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2006_ヨーロッパの日本人・・中村俊輔と高原直泰・・(2006年9月26日、火曜日)

中村俊輔だけれど、グラスゴー・ダービー(セルティック対レンジャーズ)での彼は、激しく動きつづけるゲームの流れにうまく乗り切れなかったという印象の方が強かったですね。セルティックにしてもレンジャーズにしても、ボールを奪い返したら、とにかく前へ、前へと直線的に仕掛けつづけていたからね。落ち着いた組み立てという「緩衝メカニズム」を機能させようという雰囲気は皆無でした。

 素早く、広くボールを動かすことで、相手守備が薄くなったゾーンをクレバーに突いていこうとする組み立てイメージではなく、まず前線の味方へ強いタテパスを出したり、ドリブルで前へ突っ掛けていくという直接的な仕掛けイメージの方が先行していたということです。伝統のダービーマッチということで高揚した気合いが、選手を極端にアグレッシブにしていた!? まあ、そういうことなんだろうね。

 そんな展開だから、組織的なパスイメージが脳裏に描かれることはほとんどないのも仕方ない。もちろん、前線が詰まっていたり、展開が遅れた場合には、サイドの中村俊輔へ展開するというシーンもあったけれどね。

 もちろん、中村俊輔が流れに乗った良いカタチでボールに触るケースが多くなかったことについては、自業自得という面も否定できない。もっと動き(パス&ムーブやボールがないところでの全力スペースランニングなどなど)、もっと声を出せば、彼を中心にした組織パスの仕掛けだって効果的に機能したかもしれないからね。

 でもまあ、超満員のホームサポーターが放散するスピリチュアルエネルギーは相当なレベルだったから・・。とにかくこの試合での中村俊輔は、グラスゴー・ダービーの激烈なエネルギーの衝突に呑み込まれてしまったといった感じでした。

 それでも、中村俊輔の攻守にわたる意志のレベルが高みで安定しているのは確かです。とにかく彼については、先月のハイバーニアン戦でのパフォーマンスを「基準」にすることにしましょう。

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 さて高原直泰。良いね、ホントに。闘う姿勢(意志)が大幅にレベルアップしている。

 トラップ&キープからのリスキーな勝負パス、ドリブル勝負(スピードが足りないから相手を抜き去るところまでは簡単にいけないけれど・・)、自身がコアになったコンビネーション、決定的スペースへの飛び出し、そしてシュートへの飽くなきトライなど、リスクチャレンジへの取り組みが活性化していると感じるのですよ。何度失敗しても、止められても、「意志のパワー」が減退することがない。

 また、前線からのディフェンスもダイナミックで効果的。汗かきだけではなく、狙いを定めたボール奪取勝負でも存在感を発揮していた。彼のボール奪取勝負テクニックが、あれほどのレベルにあるとはね。ちょっと認識を新たにしていた湯浅でした。

 要は、吹っ切れたということなんだろうね。そこでは、フランクフルトという新天地へ身を投じたこともポジティブに作用しているに違いない。環境の変化をチャレンジの原動力にしている高原。頼もしいじゃありませんか。

 高原が、どこかのインタビューで、ワールドカップでの挫折がバネになっていると言っていた。まさに脅威と機会は表裏一体。もちろん、その「バネ」の反発力には、新生オシム日本代表に対する「意識」も含まれているに違いない。オシムさんのサッカーコンセプトは明快だからね。それに基づけば、いまの自分が何をやるべきなのかというテーマも明確に見えてくるだろうし、それが、クラブにとっての実効ある価値の創造につながるという善循環サイクルを生み出す・・。

 そして、「自分のクラブで出場し、そこで良いプレーを続けるだけだ・・」という海外組の共通キャッチフレーズが定着する。やはり、具体的な目標イメージを持ち、それに向かってリスクチャレンジを積み重ねていくことこそが発展の唯一の糧ということだよね。




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