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2008_ACL_準決勝の1・・一発勝負マッチの醍醐味・・(ガンバ対レッズ、1-1)・・(2008年10月8日、水曜日)

やはりチャンスメイクは、高い位置で(相手の重心が前へ掛かった状態で)ボールを奪い返したり、コーナーキック等からのこぼれ球を拾って仕掛けるカウンター、そしてセットプレーと中距離シュートくらいかな・・。

 ガンバとレッズが激突したアジアチャンピオンズリーグ準決勝の第一戦。両チームが、ともに高い集中力のディフェンスを基盤に繰り広げる「勝負」マッチを観ながら、そんなことを思っていました。

 やはり、一発勝負マッチでは守備が主役になるよな・・そんなゲームの流れのなかで、両チームともに、いかに(次の守備も含め!)リスクを抑えながらチャンスを作り出すのかというテーマに取り組んでいく・・。

 ということで、コーナーキックからの「セカンドボールの流れ」で先制ゴールを奪われたガンバの攻撃から。たしかに彼らは、ボールは動かすことはできるけれど、「それだけ」では決定的スペースを突いていくような(要はレッズ守備ブロックを振り回すような)チャンスシーンを演出することがままならない。スペースパスにチャレンジしない&出来ない(!?)から、どうしても足許パスばかりが目立ってしまうのですよ。

 もちろんその原因の主なところは、人の動きが十分ではないということだけれど、逆から見れば、レッズの守備が(ボールがないところで忠実に人を抑える忠実ディフェンスが)充実しているからとも言える。

 そしてもう一つ、活発な組織プレーによる効果を、決定的スペースを攻略したり実際のシュートチャンスへ結びつけるような「個のチカラ」が足りないという視点。

 ガンバの持ち味は、組織プレーと個人プレーが高い次元でバランスする仕掛けプロセスにあるわけだけれど、それが「組織だけ」となった場合、やはり突き抜けるパワーに欠ける。相手にとっても、次の仕掛けイメージが「読める」からね。

 繰り返すけれど、その根本的な原因は人の動きが十分ではないことですよ。もちろん『クリエイティブなムダ走り』のこと。ボールがないところでのアクションが不十分で「様子見」が多すぎるのですよ。もっと(ボールがないところで)ガンガンとスペースへ飛び出していかければチャンスを作り出すことは難しいよね。

 でもね、選手の心理として「効果的なパスが出てくる可能性」がそんなに高くないとなれば、次の守備でのリスクヘッジも含め、やはりモティベーションを高揚させるのは難しい。ボールがないところでのムダ走りが味方にスペースを作る・・とはいっても、そのことが大きなチャンスに結びつかないとなったら、そのエネルギー注入に対するモティベーションを高揚させるのは難しいのも道理だということです。

 だからこそ「個の才能」。組織プレーのなかに、ボールがないところでのアクションに対する「意志」を高揚させる効果的な「局面プレー」がミックスしてくれば、おのずと組織プレーの「実効レベル」も高揚していくのですよ。そう・・相手守備の意識と視線を引きつけるタメとか、局面での突破ドリブルなどに代表される「個の勝負プレー」。

 この試合でのガンバには「それ」が欠けていた。それでは対するレッズは?

 この試合のレッズ攻撃のポイントは、前戦トリオ(エジミウソン、高原直泰、ポンテ)に対する「組織的サポート」の内容がある程度はうまく機能していたということですかね。もちろん守備的ハーフの一人と両サイドバックによる「バランスの取れた」攻撃参加のことです。この試合では、「組織と個のバランス」という視点では、まあ僅かではあるけれどレッズに軍配が上がるということです。

 先制ゴールの後は、前へ重心が掛かるガンバに対して蜂の一刺しカウンターを狙うレッズという構図になったわけだけれど、そこでは、やはり個の才能に恵まれたレッズは、ある程度の存在感を発揮したということだね。何せ前戦トリオ「だけ」でも、チャンスを作り出せちゃうからね。

