれど、日本は、チェイス&チェックで追い込んで次を狙うなど(中盤ディフェンスとの素晴らしいコンビネーション!)、そんな彼らのツボを効果的に消しまくっていたからね。まあ、戦術的な(組織ディフェンスの)勝利ってなところです。
ところで今野。彼には、守備だけじゃなく、最高の実効レベルを魅せた攻撃に対しても心からの拍手をおくらなければいけません。二点目の我那覇ヘッドゴールのシーンでは、直接的な(素晴らしく鋭く正確な)アシストを記録したし、三点目シーンでは、ラストクロスを決めた駒野への見事なロングパスも決めた。私にとっては、彼こそが、この試合でのMVPでした。
そんな強力なディフェンスを基盤に、攻撃も冴えわたりました。特に、両サイドを駆使した仕掛けが素晴らしかった。それには、アレックスと駒野、中村憲剛と加地という「ペア」がうまく機能したという側面もあります。サイドゾーンで繰り返された、効果的なタテのポジションチェンジ・・ってな具合。まあ右サイドに関しては、加地をタテに送り込んでいたのは、今野であり、鈴木啓太だったけれどね。
ちょっと残念だったのは、中村憲剛のパフォーマンスが、時間の経過とともに徐々に落ち込んでいったことです。立ち上がりは、攻守にわたってダイナミックなプレーを披露してくれましたよ。何十メートルも全力ダッシュで戻ってボール奪取勝負に絡み、次の攻撃では、間髪を入れずに前方スペースへ走り上がってパスを受け、そのまま、勝負のキープから、ドリブル勝負に入っていったり、ラストパスを狙ったり、はたまた勝負のサイドチェンジパスを送ったり。そんなエキサイティングな勝負シーンを見ながら、ホントに心おどったものです。「憲剛がホンモノになった!!」ってね。でも・・。
たしかに、落ち込み方はそんなに極端じゃなかったけれど、時間が経つにしたがって、例によっての「止まって横パスやバックパスを待つ・・」という受け身で消極的なシーンの方が目立ちはじめてしまったことは確かな事実でした。そして仕掛けの流れに取り残されてしまう・・。ちょっと残念だったけれど、まあ、彼の潜在能力の高さは明確に感じることが出来たわけだから・・。とにかく中村は、この試合でのプレーコンテンツを、ビデオを観ることで「反芻」しなければいけません。自信をもつプレーには胸を張り、反省すべきところは素直に反省する・・。そんな「分析作業」があってはじめて、ホンモノの発展ベクトルに乗れるのです。
最後に、オシムさんの言葉をもう一発。「喜ぶのはブラジルに勝ってからにしよう・・まあ、ブラジルに勝ったら、記者会見なんて置いといて、すぐにお祭りに切り替えるべきだけれどネ・・(笑)」。その言葉に、今回の会見でのオシムさんが、限りなく「世界」を意識していたことが如実に現れていたと思っている湯浅なのですよ。オシムさん自身も、この試合内容から、それなりの(世界を見据えた)手応えを感じていたということです。
とにかく、オシム日本代表が、今年最後の勝負マッチで、内容の伴った結果を出したことに対して乾杯!!
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