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2006_高原直泰と「U19」・・素晴らしい決勝ゴールを挙げた高原直泰への期待・・そして、オメデトウ「U19」!!・・(2006年11月7日、火曜日)

一瞬のスキ・・。高原のゴールは、相手ディフェンダーが、守備ラインにポカッと穴が空いたように高原をフリーにしたことから生まれました。相手守備の意識の空白を見逃さずにフリーキックからタテパスが出され、そのパスをしっかりと予測していた(もちろんタテパスを要求していた!)高原が、飛び出してくる相手GKのアクションをしっかりと見定め、ダイレクトで左ポスト直撃のスライディングシュート(決勝ゴール!)を決めたという次第。素晴らしくテクニカルでダイナミック、そしてインプレッシブなゴールでした。

 メンヘングラッドバッハと相対した今節のホームゲームでは、相手に退場者が出たことで(後半11分)、フランクフルトのフンケル監督が、勝負を掛けて後半21分に高原直泰をグラウンドへ送り込みました。そしてその12分後に、決勝ゴールが生まれたのです。

 交代した高原直泰は、ベンチやホームスタジアムを埋め尽くしたファンの期待を痛いほど感じていたことでしょう。いや、それよりも、個人事業主として、自分自身のアピール機会という意味合いの方が大きかったに違いない。

 一秒も無駄にしたくないと、グラウンドに立った瞬間からダイナミックなアクションを仕掛けつづける高原直泰。特に、ポールがないところでのタテ方向の動きには鋭さがありました。一度、相手ゴールへ向けて突っ掛けるフェイント動作を入れ、次の瞬間にはズバッと戻ってパスを受けるのです。そのフリーランニングに爆発的な勢いがあったからこそ相手マーカーからフリーになれた。そこで放散されたスピリチュアルエネルギーがレベルを超えていたからこそ、味方がパスを付けた。

 またそこでは、「タカを使おう・・」というチームメイトたちの意識も明確に見えてきたものです。彼に対する信頼感の高まりを感じる。とはいっても、そこで彼らが描いているイメージは、「組織プレイヤーとしての高原」という方が強いようだね。

 素早く正確なボールコントロール。そして、力強くトリッキーなボールキープからのシンプルなパス出しと、間髪を入れないパス&ムーブ。それが、高原というプレイヤーに対して描くイメージのコアなんだろうね。高原がボールを持ったら、周りの味方が、パスを要求して激しく動くからね。

 戻ってタテパスを受け、素早く振り向いて、ヴァイセンベルガーへ通したスルーパスは秀逸でした。その「タッチ&コントロール&パス」があまりにも素早く正確だったから、パスを受けたヴァイセンベルガーが、フリーでシュートできたのです(残念ながらシュートミスで、そのシュートアクションで自身も股間を故障してしまった!)。

 組織的な仕掛けに長けている高原だけれど、逆に言えば、個の勝負では、まだ課題を抱えているとも言える。個の勝負では、シュトライトとかアマナティディスといった「エゴイスト」たちには及ばないのですよ。何度か、「オッ、高原か?」と、期待に身体を乗り出すようなドリブル突破やドリブルシュートシーンがあったけれど、よく見たら、シュトライトやアマナティディスだった・・。

 1対1の競り合いシーンでは、パワーやスピードでたしかに不利だと感じますよ。高原は、そのことを心から体感しているに違いない。だから、ドリブル勝負には「慎重」になっている(有利なカタチに持ち込めるまで我慢している!?)ということなのかもしれないけれどね。まあ、だからコンピネーションで突破するというイメージが主体になるのも仕方ないということか。シュートにしても、決定的スペースにパスを「呼び込む」というピンポイント勝負のイメージを主体にしているしね。

 もちろん「組織プレーのストライカー」という生き方もあるけれど、私は、「個の勝負」にもチャレンジする姿勢をもっと前面に押し出して欲しいのですよ。たしかに、スピードを抑制された「相手と正対してからの勝負」となったら難しいだろうね。だから、仕掛けの「流れ」をうまく利用し、そのフローの勢いにうまく乗っからなければならない。そうすれば、スピードを落とすことなく、彼本来のテクニックを存分に活かしたドリブル勝負を仕掛けていけるはず。

 まあ、そんなことは言われなくても分かっているか。このところ、スムーズな仕掛けの流れのなかでドリブル勝負に入り、「またぎフェイント」などで相手を置き去りにするといった実効ある「個のドリブル勝負」も出てきているしね。そのためには、スペースで、スピードに乗ったカタチでパスを受けることです。勝負のフリーランニング、爆発的なパス&ムーブ。特に、この試合でも何度も繰り返していたパス&ムーブが決定的に重要。まあ確かに、リターンパスが戻されてくる頻度は低かったけれど、とにかく繰り返すことですよ。継続こそチカラなり・・なのです。言われなくても分かっていることは分かっているけれど、言わないわけには気が済まない湯浅なのです。あははっ・・。

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 最後に、ワールドユース大会へ駒を進めた「U19」に対して、心からの賛辞を・・。

 素晴らしい闘いでした。たしかに、ちょっと引き気味に過ぎるような時間帯があったり、意図のない(逃げの)タテパスが放り込まれる場面もあったけれど、全体的には、素晴らしく積極的なチャレンジサッカーだと思います。だからこそ、大会を通して発展をつづけられた。吉田監督のウデを感じます。特に、同点にされてからの粘りには、チームの自信と確信の深さを感じました。その「大枠」には、「J」というプロの環境もあった!? やはり環境こそが人を育てるのですよ。

 たしかに来年のW杯出場は決まったけれど、これで、発展のための唯一の糧である「バランス感覚あふれる極限のチャレンジマインド」が減退するようではいけません。日本の人々にとってのアイデンティティー(誇りの対象)となれるよう、とことん勝負し尽くしてくれることを望んで止みません。




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