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2008_ACL_準々決勝第一戦・・アントラーズ戦とレッズ戦のポイントだけをまとめます・・(アントラーズ対アデレード、1-1)(アル・カディシア対レッズ、3-2)・・(2008年9月18日、木曜日)

アントラーズにとっては、アデレードにアウェーゴールを奪われて引き分けるという、厳しいホームゲームになってしまいました。

 とはいっても、そこは「脅威と機会は表裏一体」のサッカー。来週の水曜日にオーストラリアで行われるアウェーの勝負マッチでは、今度はアデレードが、0-0で引き分けさえすれば準決勝に進めるという「誘惑」と戦わなければならなくなる。要は、受け身のサッカーという心理的な悪魔のサイクルのワナが待ち構えているということです。

 対するアントラーズは、冷静に、絶対に失点しないという安定したサッカーを心がける中でとにかくまず一点を狙うというイメージでゲームに臨まなければならないわけだけれど、そんなゲーム運びの感覚を、冷静なバランス感覚でコントロールするのが百戦錬磨のオリヴェイラ監督というわけです。

 実力的には、たしかにアントラーズに一日の長があるでしょう。でも、この試合のように、ちょっとした油断で、決定的なピンチを招いてしまうことも確かな事実。

 ちょっとした集中力の欠落・・。フッと気が抜けてボールウォッチャーになってしまったり、ほんのちょっと、チェイス&チェックや「寄せ」が甘くなったり、ボールがないところでのマークが離れてしまったり、決定的なシーンでの相手への身体の寄せが緩くなってしまったり・・等々、そんな、あまり目立たない「小さなコト」の繰り返しが、積もり積もって大きな破綻を招くというわけです。

 だからこそ優れたコーチは、そのような「小さなコト」にとことんこだわって修正していく(何らかの刺激とともに意識させつづける!)わけです。それが、優れたコーチの資質でもっとも大事なものは忍耐と「しつこさ」だと言われる所以です。

 ちょっとハナシが逸れた。とにかくまず、両チームが作り出したチャンスの量と質を比べてみよう。シュート数では、アントラーズの方が二倍も打っている(24本と12本)。でも、実質的な決定的チャンスの量と質という視点になると、それほどの差はなかったというのがフェアな評価だと思う。両チームともに、個人勝負でも組織プレーでも、決定的スペースを攻略したシーンはほとんどなかったしネ。

 アントラーズでは、クロス攻撃から、マルキーニョスや興梠、そして終了間際には、交替出場した田代が惜しいヘディングシュートを放ったし、それ以外では、マルキーニョスやダニーロ、中田浩二も、可能性のある中距離シュートを放った。

 それに対してアデレード。ドッドのヘディング先制ゴールや、後半のクリスティアーノの惜しいヘディングシュートシーンだけではなく、アントラーズ守備ブロックのミスから、アデレード選手がフリーで決定的スペースへ抜け出してシュートを打った場面や(曽ヶ端が冷静にセーブ!)、鋭いコンビネーションから、レイやジエゴが惜しい中距離シュートを放ったりと、「ゴールの臭い」じゃ、まさに互角に近かったと思うのですよ。

 それにしてもアデレードの守備は、評判通りの堅牢さを魅せていた。局面でのボール奪取勝負が強いだけではなく、アントラーズに攻め込まれる状況で、ボールウォッチャーになることもない。彼らは、ボールがないところで勝負が決まるというサッカーのメカニズムをしっかりと感覚的に理解していると思います。だから、アントラーズのクロス攻撃に対しても、中央ゾーンでのマークが「ズレ」たりするシーンは希だった。

 来週のアウェー決戦の見所は、何といっても、両チームの「ガマン合戦」だろうね。別な見方をすれば、ココゾの勝負所で、どこまで吹っ切れたリスクチャレンジが出来るかということにもなる。楽しみです。

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 さて、ということで、アル・カディシアとアウェーで対戦したレッズ。

 まず何といっても、ゲーム終了直前にエジミウソンが叩き込んだ二点目のアウェーゴール。その起点になったトゥーリオの粘りドリブルにも大拍手だけれど、そのゴールを奪えたことは、天地がひっくり返るほど大事な価値を生み出しました。これによって、来週のホームでの戦い方オプションに大きな広がりを持てるわけだからね。

 要は、一点差で勝てばいいという状況を設定できたということです。安定した展開のなかから、ワンチャンスを狙いつづけるというイメージ。そこには、今のところ、そんな戦い方こそが「レッズのツボ」になっているということもある。

 それに次のホームゲームでは気候条件も格段に良くなるわけだから、全体的な運動量のアップを期待できることも含め、人数を掛けた組織的な仕掛けプロセス「も」より多く繰り出していけるなど、ワンチャンスの「内容」にも広がりを持たせられるはずだからね。

 相手のアル・カディシアは、良いチームです。まあ、ほとんどクウェート代表に近いメンバー構成らしいしね。彼らは、地元チームらしく、暑い気候に適したクレバーなサッカーを展開していた。しっかりとボールを「走らせる」ことで、仕掛けゾーンを素早く、広く「移動」させてしまうようなクレバーなサッカー。