 基本的には、全員守備&全員攻撃という流れのなかで、攻守にわたって「数的に優位なカタチ」を作りつづける組織サッカー(攻撃では組織的パスサッカー)を志向するけれど、試合の意味合いやその実際の展開、またメンバー構成など、状況に応じて、徹底守備&必殺カウンターサッカーや(それに準じた)前後分断サッカーといった「戦術サッカー」にも徹することが出来る・・。レッズの場合は、まあ、そんなイメージですかね。

 ところで、ガンバに同点ゴールを奪われた後の(ゲームの流れを読んだ)ゲルト・エンゲルス監督の采配はよかった。

 同点にし、「ヨシ!ここからだ!!」と嵩にかかるガンバ。そんな攻撃的な雰囲気が充満したときのガンバは無類の強さを発揮するからね。ボールがないところの動きが活発になるだけじゃなく、同時に(普段はリスクを逡巡する!?)日本人選手も、ガンガンと個人勝負を仕掛けていくようになるのですよ。

 そこでは、オレがオレが・・というスピリチュアルエネルギーがはち切れんばかりに充満し、成功シーンも格段に増幅する。そしてそのことがリスクチャレンジに対する「意志」を高揚させ、攻守にわたる活発なチャレンジプレーを善循環させる。その流れは、まさにシナジー(相乗効果)。

 同点に追いついたときのガンバの雰囲気は、まさに「それ」でした。そこで、間髪いれずにゲルト・エンゲルス監督が対応したのですよ。そう、トゥーリオの投入。それだけじゃなく、ガンバの「シナジー」を前戦から断ち切ために、フレッシュな梅崎司と田中達也も投入した。

 その采配は、殊の外うまく機能したと思います。まあ、トゥーリオのリーダーシップと実効ディフェンスは言うまでもないけれど(一度だけ、不運にもミネイロとの競り合いで置いていかれはしたけれど・・)、わたしには、田中達也の爆発的チェイス&チェック(積極的な意志の爆発!)が感動的でさえあった。

 その刺激は強烈です。それが、次のボール奪取勝負アクションを誘発し、それによって全体的なディフェンスの機能性が格段にアップした。そんなシーンを見ながら思っていた。「そうそう・・これだよ・・この達也のチェイス&チェック・・これまで何度、彼のチェイス&チェックがチーム全体を鼓舞し、攻守にわたる組織プレーをパワーアップさせてきたことか・・彼のチェイス&チェックでチームの雰囲気がガラリと変わったことか・・シーズン当初は、危機感にあふれた永井雄一郎や梅崎司のプレーにも、そんな『意志』が感じられたのだけれど・・」

 でも、それに対する梅崎司のチェイス&チェックは、前節のゲーム同様に、どうも「ぬるま湯」の域を脱していなかった。あの状況でグラウンドに送り込まれたんだから、そこでのミッションは、もう、足がつるくらいの勢いでボールを追いかけ回すことで相手のシナジーを断ち切るしかないじゃないか・・なんて、フラストレーションを溜めていた筆者でした。

 最後に言っておきますが、世界トップサッカーでは、田中達也が放散しまくる「積極プレーの意志」は当たり前なんですよ(生き残るための唯一のバックボーン!)。天才連中の汗かき・・。この期に及んでまだ、「あの選手は、そういうタイプじゃないから・・」などといったバカげた発言を「まだ」耳にすることがあるけれど、そんな考え方を容認するような雰囲気こそが日本サッカーのガンだね。

 モウリーニョやイビツァ・オシム、はたまた故ヴァイスヴァイラー等々といった強者プロコーチに対する賞賛のバックボーンは、何といっても、人間の弱さと対峙し、それを打破し改善していける強烈なパーソナリティーなんだからネ。決して、何らかの「机上の空論」なんかじゃないのですよ。たとえば「戦術マスターベーション」!? あははっ・・

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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