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2006_ナビスコカップ・・「小さなこと」の積み重ね・・永井雄一郎の本物の復活・・(マリノスvsレッズ、1-2)・・(2006年5月14日、日曜日)

「このゲームについては、(実質的な試合内容から?!)1対1のドローがフェアな結果だったと思う・・」。ギド・ブッフヴァルト監督が監督会見で述べていました。まあ、そういうことだよね。この試合でのマリノスは、積極的なプレッシングに象徴される闘う意志をベースに、ポゼッションにしてもシュート数にしても大きく優位に立っていたし、そんな攻勢のなかで、少なくとも2-3本は決定的シュートチャンスも演出できていたからね。

 それについて、良い内容のゲームを落とした岡田監督は、こんなふうに総括していました。「攻め込んで、チャンスを作り出していたのに、それを決められない・・逆に、スローインからの単純なミスが原因で失点してしまう・・小さなことが失点につながっている・・それを一つひとつ潰していかなければならない・・」。

 それに対して私は、ちょっと難しかったけれど、こんなニュアンスの質問をしてみました。「言葉にするのは難しいだろうけれど・・最近のマリノスは、サッカーの内容や闘う意志は決して悪くないのに、どうも結果がついてこない(結果がついてこない確率がちょっと高めというニュアンスのつもり)・・岡田さんも、感覚的に、悪い流れだと考えているはずだけれど、それをどのように解釈するのだろうか・・」。

 ちょいと意味不明な部分もある質問だったけれど、岡田さんは、例によって真摯に答えを探してくれましたよ。「簡単にパスをつないでおけばいいのに、難しいことをやってボールを失い、相手のカウンターを受けてしまったり、単純なポジショニングミスをしたり、スローインの処理を誤ったり・・サッカーは、小さなことの積み重ねだし、結局は、その積み重ねが勝負を分ける・・だから、その小さなことを、一つひとつ修正していかなければならない・・等々」。

 わたしは、そのハナシを聞きながら、フムフムと頷いていました。要は、闘う意志は十分に表現できているし、それを基盤に、全体的なサッカーの流れも良いけれど、ちょっとしたところでの「集中切れ」とか「イージーな意識」が、小さなミスを招く・・そしてそれが積み重なって強い流れを作り出してしまう・・塵も積もれば山となる・・ってなことなんだろうね。

 まあ、それは、「世界との僅差」の本質でもあるわけですよ。その背景に潜む、個よりも組織(個の責任よりも連帯責任≒責任回避マインド)という日本の社会文化的な体質も含めてね。だからこそ、「それ」を常に明確に意識していなければ、日本でのプロ監督は務まらないというわけです。

 というわけで、岡田武史監督によるサスガの分析なのだけれど、その言葉を聞きながら、私は、ドイツ留学時代に体感したことに思いを馳せていました。

 「そうそう・・あの当時は、いくらボール扱いが器用でも(傍目に上手く感じられたとしても)、やはり基本を意識することが大事だということをたたき込まれたものだった・・やってはいけない、集中を欠いた安易なミス(イージーマインドのミス)・・ちょっと上手いことをやろうとして墓穴を掘り、それで味方が大ピンチに陥ったりする・・また、どうせ来ないだろうという安易なマインドで忠実なポジショニングを怠ったことが原因で味方が大ピンチに陥ったこともあった・・あの当時は、コンセントレーション(集中)の本当の意味を深く理解することに努力したし、それをオートマティックな意識環境として機能させるためにイメージトレーニングを何度も繰り返したものだった・・オートマティゼーションという表現にしても、その当時にドイツの恩師からたたき込まれたんだっけな・・それは決してステレオタイプなんかじゃなく、それこそが、クリエイティビティー(創造性)の大前提だってネ・・」

 マリノスのサッカー内容は高揚してきていはいるけれど、それと同時に、コンセントレーションに対する本質的な理解と、その深い浸透にも尽力しなければならない・・。岡田武史監督のウデに見せ所じゃありませんか。

 もちろん指示や指摘が「細か過ぎたら」、逆に墓穴を掘ってしまう。小さなコトの修正に関するコンセプトを「大枠」で理解させたら、後は、選手たちの判断と決断、そして実行力に任せる方がいいよね。そこで、互いに指摘し合うという「相互刺激」が出てくれば御の字。とにかく、しっかりと意味を理解さえしていれば、イージーなミスをもっとも強烈に体感するのは選手たちだからね。だからこそ、監督の「言葉を介した理解の促進作業のクオリティー」が問われるというわけです。

 最後に、レッズ永井雄一郎について。久しぶりに魅せてくれました。ドリブルや決定的パスだけじゃなく、攻守にわたるボールがないとろでの「クリエイティブな汗かき仕事」。

 私は、ケガが治って交代出場するようになったものの、これまでの永井雄一郎のプレー内容には不満タラタラでした。絶対的な運動量が足りない・・ボールがないところで仕事を探せていない・・ボールを持っても、ドリブル勝負する状況に対する判断が甘いし、ミスしてボールを失ったらその場で止まってしまう・・守備にもまったく参加してこない・・等々。そんな体たらくだった永井雄一郎が、この試合では大変なイメチェンを果たしてしまう・・。

 「この試合での永井雄一郎のパフォーマンスは、これまでよりも格段にアップしたと思うのだが・・それについて監督は、どんな働きかけをしたのだろうか・・?」なんていう質問をギドにぶつけてみました。それに対してギドは、「とにかく、身体がフィットしてきたことが第一だ・・それに伴って、パーソナルな内容の個人トレーニングも繰り返した・・また、彼のプロ意識がステップアップしたことも特筆だ・・そして、(これがもっとも大事なことなのだけれど)彼は、自分の能力の高さに気づかなければならない・・」と、間髪を入れずに答えてくれました。ギド自身も、永井が魅せている本物の復活に手応えを感じていたということなんでしょう。「汗を流す」相互努力を背景にした満足感・・ってことなんでしょうね。

 それにしても永井はパスが上手いよね。決勝ゴールのクロスだけじゃなく、左サイドの平川を走らせたタテパスなど、鳥肌が立つような「クリエイティブ勝負パス」には、ため息しきりの湯浅でした。




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