 もちろん「人」はそんなに動かないけれど、ココゾの状況では、着実に「複数の選手が同時に爆発」していた。ワンツーなどの局面コンビネーションに、逆サイドのフリーな選手も、スペースへ抜け出す「三人目」として、その流れにうまく乗るのですよ。

 もちろんレッズの守備ブロックは、しっかりと対応していたけれど、希に(一瞬の集中切れで!?)マーキングで後追いになってしまうシーンもあった。まあそれには、アル・カディシアの最終勝負への「仕掛けタイミング」が分かりやすくシンプルだったということもある。要は、ボールを変に「こねくり回す」ことがなく、ここはクロス、ここはシュート・・などなど、とにかく一人ひとりが明確に共通のイメージを共有していると思うのです。

 また守備ブロックも、うまく組織されていた。局面での個人勝負の強さだけではなく、相手のパス攻撃(組織的な仕掛け)にも着実に対処できるような優れた「スペース感覚」も身につけている。要は、ボールウォッチャーになることなく、ボールと、自分の背後をしっかりとイメージしながら守備に就いているということだけれど、ホントによくトレーニングされたチームだと思いますよ。

 そして、ベンアシュールを中心にしたセットプレーの強さ。そのポイントでも、本当によくトレーニングされていると感じる。先制ゴールの場面もそうだったけれど、彼らは、ニアポストというか、要はボールに「近いスポット」へ走り込んで勝負するというイメージが徹底しているのです。そして「スリップヘッド」でゴールを狙ったり、ボールを「流す」ことで後方の二人目がシュートしたり。

 このチームの監督さんは、「徹底」こそが戦術的な成功のキーポイントだと良く理解していると思う。まあ「継続こそパワーなり」と同義ということかな。要は、戦術的な成功は、選手同士のイメージを、いかに高い次元で「シンクロ」させるのかという一点に掛かっているということです。

 ということで、前述した「ゲーム戦術イメージ」を基盤にホームゲームを戦うレッズは、アル・カディシアのセットプレーには注意しなければいけません。

 さて、ということでレッズだけれど。あのクソ暑い気候のなか、よく頑張ったと思います。流れのなかでは、互角の(それ以上の!?)チャンスも作り出したしね。

 彼らのチャンスメイクで目立っていたのは二つ。まず何といっても、エジミウソンとポンテのコンビネーション。ワンツーからエジミウソンが抜け出してシュートへいったり、逆に、エジミウソンをポストに使ってポンテが抜け出したり。

 前述したゲーム戦術イメージで戦うレッズにとっては、非常に効果的な武器だと思います。もちろん、その「エジ&ポン・コンビネーション」の実効レベルをよりアップさせるためには、周りの味方の(ボールがないところでの)動きが決定的に重要になることは言うまでもありません。彼らが動き回ることで、相手守備を混乱させるだけではなく、自ら「三人目」「四人目」にもなれるわけだからね。

 二つ目の目立った「攻め手」。それは、サイドからの仕掛け。この試合では、相馬崇人のドリブル突破が目立っていたけれど、山田暢久にしても、後半から登場した平川忠亮にしても、「行け」ば、かなり効果的なサイド攻撃を演出できると感じました。

 その背景には、相手のチーム戦術(サイドゾーンでの攻防に関するイメージ作り)だけではなく、そのときの個人的な調子もあるわけで、次のホームゲームでも同じようにレッズにとって有利な展開になるどうかは分からない。とはいっても、とにかく良いイメージを持った方が有利なことは確かだから、それを活用しない手はないわけです。

 ところでエジミウソン。暑い気候だから、どうしても「局面勝負」が多くなる・・ということで起用されたのかもしれないし、ゲルト・エンゲルス監督による、試合数の増加を考えての選手の使い分け(擬似ローテーションシステム)という意図があるのかもしれない。

 それは分からないけれど、とにかくこのゲームでは、相手が怖がる「ゴールゲッターとしての」存在感を発揮していた。その「心理的なエネルギー」は、相手へのプレッシャーという意味でも貴重なモノでした。

 とはいっても、来週のホームゲームでは、攻守にわたる「組織的なマインド」をもっと前面に押し出していかなければならないわけだから、どうかな・・という疑問符もつくよね。

 エジミウソンは、優れた才能に恵まれているし、まだ若いのだから、「このレベルで停滞してしまう」のは、彼自身にとっても「本当にもったいない」。とにかく彼は、いまの自分が抱えている「攻守にわたる(特にボールがないところでの)怠惰なプレーイメージ」から脱却しなければなりません。

 そのためにも、とにかく自分のプレーのビデオを、彼が信頼するしっかりとしたコーチとともに(もちろん自戒というニュアンスを主題に!)何度も何度も見直すことが大事だと思いますよ。そう、心に染み入るイメージトレーニング。もっと言えば、そこでの彼の主要テーマは、自分が抱える既存イメージに対する「創造的破壊」ということになるだろうかね。

 ゲルト・エンゲルス監督だけではなく、エジミウソンのマネージャー、チームスタッフ、そしてチームメイト。全員が協力して、彼を「助けて」あげなければならないと思うのです。

 さて、来週の水曜日が楽しみになってきた。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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